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WC_1.04 永久硬度
永久硬度とは 永久硬度とは、水を沸騰したときに除去されずに残るマグネシウムイオンとカルシウムイオンの濃度です。カルシウムやマグネシウムは、炭酸イオンと炭酸水素イオン以外の陰イオンとも化合物を生成し、それらが水に溶けると煮沸するだけでは取り除けません。塩化物と硫酸塩は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合し、硫酸マグネシウム や塩化カルシウム などの塩を生成します。これらのミネラルはライムスケールの原因にはならず、コーヒーの酸味をやわらげる働きもありませんが、コーヒーのフレーバーには影響します。永久硬度の測定方法 総硬度(GH)から炭酸塩硬度(KH)の測定値を差し引くことで、永久硬度をすばやく推定することができます。KHは一時硬度を、GHは水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの濃度を表しているため、永久硬度の推定値は、以下のような簡単な計算で求められます。総硬度(GH)-炭酸塩硬度(KH)=永久硬度例えば、GHが100 mg/LでKHが40 mg/Lの場合、GHからKHを差し引くだけで永久硬度を推定できます。100-40=永久硬度 60 mg/L滴定を応用した測定法によって、マグネシウムイオンとカルシウムイオンを別々に測定することも可能です。ただし、そのような専門的な滴定キットは手に入りづらく、必須という訳ではありません。専門的な滴定キットが手に入らず、GHとKHしか測定できない場合でも、水中のマグネシウムとカルシウムのバランスを推定する方法があります。GHの測定値を使えば、それぞれの地域の水道局が提供している情報を基に、水道水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの比率を推定できるのです。逆浸透膜浄水処理(第4章4.02を参照)を使って水を軟化している場合や、軟水化の必要がない地域に住んでいる場合、このミネラル比率は浄水処理後も変わりません。 1.04 終
WC_1.04 永久硬度
永久硬度とは 永久硬度とは、水を沸騰したときに除去されずに残るマグネシウムイオンとカルシウムイオンの濃度です。カルシウムやマグネシウムは、炭酸イオンと炭酸水素イオン以外の陰イオンとも化合物を生成し、それらが水に溶けると煮沸するだけでは取り除けません。塩化物と硫酸塩は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合し、硫酸マグネシウム や塩化カルシウム などの塩を生成します。これらのミネラルはライムスケールの原因にはならず、コーヒーの酸味をやわらげる働きもありませんが、コーヒーのフレーバーには影響します。永久硬度の測定方法 総硬度(GH)から炭酸塩硬度(KH)の測定値を差し引くことで、永久硬度をすばやく推定することができます。KHは一時硬度を、GHは水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの濃度を表しているため、永久硬度の推定値は、以下のような簡単な計算で求められます。総硬度(GH)-炭酸塩硬度(KH)=永久硬度例えば、GHが100 mg/LでKHが40 mg/Lの場合、GHからKHを差し引くだけで永久硬度を推定できます。100-40=永久硬度 60 mg/L滴定を応用した測定法によって、マグネシウムイオンとカルシウムイオンを別々に測定することも可能です。ただし、そのような専門的な滴定キットは手に入りづらく、必須という訳ではありません。専門的な滴定キットが手に入らず、GHとKHしか測定できない場合でも、水中のマグネシウムとカルシウムのバランスを推定する方法があります。GHの測定値を使えば、それぞれの地域の水道局が提供している情報を基に、水道水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの比率を推定できるのです。逆浸透膜浄水処理(第4章4.02を参照)を使って水を軟化している場合や、軟水化の必要がない地域に住んでいる場合、このミネラル比率は浄水処理後も変わりません。 1.04 終
WC_0.03 ミネラルの溶解
