Æ_1.02 グラインド方法
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Æ1.02 グラインド方法
グラインドとは、物体に力をかけて細かく粉砕するプロセスを指します。このとき「圧縮」と「せん断」という2種類の力がかかります。圧縮とは、物体を平面に押しつけることを言います。せん断とは、ひとつの物体に対してふたつの異なる方向から力がかかることを言います。
図:圧縮(左)とせん断(右)
物体に圧縮応力がかかると、弱い部分に割れ目が生じます。そして最終的に割れ目同士がつながってその物体が砕け、大きさや形がバラバラな粒子になります。一方、せん断力がかかると、せん断面に沿って割れ目が生じることが多く(図参照)、粒子の大きさや形が比較的揃っています。そのため、より均一な抽出を促します。
最も効果的に豆を挽くことができるグラインダーは、この2種類の力を両方利用しています。まず「プレ粉砕」と呼ばれる最初の工程で、豆を圧縮して約1mmのサイズに砕きます。そして第2工程で豆をせん断します。「粉砕」または「仕上げ」と呼ばれるこの工程では、鋭い歯先がぶつかることで、プレ粉砕した豆を均一なサイズの粒子にカットします(M ペトラッコ、2005)。
抽出に適した粒度と形状にコーヒー豆を挽くためには、この第2工程で行われる豆をカットする動作が欠かせません(RJ クラーク、1987)。ブレードグラインダーのようにコーヒー豆を衝撃粉砕するグラインダーは、圧縮応力しか利用しないため、特定の粒度や形状に粉砕することができません。グラインダーの歯が鋭くなければならないのは、このためでもあります。歯の切れ味が鈍くなってくると豆にかかる圧縮応力が増え、せん断力が小さくなるため、粒度と形状が不規則になります。
業務用エスプレッソグラインダーとしては、フラット式またはコニカル式の刃を用いたグラインダーが使われます。これらのグラインダーは、回転する刃の隙間を通るコーヒー豆を適切な粒度に粉砕します。コニカル式はサイズの割に粉砕速度が速い、つまり効率が良いため、エスプレッソグラインダーとして人気です(M ペトラッコ、2005)。フラット式は大きいため、うまく粉砕するためには強力なモーターが必要ですが、粒度のばらつきが少ない傾向があります。エスプレッソ用の粉の粒度分布については、次のレッスンで詳しく説明します。
フラット式(左)とコニカル式(右)画像提供:Mazzer
画像:ローラーグラインダー、画像提供:Probat
最後に紹介するのがローラーグラインダーです。これは大型の工業用グラインダーで、市販の粉で販売されているコーヒーやカプセルポッドの製造用に使用されます。溝のついた大きなステンレス製の筒(ローラーミル)が対になって回転し、ロールの間を通過する豆を粉砕する仕組みになっています。特定の粒度と形状に粉砕するという点においては、ローラーグラインダーが最も効果的ですが、非常に大型かつ複雑なグラインダーであり、カフェで使用するにはあまりにも高価です。なかでも最も均一に粉砕できるのが、何対ものローラーを使用して徐々に粒度を小さくしていく大型の多段階式ローラーグラインダーです(RJ クラーク、1987)。
https://www.youtube.com/watch?v=ATf81ThKfnE
この動画では、ローラーミルの仕組みが詳しく紹介されています。
グラインド時の温度
豆をグラインドすると摩擦により大量の熱が発生し、稼働中のグラインダー内ではコーヒー豆の温度が100℃に達することもあります(M ペトラッコ、2005)。この温度変化がコーヒーの反応に劇的な影響を及ぼします。バリスタの皆さんであれば、グラインダーが熱くなるにつれてエスプレッソの落ち方が徐々に速くなることは、経験上知っていると思います。この現象の理由としてよく挙げられるのが、高温になるとグラインダーの金属部品が膨張し、刃と刃の隙間が狭まるからだという直感的な説明です。しかしながらこの説明は事実とは異なるようで、この程度の温度変化であれば想定される金属膨張量はごくわずかとされています。
むしろ考えられるのは、温度が上昇することによりコーヒー豆の塑性が高まり、砕けにくくなるため、豆の破断の仕方が変わる(E. ウマンら、2016)ということです。この現象については、第2章で詳しく取り上げます。
温度の上昇による影響はもうひとつあり、これがエスプレッソの落ち方に影響を及ぼしている可能性があります。コーヒーに含まれる油分は室温では非常に粘り気がありますが、40℃を超えると液状になります。すると細かい亀裂から油分が流れ出し、粘性のある膜が粒子の表面に形成されます。グラインド後、粉が冷えてくるとこの膜は再び半固形状に固まり始めます。そのため粒子同士がくっついてダマになり、均一に抽出することができなくなるだけでなく、お湯の流れに対する抵抗が増します(MC ニコリ & O サボニッティ、2005)。
グラインダーを通過するほんのわずかな時間であっても、豆が高温になるとガス抜けと酸化が一気に進みます。グラインドチャンバー内のコーヒーの粉の温度は80~100℃にまで達するのです(M ペトラッコ、2005)。グラインダー内の温度が上がりすぎると、粉から香りが飛び、好ましくない特性が出てきてしまう可能性もあります。
1.02 終