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焙煎理論と実践 4.02 焙煎プロファイルのフェーズ

HTR 4.02 焙煎プロファイルのフェーズ ロースターは通常、焙煎プロファイルにおいて「ドライングフェーズ」「メイラードフェーズ」「ディベロップメントフェーズ」という3つのフェーズを使って説明します。ですが残念ながら、このフェーズの名前は少し誤解を招くことがあります。 「ドライングフェーズ」というのは、焙煎の開始から豆の色が変わり始めるまでの時間を指します。この色の変化は、豆が約150°Cに達したときに起こります。この段階では、豆の中の大部分の水分が蒸発すると言われています。ですが実際には、豆は1ハゼ直前まで水分を一定のペースで放出し続けます。「イエローイング」として説明される色の変化は、ドライングフェーズの終わりを示すものとされていますが、この変化の定義ははっきりしておらず、やや主観的です。 「メイラードフェーズ」は、イエローイングが始まってから1ハゼが起こるまでの時間を指します。このフェーズは、コーヒーの色やフレーバーの多くを作り出す化学反応である「メイラード反応」にちなんで名付けられました。ですが、メイラード反応はこのフェーズのみで生じるわけではありません。メイラード反応は焙煎の他のフェーズでも起こりますし、実際、生豆の状態でもゆっくりと進行しています。 最後に「ディベロップメントフェーズ」は、1ハゼが始まってから焙煎が終了するまでの時間を指します。この用語も誤解を招きやすいものです。というのも、実際にはコーヒーのディベロップには焙煎の最後のフェーズだけでなく、焙煎全体のプロセスが影響しているからです。焙煎の全体的な温度変化や反応が、コーヒーの最終的なフレーバーに重要な役割を果たします。 焙煎の3つのフェーズについて、グラフの上部に示された「フェーズバランス」は、各フェーズに費やした総時間の割合を指します。 一部のロースターは、コーヒーが各フェーズに費やす時間の割合(いわゆる「フェーズバランス」)を調整しようとします。例えば、メイラード反応はコーヒーの多くの良いフレーバーに関係しているため、ロースターはメイラードフェーズで過ごす時間を増やすように焙煎プロファイルを設計することがあります。このアプローチの利点は疑問視されています。なぜなら、メイラード反応は「メイラード」フェーズに限定されるわけではなく、焙煎全体を通じて進行するからです。さらに、あるフェーズの長さを変更すると、他の焙煎段階にも影響を与えてしまうため、フェーズごとの時間を調整するのは非常に難しいです。 その代わりに、ローストカーブ全体の形状を管理することに集中する方が良いです。これにより、RoRが安定して低下するように保つことができ、自然に適切なフェーズバランスが実現します。このアプローチは、ベイクドやロースティなフレーバーを防ぐのにも役立ちます。 4.02 終

焙煎理論と実践 4.02 焙煎プロファイルのフェーズ

HTR 4.02 焙煎プロファイルのフェーズ ロースターは通常、焙煎プロファイルにおいて「ドライングフェーズ」「メイラードフェーズ」「ディベロップメントフェーズ」という3つのフェーズを使って説明します。ですが残念ながら、このフェーズの名前は少し誤解を招くことがあります。 「ドライングフェーズ」というのは、焙煎の開始から豆の色が変わり始めるまでの時間を指します。この色の変化は、豆が約150°Cに達したときに起こります。この段階では、豆の中の大部分の水分が蒸発すると言われています。ですが実際には、豆は1ハゼ直前まで水分を一定のペースで放出し続けます。「イエローイング」として説明される色の変化は、ドライングフェーズの終わりを示すものとされていますが、この変化の定義ははっきりしておらず、やや主観的です。 「メイラードフェーズ」は、イエローイングが始まってから1ハゼが起こるまでの時間を指します。このフェーズは、コーヒーの色やフレーバーの多くを作り出す化学反応である「メイラード反応」にちなんで名付けられました。ですが、メイラード反応はこのフェーズのみで生じるわけではありません。メイラード反応は焙煎の他のフェーズでも起こりますし、実際、生豆の状態でもゆっくりと進行しています。 最後に「ディベロップメントフェーズ」は、1ハゼが始まってから焙煎が終了するまでの時間を指します。この用語も誤解を招きやすいものです。というのも、実際にはコーヒーのディベロップには焙煎の最後のフェーズだけでなく、焙煎全体のプロセスが影響しているからです。焙煎の全体的な温度変化や反応が、コーヒーの最終的なフレーバーに重要な役割を果たします。 焙煎の3つのフェーズについて、グラフの上部に示された「フェーズバランス」は、各フェーズに費やした総時間の割合を指します。 一部のロースターは、コーヒーが各フェーズに費やす時間の割合(いわゆる「フェーズバランス」)を調整しようとします。例えば、メイラード反応はコーヒーの多くの良いフレーバーに関係しているため、ロースターはメイラードフェーズで過ごす時間を増やすように焙煎プロファイルを設計することがあります。このアプローチの利点は疑問視されています。なぜなら、メイラード反応は「メイラード」フェーズに限定されるわけではなく、焙煎全体を通じて進行するからです。さらに、あるフェーズの長さを変更すると、他の焙煎段階にも影響を与えてしまうため、フェーズごとの時間を調整するのは非常に難しいです。 その代わりに、ローストカーブ全体の形状を管理することに集中する方が良いです。これにより、RoRが安定して低下するように保つことができ、自然に適切なフェーズバランスが実現します。このアプローチは、ベイクドやロースティなフレーバーを防ぐのにも役立ちます。 4.02 終

