
RDT vs The Autocomb
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コーヒーを挽く前に水をスプレーするテクニックは、2005年にコーヒーフォーラムでこのアイデアを発案したとされるデビッド・ロス氏の名前にちなんで、「ロス・ドロップレット・テクニック」(RDT) と呼ばれています。針状のツールでコーヒーの粉をほぐすメソッドの「ウェイス・ ディストリビューション・テクニック(WDT)」とよく似た手法で、長年にわたって使用されてきました。

RDTとは?
RDTとはコーヒーを挽く直前に水をスプレーし、コーヒーを挽いている際に生じる静電気の量を減らすことを目的としたメソッドです。
静電気が少なくなるということは、あらゆる表面に付着するチャフが減り、グラインダーに詰まるコーヒーも減り、そして最も重要なことに、挽く際に生じる塊が軽減されることを意味します。
研究者らによると抽出効率がグンと上がり、高い収率も狙えることがわかっています。

この新しい研究は、計算科学者のクリストファー・ヘンドン氏率いるチームによるもので、彼はコーヒー豆の冷凍や水へのマグネシウムの添加、最近ではエスプレッソ抽出においてターボショットの技術を導入するのにも貢献した人物です。
彼は、火山噴火における静電気の影響を研究している火山学者数名と協力し、コーヒー豆のグラインド中の静電気の生じ方にいくつかの類似点を発見しました。この記事は誰でも無料で読むことができますので、ぜひこちらから読んでみてください。

水を素早くスプレーすることによって静電気が軽減
RDT は元来ホームバリスタに支持されていたメソッドで、性能の高いグラインダーを扱うカフェではほとんど見ることはありませんでした。
業務用グラインダーには、粉の塊を砕くことを目的とした Victoria Arduino社の「クランプクラッシャー」などのツールが装備されていることもあるので、わざわざいつものワークフローに、スプレーをするというオペレーションを増やすのは店舗では非効率と考えられていました。

しかし、昨今はシングルドースのグラインドが一般的になり、バリスタがより高度な抽出を求めるようになると、RDTやWDT(針状のツールでコーヒーの粉をほぐすメソッド)のような技術が一気に広まりました。

RDT は新しい技術ではないかもしれませんが、その背後にある科学的エビデンスは新しいものです。
ヘンドン氏が発見したのは、グラインド中に発生する静電気が均一ではないということです。一部のコーヒーは他のコーヒーよりも多くの静電気が発生し、粒子は正に帯電したり、負に帯電したり、あるいはその両方が混合したりすることがあります。より深く焙煎された豆はより強いマイナス電荷を生成する傾向があり、特に微粉はより多くのマイナス電荷を帯びるようです。一方、浅煎りや焙煎度合いに関わらず粒子が大きいほど、プラスに帯電する可能性が高くなります。
静電気は、マイナスに帯電した微粒子を大きな粒子に付着させ、単一の大きな粒子として機能する小さな塊 (1~2mm) が形成されます。こういった塊は岩のように機能し、水が触れることのできるコーヒーの表面積を減少させ、コーヒーベッド内の水の流れは不均一になり、収率が減少します。

水を加えると静電気が中和され、このような小さな塊の形成を防ぎます。研究者らは、静電気を最大限に減らすには、最大で粉量の2%の水を添加する必要があることを発見しました。これは、多くのバリスタが使用する1噴きよりもはるかに多い量です。エスプレッソ抽出前にこれを行ったところ、ヘンドン氏のチームはショットの抽出がはるかに遅くなり、最大で50%の時間がかかることがわかりました。同時に、収率は約10%増加する結果もありました。
The AutoCombで塊を砕く
The AutoCombの目的は、塊を砕くことです。私たちは、The AutoCombがRDT(水スプレー)と同様の方法で機能するかどうか、もしそうであればどちらのテクニックがより効果的に機能するのか?検証を実施しました。

RDT、The AutoComb、またはその両方を併用することがエスプレッソの抽出にどのような影響を与えるかを確認するためにいくつかの実験を行いました。 機材は窒化チタンでコーティングされた刃を備えたEK43とLinea Classicを使用しました。
全ショット、グラインドサイズを揃えるのではなく、抽出時間を同じにして、各方法で25秒のショットにできるだけ近づくようにグラインドサイズを調整しました。
驚くことに、前編でご紹介したヘンドン氏のチームが見た現象を再現することはできませんでした。 2%の水をスプレーすると、ショットがわずかに遅くなるように見えたので、EK43では平均して1メモリ粗いグラインドサイズを使用する必要がありました。
グラインダー内の残留量も少なくなり、水をスプレーしないドライコーヒーの場合の残留量が 0.2 ~ 0.3g だったのに対して、平均約 0.1g でした。
ですが、RDTは収率を増やすのではなく、収率を減らしました。これは科学者の結果とは正反対の結果になります。同じグラインドサイズを使用したショットであっても、RDTのコーヒーからの収率はより低いものでした。