焙煎理論と実践 2.02 収量

HTR 2.02 収量 バッチサイズを決めるときに重要なのは、最初に使う1kgの生豆に対して、焙煎後何kgのコーヒーが得られるかです。焙煎度合いや生豆の水分量によりますが、コーヒー豆は焙煎中にその重さの11〜24%を失います。 焙煎中に失われる重量のほとんどは、豆に含まれている水分が蒸発するためです。例えば、1バッチの豆が10%の水分を含んでいる場合と、別のバッチが11%の水分を含んでいる場合、同じ焙煎をしても、水分量の違いで1%ほど重量が違ってきます。残りの重量減少は、化学反応で発生する二酸化炭素や水によるものです。 焙煎スタイルと重量の減少。多くのスペシャリティコーヒーのロースターは、浅煎から中煎程度の焙煎を行い、重量の減少は大体11〜16%になると考えています。また、水分含量が高い生豆は、同じ焙煎をしても、より多くの重量を失います。 減少した重量をパーセンテージで計算するのは簡単です。 例えば、10kgの生豆を焙煎機に投入して、焙煎後のコーヒー豆の重量が8.5kgだった場合、豆は1.5kgの重さを失っています。このときの重量減少は次のように計算できます: (1.5 ÷ 10) × 100 = 15% 「収量」とは、焙煎後に残るコーヒーの重さをパーセンテージで表したものです。収量の計算方法は、重量減少の計算方法と似ています。 例えば、10kgの生豆から8.5kgの焙煎後コーヒーができた場合、収量は次のように計算できます: (8.5 ÷ 10) × 100 = 85% 収量がわかれば、どれだけの生豆を使えば、必要な量の焙煎後コーヒーが得られるか計算できます。計算式は次の通りです: 例えば、収量が85%で、焙煎後10kgのコーヒー豆を得たい場合、必要な生豆の量は次のように計算できます: (10 ÷ 85) ×...

焙煎理論と実践 2.02 収量

HTR 2.02 収量 バッチサイズを決めるときに重要なのは、最初に使う1kgの生豆に対して、焙煎後何kgのコーヒーが得られるかです。焙煎度合いや生豆の水分量によりますが、コーヒー豆は焙煎中にその重さの11〜24%を失います。 焙煎中に失われる重量のほとんどは、豆に含まれている水分が蒸発するためです。例えば、1バッチの豆が10%の水分を含んでいる場合と、別のバッチが11%の水分を含んでいる場合、同じ焙煎をしても、水分量の違いで1%ほど重量が違ってきます。残りの重量減少は、化学反応で発生する二酸化炭素や水によるものです。 焙煎スタイルと重量の減少。多くのスペシャリティコーヒーのロースターは、浅煎から中煎程度の焙煎を行い、重量の減少は大体11〜16%になると考えています。また、水分含量が高い生豆は、同じ焙煎をしても、より多くの重量を失います。 減少した重量をパーセンテージで計算するのは簡単です。 例えば、10kgの生豆を焙煎機に投入して、焙煎後のコーヒー豆の重量が8.5kgだった場合、豆は1.5kgの重さを失っています。このときの重量減少は次のように計算できます: (1.5 ÷ 10) × 100 = 15% 「収量」とは、焙煎後に残るコーヒーの重さをパーセンテージで表したものです。収量の計算方法は、重量減少の計算方法と似ています。 例えば、10kgの生豆から8.5kgの焙煎後コーヒーができた場合、収量は次のように計算できます: (8.5 ÷ 10) × 100 = 85% 収量がわかれば、どれだけの生豆を使えば、必要な量の焙煎後コーヒーが得られるか計算できます。計算式は次の通りです: 例えば、収量が85%で、焙煎後10kgのコーヒー豆を得たい場合、必要な生豆の量は次のように計算できます: (10 ÷ 85) ×...

焙煎理論と実践 3.01 焙煎時間

焙煎の総時間が、味に大きな影響を与えていないことに関して、多くの人が驚くことでしょう。焙煎時間は使用している焙煎機やバッチサイズに合わせて調整することが大切ですが、実際には色や豆の温度、そして1ハゼのタイミングなど、他の要素に注目して、いつ焙煎を止めるかを決める方が重要です。 一部のロースターや科学的な研究は、焙煎の総時間が味に関係していると言いますが、サンプルロースターを使ったことがある人なら、7分以内でも美味しい焙煎ができることを知っているはずです。ドラム式焙煎機でも同じように美味しいコーヒーを焼くことができますが、その場合は焙煎にかかる時間がほぼ2倍になることが多いです。 適切な焙煎時間は、使っている焙煎機の種類によって主に決まります。多くのクラシックなドラム式焙煎機では、焙煎時間として9~13分が良い基準点です。それより速く焙煎しようとすると、高いガス設定が必要になり、ドラムが過剰に熱くなって豆の表面が焦げてしまう可能性が高くなります。 熱風式焙煎機では、ドラムがそれほど熱くならないため、豆の表面が焦げる心配が少なくなります。そのため、コーヒーをより速く焙煎することができます。熱風式焙煎機での適切な焙煎時間は、だいたい7~10分程度です。 また、小さなバッチサイズでは、どのタイプの焙煎機でも焙煎にかかる時間が短くなります。これは、バーナーからの熱をあまり必要とせずに焙煎が進むためです。ドラム式焙煎機での小さなバッチや、サンプルロースターでの一般的なバッチは、わずか7分で美味しく仕上がることもあります。 3.01 終

焙煎理論と実践 3.01 焙煎時間

焙煎の総時間が、味に大きな影響を与えていないことに関して、多くの人が驚くことでしょう。焙煎時間は使用している焙煎機やバッチサイズに合わせて調整することが大切ですが、実際には色や豆の温度、そして1ハゼのタイミングなど、他の要素に注目して、いつ焙煎を止めるかを決める方が重要です。 一部のロースターや科学的な研究は、焙煎の総時間が味に関係していると言いますが、サンプルロースターを使ったことがある人なら、7分以内でも美味しい焙煎ができることを知っているはずです。ドラム式焙煎機でも同じように美味しいコーヒーを焼くことができますが、その場合は焙煎にかかる時間がほぼ2倍になることが多いです。 適切な焙煎時間は、使っている焙煎機の種類によって主に決まります。多くのクラシックなドラム式焙煎機では、焙煎時間として9~13分が良い基準点です。それより速く焙煎しようとすると、高いガス設定が必要になり、ドラムが過剰に熱くなって豆の表面が焦げてしまう可能性が高くなります。 熱風式焙煎機では、ドラムがそれほど熱くならないため、豆の表面が焦げる心配が少なくなります。そのため、コーヒーをより速く焙煎することができます。熱風式焙煎機での適切な焙煎時間は、だいたい7~10分程度です。 また、小さなバッチサイズでは、どのタイプの焙煎機でも焙煎にかかる時間が短くなります。これは、バーナーからの熱をあまり必要とせずに焙煎が進むためです。ドラム式焙煎機での小さなバッチや、サンプルロースターでの一般的なバッチは、わずか7分で美味しく仕上がることもあります。 3.01 終