一方、The AutoCombを使用すると、収率が上がりました。また、粉に水をスプレーしてもしなくても、ほとんど違いがないようでした。ですが両方のテクニックを併用すると、目標の抽出時間を達成するには最も粗いグラインド設定が必要となり、最も高い収率が得られました。

RDTの効果がショットの抽出時間に依存する可能性を考慮して、いくつか抽出の遅いショットを試してみたところ、収率がさらに減少することが分かりました。
もちろん、私たちは研究室と同じ量のデータや高精度の機器を持っているわけではありませんので、結果の統計的妥当性についてはそれほど自信を持っているわけではありません。
ですが、ジェームズ・ホフマン氏も、この研究を取り上げる彼のビデオの中で、一貫性のない結果を発見しました。彼の場合は、収率についての報告はありませんでしたが、豆に水を噴きかけることでショット時間が短縮されるかどうかは、使用したグラインダーの種類に依存するようだとまとめました。
ですが、私たちは研究者が使用したのと同じグラインダーであるEK43を使用していたので、同様の結果が期待できたかもしれません。違いが生じた理由の1つは、使用したコーヒー豆にあるかもしれません。コーヒーがどの程度の静電気を発生させるかは、コーヒーの焙煎色、より正確には焙煎後にコーヒーにどれだけの水分が残っているかるによって決まります。深い焙煎ほど水分含有量が低く、より強いマイナス電荷を生成します。浅煎りは正の電荷を生成する傾向がありますが、その中間のコーヒーには電荷がほとんど生成されません。

深煎り(青)はグラインド時にマイナスの電荷を生成し、浅煎り(赤)はプラスの電荷を生成します。粉量の最大 2%までの水を添加すると、浅煎りでも深煎りでも生成される電荷の量は減少します。焙煎度合によっては、水を加えなくてもほとんど電荷を発生しないものもあります。

たとえば、スターバックスの「ブロンド」ローストには水分が約1.3% 含まれ、多くの静電気が生じます。研究者がテストしたコーヒーである、Reverie RoastersのBoneshakerは、スターバックスのブロンド(アグトロン 65)よりわずかに浅いですが(アグトロン 67)、ジェームズ・ホフマン氏のレッドブリックエスプレッソブレンド(アグトロン 77)よりはかなり深いです。
私たちが使用したCode Blackのコーヒーは、焙煎色がレッドブリックに似ていたため、おそらく深い焙煎よりも静電気の発生が大幅に少なくなります。この点だけでも、RDTを行うメリットが見られなかった理由を十分に説明できます。
より高い収率を達成する2 つの方法
両方の方法を並べて試してみて、非常に異なる結果が得られたことから、The AutoCombと RDTは実質的に異なる方法で効果を出す可能性が高いです。おそらくRDTは、論文で言及されているように1~ 2mmの小さな凝集体を壊すのに最も効果的ですが、The AutoCombはより大きな凝集体をターゲットにしていて、それによってコーヒーベッドの全体的なマクロ構造を均一にしているのかもしれません。
もちろん、今回の実験でRDT がうまく機能しなかったということで、他の人にとってもうまくいかないという意味ではありません。焙煎やグラインダー、そしておそらく私たちがまだ知らないその他の要因も影響します。それでもRDTは試してみる価値のあるテクニックであることが見つかるかもしれません。たとえ収率が向上しないとしても、グラインダー内の残留物が減り、作業スペースがきれいになることは大きなメリットです。 (RDT を使用して収率を計算しようとしている場合は、粉に含まれる水分を考慮する必要があることに注意してください)。
RDT がどのような効果をもたらすにせよ、バリスタがディストリビューションについて気にかける必要がなくなるわけではありません。
RDTが効果を発揮し、収率が増加する場合は、優れたディストリビューションテクニック(The AutoComb や通常の WDT ツールなど) によって収率をさらに増やすことができるでしょう。