焙煎理論と実践-1.02 ドラムスピード

焙煎理論と実践 1.02 ドラムスピード 新しい焙煎機で最初に調整すべきパラメータはドラムスピードで、これは「毎分回転数(rpm)」で測定されます。最適なドラムスピードは、焙煎機のサイズによって異なります。一般的に、小型の焙煎機ではより高いrpmが必要ですが、大型の焙煎機では低めのrpmが最適とされています。 焙煎機の最適な回転数は、ドラムの直径によって異なります。ドラムの直径が重要な理由については、「ロースティング・サイエンスコース」で詳しく説明しています。 先に示した表の焙煎機のサイズ(kg単位)は、バッチサイズではなくドラムサイズを指します。たとえば、15kgの焙煎機で10kgのバッチを焙煎する場合でも、15kgの焙煎機に推奨されるドラム速度を目指す必要があります。 また、メーカーによってドラムのデザインや比率が異なるため、同じ容量の焙煎機でもドラムの直径が異なることがあります。このため、同じ容量の焙煎機でも微妙に異なるドラムスピードが必要になることがあります。たとえば、15kgのJoperのような細長いドラムは、Probat UG-15のように直径が大きく浅いドラムよりも、高い回転数が必要です。 ドラムスピードが低すぎる場合 ドラムスピードの設定が低すぎると、焙煎中にコーヒー豆がドラムの底に積み重なり、うまく混ざりません。この場合、豆が十分に回転せず、焙煎にムラが生じます。特に、底に積もった豆は熱いドラム壁に長時間触れることになり、スコーチングやフェイシングといったローストディフェクトが発生する可能性があります。 また、このような低い回転数では、ドラム内の豆が焙煎ガスに触れる機会が限られてしまい、コーヒー豆の山の表面にいる豆だけが熱風にさらされます。これにより、対流による熱伝達が減少し、豆が十分にディベロップするのが難しくなります。 ドラムスピードが高すぎる場合 逆に、ドラムスピードが高すぎると、遠心力で豆がドラムの壁に押し付けられ、表面が焦げてしまう可能性があります。ドラムの壁が高温であるため、豆の表面が焦げたり割れたりするローストディフェクトが発生することがあります。 この現象を理解するためには、遊園地の「グラビトロン」ライドというジャンルのアトラクションを思い浮かべてください。グラビトロンは大きなシリンダー型のライドで、回転速度が速くなると、乗客は重力に負けずに壁に押し付けられることになります。焙煎機でも、ドラムが高速回転すると同じように、豆が壁に押し付けられ、表面が焦げてしまうのです。 ドラムスピードは焙煎の品質に大きな影響を与えるため、最適な回転数を見つけることが非常に重要です。低すぎる回転数や高すぎる回転数は、焙煎ムラやローストディフェクトを引き起こし、最良の焙煎結果を得るのを難しくします。 遠心力は遊園地の乗り物では楽しい体験かもしれませんが、コーヒー豆にとっては良くない影響を与えることがあります。 もし焙煎機のrpmが高すぎると、コーヒー豆がドラムの熱い壁に押し付けられてしまい、表面が焦げる可能性があります。豆はドラムの壁にくっついてしまい、焙煎機内の熱風との接触が限られるため、対流による熱伝達が少なくなります。その結果、豆の内部が十分にディベロップしづらくなり、均一な焙煎が難しくなります。 スイートスポット 最適なドラムスピードは、このような「高すぎる」または「低すぎる」の極端な回転数の間にある「満足のいく中間」にあります。理想的な回転数では、対流による熱伝達を最大化し、伝導(豆がドラムの壁に接触して伝わる熱)による熱伝達を最小限に抑えることができます。この状態では、ドラムの回転が豆を空気流の中に持ち上げ、豆がドラム壁に押し付けられてしまうほど速く回転することはありません。 理想的なドラムスピードをイメージするには、回転式乾燥機の中で衣類がどのように動くかを想像してみてください。ドラムが回転すると、衣類が持ち上げられ、その後、熱風で落ちていきます。この動きによって、衣類と空気の接触面が最大化され、対流が効率的に行われます。焙煎機も同じように、豆が空気流の中で動きながら熱風と十分に接触し、均一な焙煎が進むのです。 この「スイートスポット」を見つけることが、理想的な焙煎結果を得るためにはとても重要です。 回転式乾燥機のドラムスピードは、衣類と熱風の接触量を最大化することで対流を効率的に引き起こし、熱の伝わり方を最適化します。 この原理は焙煎機にも当てはまり、最適なドラムスピードで回転することで、豆の山がよく混ぜられ、ムラのない均一な焙煎が実現します。 推奨されるrpmの範囲からわずかに外れることは通常許容されますが、実際には一部のロースターでは、工場出荷時に設定されたドラムスピードが最適とは言えない場合があります。もし、ドラムスピードが推奨範囲より大幅に高すぎたり低すぎたりする場合は、rpmを調整する必要があります。 1つの例外として、Loring や IMF など、熱源として熱風を使い、間接的に加熱するタイプの焙煎機があります。このタイプの焙煎機では、ほぼすべての熱が対流によって伝達されるため、豆の表面が焦げる危険性が非常に低くなります。そのため、許容されるドラムスピードの範囲が広くなります。このタイプの焙煎機での気にかけるべきことは、豆を適切に混ぜるのに十分な回転数を確保することです。 1.02 終

焙煎理論と実践-1.02 ドラムスピード

焙煎理論と実践 1.02 ドラムスピード 新しい焙煎機で最初に調整すべきパラメータはドラムスピードで、これは「毎分回転数(rpm)」で測定されます。最適なドラムスピードは、焙煎機のサイズによって異なります。一般的に、小型の焙煎機ではより高いrpmが必要ですが、大型の焙煎機では低めのrpmが最適とされています。 焙煎機の最適な回転数は、ドラムの直径によって異なります。ドラムの直径が重要な理由については、「ロースティング・サイエンスコース」で詳しく説明しています。 先に示した表の焙煎機のサイズ(kg単位)は、バッチサイズではなくドラムサイズを指します。たとえば、15kgの焙煎機で10kgのバッチを焙煎する場合でも、15kgの焙煎機に推奨されるドラム速度を目指す必要があります。 また、メーカーによってドラムのデザインや比率が異なるため、同じ容量の焙煎機でもドラムの直径が異なることがあります。このため、同じ容量の焙煎機でも微妙に異なるドラムスピードが必要になることがあります。たとえば、15kgのJoperのような細長いドラムは、Probat UG-15のように直径が大きく浅いドラムよりも、高い回転数が必要です。 ドラムスピードが低すぎる場合 ドラムスピードの設定が低すぎると、焙煎中にコーヒー豆がドラムの底に積み重なり、うまく混ざりません。この場合、豆が十分に回転せず、焙煎にムラが生じます。特に、底に積もった豆は熱いドラム壁に長時間触れることになり、スコーチングやフェイシングといったローストディフェクトが発生する可能性があります。 また、このような低い回転数では、ドラム内の豆が焙煎ガスに触れる機会が限られてしまい、コーヒー豆の山の表面にいる豆だけが熱風にさらされます。これにより、対流による熱伝達が減少し、豆が十分にディベロップするのが難しくなります。 ドラムスピードが高すぎる場合 逆に、ドラムスピードが高すぎると、遠心力で豆がドラムの壁に押し付けられ、表面が焦げてしまう可能性があります。ドラムの壁が高温であるため、豆の表面が焦げたり割れたりするローストディフェクトが発生することがあります。 この現象を理解するためには、遊園地の「グラビトロン」ライドというジャンルのアトラクションを思い浮かべてください。グラビトロンは大きなシリンダー型のライドで、回転速度が速くなると、乗客は重力に負けずに壁に押し付けられることになります。焙煎機でも、ドラムが高速回転すると同じように、豆が壁に押し付けられ、表面が焦げてしまうのです。 ドラムスピードは焙煎の品質に大きな影響を与えるため、最適な回転数を見つけることが非常に重要です。低すぎる回転数や高すぎる回転数は、焙煎ムラやローストディフェクトを引き起こし、最良の焙煎結果を得るのを難しくします。 遠心力は遊園地の乗り物では楽しい体験かもしれませんが、コーヒー豆にとっては良くない影響を与えることがあります。 もし焙煎機のrpmが高すぎると、コーヒー豆がドラムの熱い壁に押し付けられてしまい、表面が焦げる可能性があります。豆はドラムの壁にくっついてしまい、焙煎機内の熱風との接触が限られるため、対流による熱伝達が少なくなります。その結果、豆の内部が十分にディベロップしづらくなり、均一な焙煎が難しくなります。 スイートスポット 最適なドラムスピードは、このような「高すぎる」または「低すぎる」の極端な回転数の間にある「満足のいく中間」にあります。理想的な回転数では、対流による熱伝達を最大化し、伝導(豆がドラムの壁に接触して伝わる熱)による熱伝達を最小限に抑えることができます。この状態では、ドラムの回転が豆を空気流の中に持ち上げ、豆がドラム壁に押し付けられてしまうほど速く回転することはありません。 理想的なドラムスピードをイメージするには、回転式乾燥機の中で衣類がどのように動くかを想像してみてください。ドラムが回転すると、衣類が持ち上げられ、その後、熱風で落ちていきます。この動きによって、衣類と空気の接触面が最大化され、対流が効率的に行われます。焙煎機も同じように、豆が空気流の中で動きながら熱風と十分に接触し、均一な焙煎が進むのです。 この「スイートスポット」を見つけることが、理想的な焙煎結果を得るためにはとても重要です。 回転式乾燥機のドラムスピードは、衣類と熱風の接触量を最大化することで対流を効率的に引き起こし、熱の伝わり方を最適化します。 この原理は焙煎機にも当てはまり、最適なドラムスピードで回転することで、豆の山がよく混ぜられ、ムラのない均一な焙煎が実現します。 推奨されるrpmの範囲からわずかに外れることは通常許容されますが、実際には一部のロースターでは、工場出荷時に設定されたドラムスピードが最適とは言えない場合があります。もし、ドラムスピードが推奨範囲より大幅に高すぎたり低すぎたりする場合は、rpmを調整する必要があります。 1つの例外として、Loring や IMF など、熱源として熱風を使い、間接的に加熱するタイプの焙煎機があります。このタイプの焙煎機では、ほぼすべての熱が対流によって伝達されるため、豆の表面が焦げる危険性が非常に低くなります。そのため、許容されるドラムスピードの範囲が広くなります。このタイプの焙煎機での気にかけるべきことは、豆を適切に混ぜるのに十分な回転数を確保することです。 1.02 終

ドリップとバッチブリュー_7.03 原価計算

7.03 原価計算 原価計算 コーヒーマシンやバッチブリュワーの抽出と比較して、ハンドドリップで抽出に要する人件費には格段の差があります。コーヒーマシンやバッチブリュワーの抽出における経費節減の一因は抽出工程の自動化にあります。ただし、大きな節減につながるのは数杯分を一度に作るバッチブリュワーです。すなわち、ハンドドリップコーヒーの小売価格は、バッチブリュワーよりもはるかに高く設定する必要があるということです。 透過法で抽出したコーヒーの小売価格を適正に設定するためには、バリスタが1杯分を作るために要する時間、つまり準備から出来上がりまでの時間を正確に知ることが特に重要です。カフェのワークフローのベースラインとして設けた時間目標(レッスン7.02を参照)を使用することで、バッチブリュワーのフィルターコーヒーを2分と掛からずに用意できます。これには、前回抽出した際のバッチブリュワーに残っている粉を廃棄するステップから、湯通し、フィルターバスケットの予熱、そして抽出ボタンをオンにするまでのすべてのステップが含まれます。バッチブリュワーでは抽出サイクルが機械化されているので、そこから先は人手がかかりません。そのため、抽出サイクルの時間を加算する必要はありません。 1杯あたりの最終的な人件費を導き出すには、カフェで提供する1杯のコスト構造を知る必要があります。バリスタは、すべてのコーヒーが適正な価格となるよう、1杯分の基準提供量を守り、できる限り一貫性を保つよう努める必要があります。バッチブリュワーから何杯分のコーヒーがとれるかを確認したら、作成にかかる人件費を提供杯数で割ることができます 。液体保持率が抽出液の量に影響するという、レッスン2.02で学んだことを思い出してください。ドリップコーヒーの場合、抽出後のコーヒーかすには、コーヒーの粉1gあたり平均2.2 gの水が保持されています。例えば、120 gのコーヒーの粉を使用する2リットルのバッチでは、ドース量1gあたり2g強の抽出液を失う傾向があります。よって、このケースでは、コーヒーかすに264 gの水が保持されることが予想されます。これは、2リットルバッチあたりおよそ1杯分です。 作業の同時並行スキルに長けた効率的なバリスタは、希釈フェーズが終了するまで2分ごとにドリップコーヒーを淹れることもできます(注湯回数が2回のみの場合)。しかしながら、これは1杯分に2分を要するということで、それに対して通常の2リットルのバッチサイズからは8杯分とれます。ハンドドリップの相対的な労働の非効率性は、コーヒーマシンで抽出した同じコーヒーと比べたときに、小売価格をより高く設定する必要があることを意味します。 最終的にカフェのドリンクの価格は、家賃や光熱費といった多くの要因に左右されます。とはいえ、人件費と原材料費で大方カバーできるように、 コーヒー価格計算ツールを作成しました(レッスン7.04を参照)。最終的な利益を適宜調整し、透過法によるコーヒーの最終提示価格の決定に役立てることができます。 参照基準として、What I Know About Running Coffee Shops の著者であるコリン・ハーモンより、彼の秀逸な著書からこのインフォグラフィック(下記)の転載を許可してもらいました。カフェの健全な財務の大まかな指標として、コリンは、人件費の総額を売上高(売上税を含まない)の約31%とすることを推奨しています。その数値をベースラインとして使用する場合、この数値をオーバーしているときにコーヒー価格計算ツールを使え ば、ハンドドリップ工程のどのポイントに問題があるのかを確認できます。例えば、業界平均に基づいて私たちがここで示したように、ドリップコーヒーを作るのに4分以上要する場合、 毎分レベルで31%を超す人件費がかかることになります。 著者コリン・ハーモンの許諾を得て、What I Know About Running Coffee Shopsより転載されたインフォグラフィック スペシャルティコーヒーショップでは、シフトを通して絶え間なくハンドドリップコーヒーを作るということはまずありません。コリンのいう31%という数字は、単に作業中の任意の1分間を切り取ったものではなく、1年間を通しての年間売上高に照らしたものです。ただし、ハンドドリップで淹れる毎分ごとに、1分あたりの人件費が1分あたりの正味利益の31%を超える場合は、作業効率を上げるか、ハンドドリップコーヒーの価格を上げるかの2つのうちいずれかの対策をお勧めします。 7.03...

ドリップとバッチブリュー_7.03 原価計算

7.03 原価計算 原価計算 コーヒーマシンやバッチブリュワーの抽出と比較して、ハンドドリップで抽出に要する人件費には格段の差があります。コーヒーマシンやバッチブリュワーの抽出における経費節減の一因は抽出工程の自動化にあります。ただし、大きな節減につながるのは数杯分を一度に作るバッチブリュワーです。すなわち、ハンドドリップコーヒーの小売価格は、バッチブリュワーよりもはるかに高く設定する必要があるということです。 透過法で抽出したコーヒーの小売価格を適正に設定するためには、バリスタが1杯分を作るために要する時間、つまり準備から出来上がりまでの時間を正確に知ることが特に重要です。カフェのワークフローのベースラインとして設けた時間目標(レッスン7.02を参照)を使用することで、バッチブリュワーのフィルターコーヒーを2分と掛からずに用意できます。これには、前回抽出した際のバッチブリュワーに残っている粉を廃棄するステップから、湯通し、フィルターバスケットの予熱、そして抽出ボタンをオンにするまでのすべてのステップが含まれます。バッチブリュワーでは抽出サイクルが機械化されているので、そこから先は人手がかかりません。そのため、抽出サイクルの時間を加算する必要はありません。 1杯あたりの最終的な人件費を導き出すには、カフェで提供する1杯のコスト構造を知る必要があります。バリスタは、すべてのコーヒーが適正な価格となるよう、1杯分の基準提供量を守り、できる限り一貫性を保つよう努める必要があります。バッチブリュワーから何杯分のコーヒーがとれるかを確認したら、作成にかかる人件費を提供杯数で割ることができます 。液体保持率が抽出液の量に影響するという、レッスン2.02で学んだことを思い出してください。ドリップコーヒーの場合、抽出後のコーヒーかすには、コーヒーの粉1gあたり平均2.2 gの水が保持されています。例えば、120 gのコーヒーの粉を使用する2リットルのバッチでは、ドース量1gあたり2g強の抽出液を失う傾向があります。よって、このケースでは、コーヒーかすに264 gの水が保持されることが予想されます。これは、2リットルバッチあたりおよそ1杯分です。 作業の同時並行スキルに長けた効率的なバリスタは、希釈フェーズが終了するまで2分ごとにドリップコーヒーを淹れることもできます(注湯回数が2回のみの場合)。しかしながら、これは1杯分に2分を要するということで、それに対して通常の2リットルのバッチサイズからは8杯分とれます。ハンドドリップの相対的な労働の非効率性は、コーヒーマシンで抽出した同じコーヒーと比べたときに、小売価格をより高く設定する必要があることを意味します。 最終的にカフェのドリンクの価格は、家賃や光熱費といった多くの要因に左右されます。とはいえ、人件費と原材料費で大方カバーできるように、 コーヒー価格計算ツールを作成しました(レッスン7.04を参照)。最終的な利益を適宜調整し、透過法によるコーヒーの最終提示価格の決定に役立てることができます。 参照基準として、What I Know About Running Coffee Shops の著者であるコリン・ハーモンより、彼の秀逸な著書からこのインフォグラフィック(下記)の転載を許可してもらいました。カフェの健全な財務の大まかな指標として、コリンは、人件費の総額を売上高(売上税を含まない)の約31%とすることを推奨しています。その数値をベースラインとして使用する場合、この数値をオーバーしているときにコーヒー価格計算ツールを使え ば、ハンドドリップ工程のどのポイントに問題があるのかを確認できます。例えば、業界平均に基づいて私たちがここで示したように、ドリップコーヒーを作るのに4分以上要する場合、 毎分レベルで31%を超す人件費がかかることになります。 著者コリン・ハーモンの許諾を得て、What I Know About Running Coffee Shopsより転載されたインフォグラフィック スペシャルティコーヒーショップでは、シフトを通して絶え間なくハンドドリップコーヒーを作るということはまずありません。コリンのいう31%という数字は、単に作業中の任意の1分間を切り取ったものではなく、1年間を通しての年間売上高に照らしたものです。ただし、ハンドドリップで淹れる毎分ごとに、1分あたりの人件費が1分あたりの正味利益の31%を超える場合は、作業効率を上げるか、ハンドドリップコーヒーの価格を上げるかの2つのうちいずれかの対策をお勧めします。 7.03...

ドリップとバッチブリュー_5.01 ライムスケール

5.01  ライムスケール ライムスケール 水を使用した機器のトラブルで最もよく起こる問題がライムスケールです。溶解したカルシウムとマグネシウム塩を含む水(通常は、雨水が岩盤に浸透して地下水となったもの)は、加熱するとこれらのミネラルを一部放出する傾向があります。外気と接触していた水には溶存二酸化炭素(CO2)も含まれています。溶存カルシウムと溶存二酸化炭素は水中で結合し、重炭酸カルシウムを形成します。この物質は、化学構造を変化させ、CO2を放出することで初めてライムスケールを形成します。抽出の際に水を熱するとCO2が放出され、炭酸カルシウムという化合物が生成されます。その後、この化合物は水の底に沈んで(沈殿)ヒーティングエレメントとボイラーの表面に付着し、ライムスケールと全く同じ材質で皮膜を形成します。 幸いにもコーヒーメーカーは、通常はそれほど流量を制限しないため、エスプレッソマシンよりもライムスケールが付着しにくい傾向にあります。コーヒーメーカーにおける流量制限は、エスプレッソマシンのような、水が直径わずか0.5 mmのフローリストリクターを通過するような設計ではありませが、コーヒーメーカーのヒーティングエレメントとスプレーヘッドにはライムスケールが蓄積する傾向があります。バッジブリュワーのような大型コーヒーマシンのヒーティングエレメントは、通常、厚みのある銅ないしアルミニウム板がねじれた形をしています。銅やアルミニウムほどの熱伝導性がないライムスケールは、ヒーティングエレメントを絶縁層で包み込むような働きをします。 必要以上に光熱費がかかることを防ぎ、コーヒーメーカーから水漏れが起きないようにするため、ライムスケールの除去が必要か否か定期的に見極めることが大切です。除去が必要か否かの判断に際しては、専門のメンテナンススタッフが点検とライムスケール除去作業を行う必要があります。わずかに付着したライムスケールは、ヒーティングエレメントとボイラー内側の表面保護に役立ちます。ライムスケールの薄層が粉砂糖をまぶしたように見えるときは、マシンはまだ最適な状態で動作している可能性が高いです。付着物がこれよりも厚いようなら、マシンのライムスケール除去が必要です。居住地が硬水地域ではない人、水の管理を厳密に行っている人、目立ったライムスケール蓄積の跡が機械に見られない人には、定期的なライムスケールの除去はおすすめしません。 機材のライムスケール除去を正しく行う場合、機器の分解・再構築と金属部品すべての酸性溶液への浸漬が伴います。ライムスケールの付着がそれほどないにもかかわらず頻繁に実施した場合、この工程により機器の部品に腐食が生じる恐れがあります。したがって、慎重に管理を行う必要があります。 5.01 終

ドリップとバッチブリュー_5.01 ライムスケール

5.01  ライムスケール ライムスケール 水を使用した機器のトラブルで最もよく起こる問題がライムスケールです。溶解したカルシウムとマグネシウム塩を含む水(通常は、雨水が岩盤に浸透して地下水となったもの)は、加熱するとこれらのミネラルを一部放出する傾向があります。外気と接触していた水には溶存二酸化炭素(CO2)も含まれています。溶存カルシウムと溶存二酸化炭素は水中で結合し、重炭酸カルシウムを形成します。この物質は、化学構造を変化させ、CO2を放出することで初めてライムスケールを形成します。抽出の際に水を熱するとCO2が放出され、炭酸カルシウムという化合物が生成されます。その後、この化合物は水の底に沈んで(沈殿)ヒーティングエレメントとボイラーの表面に付着し、ライムスケールと全く同じ材質で皮膜を形成します。 幸いにもコーヒーメーカーは、通常はそれほど流量を制限しないため、エスプレッソマシンよりもライムスケールが付着しにくい傾向にあります。コーヒーメーカーにおける流量制限は、エスプレッソマシンのような、水が直径わずか0.5 mmのフローリストリクターを通過するような設計ではありませが、コーヒーメーカーのヒーティングエレメントとスプレーヘッドにはライムスケールが蓄積する傾向があります。バッジブリュワーのような大型コーヒーマシンのヒーティングエレメントは、通常、厚みのある銅ないしアルミニウム板がねじれた形をしています。銅やアルミニウムほどの熱伝導性がないライムスケールは、ヒーティングエレメントを絶縁層で包み込むような働きをします。 必要以上に光熱費がかかることを防ぎ、コーヒーメーカーから水漏れが起きないようにするため、ライムスケールの除去が必要か否か定期的に見極めることが大切です。除去が必要か否かの判断に際しては、専門のメンテナンススタッフが点検とライムスケール除去作業を行う必要があります。わずかに付着したライムスケールは、ヒーティングエレメントとボイラー内側の表面保護に役立ちます。ライムスケールの薄層が粉砂糖をまぶしたように見えるときは、マシンはまだ最適な状態で動作している可能性が高いです。付着物がこれよりも厚いようなら、マシンのライムスケール除去が必要です。居住地が硬水地域ではない人、水の管理を厳密に行っている人、目立ったライムスケール蓄積の跡が機械に見られない人には、定期的なライムスケールの除去はおすすめしません。 機材のライムスケール除去を正しく行う場合、機器の分解・再構築と金属部品すべての酸性溶液への浸漬が伴います。ライムスケールの付着がそれほどないにもかかわらず頻繁に実施した場合、この工程により機器の部品に腐食が生じる恐れがあります。したがって、慎重に管理を行う必要があります。 5.01 終