ミネラルの溶解 コーヒーを淹れる際に大切な無機塩類(ミネラル)は、イオン化合物であり、イオン結合によって結び付いています。無機塩類は水に触れるとすぐに溶け始めます。溶解が起こると、結合して無機塩になっていたイオンはバラバラになり、解離します。つまり、ミネラルを形作っていたイオンは水中で結合が解かれた自由な状態になります。これはあらゆる無機塩類が溶解する際に起こります。水はイオンではありませんが、性質は少しイオンに似ています。水は極性分子ですので、水分子の数が反応を起こすのに十分な状態では、水分子の片側にプラスやマイナスの電荷が少しでも掛かるとイオンを引き付けます。下図のように1つのイオンを複数の水分子が取り囲み、他のイオンから引き離します。この図は、バラバラになったイオンが水分子(H₂O)に取り囲まれ、食塩(NaCl)が塩化物イオン(陰イオン)とナトリウムイオン(陽イオン)に解離していく様子を表しています。 イオン結合:電子を奪うコーヒーにとって重要なミネラルは、すべて無機塩類の形をとります。無機塩類は、イオン結合によって結び付いています。電子を他の原子と共有する代わりに、原子同士が1個または複数の電子を取り合って結合しています。こうした結合を「イオン結合」と呼び、無機塩類は代表的なイオン化合物として知られています。例えば、塩素(Cl)は水を消毒するために使われますが、外側の電子殻には7個の電子を持っています。塩素が安定するためには、他の分子から電子を1つ「奪う」必要があります。電子はマイナスの電荷を持つので、塩素分子は奪った電子の数だけマイナスの電荷を得ます。電荷を得た原子は、イオンになります。電子を奪った方の原子は、マイナスの電荷を得るので「陰イオン」と呼ばれ、電子を奪われた方の原子は、プラスの電荷を得て「陽イオン」と呼ばれます。化学式では、陽イオンと陰イオンを区別するために記号を用います。プラス(+)やマイナス(-)の記号を、元素記号に上付きで加えます。例えば、マグネシウムイオンは「Mg2+」と表記されます。マグネシウム原子の最外殻には電子が2個入っているので、その2個を奪われ、マグネシウムイオンになっています。記号で示されている通り、電子2個分のプラスの電荷を持ちます。マグネシウムイオンが電子2個分のプラスの電荷を持つのに対し、塩素イオンはマイナスの電荷を1個しか持ちません。そのため、塩化マグネシウム分子は、1個のマグネシウムイオンにつき2個の塩素イオンによって構成されます。塩化マグネシウムは、元素記号でMgCl2と表記します。元素記号や化学式の読み方について復習したい人は、こちらのリンクより「化学式の読み方」を参照してください。 0.03 終
WC_0.03 ミネラルの溶解
ミネラルの溶解 コーヒーを淹れる際に大切な無機塩類(ミネラル)は、イオン化合物であり、イオン結合によって結び付いています。無機塩類は水に触れるとすぐに溶け始めます。溶解が起こると、結合して無機塩になっていたイオンはバラバラになり、解離します。つまり、ミネラルを形作っていたイオンは水中で結合が解かれた自由な状態になります。これはあらゆる無機塩類が溶解する際に起こります。水はイオンではありませんが、性質は少しイオンに似ています。水は極性分子ですので、水分子の数が反応を起こすのに十分な状態では、水分子の片側にプラスやマイナスの電荷が少しでも掛かるとイオンを引き付けます。下図のように1つのイオンを複数の水分子が取り囲み、他のイオンから引き離します。この図は、バラバラになったイオンが水分子(H₂O)に取り囲まれ、食塩(NaCl)が塩化物イオン(陰イオン)とナトリウムイオン(陽イオン)に解離していく様子を表しています。 イオン結合:電子を奪うコーヒーにとって重要なミネラルは、すべて無機塩類の形をとります。無機塩類は、イオン結合によって結び付いています。電子を他の原子と共有する代わりに、原子同士が1個または複数の電子を取り合って結合しています。こうした結合を「イオン結合」と呼び、無機塩類は代表的なイオン化合物として知られています。例えば、塩素(Cl)は水を消毒するために使われますが、外側の電子殻には7個の電子を持っています。塩素が安定するためには、他の分子から電子を1つ「奪う」必要があります。電子はマイナスの電荷を持つので、塩素分子は奪った電子の数だけマイナスの電荷を得ます。電荷を得た原子は、イオンになります。電子を奪った方の原子は、マイナスの電荷を得るので「陰イオン」と呼ばれ、電子を奪われた方の原子は、プラスの電荷を得て「陽イオン」と呼ばれます。化学式では、陽イオンと陰イオンを区別するために記号を用います。プラス(+)やマイナス(-)の記号を、元素記号に上付きで加えます。例えば、マグネシウムイオンは「Mg2+」と表記されます。マグネシウム原子の最外殻には電子が2個入っているので、その2個を奪われ、マグネシウムイオンになっています。記号で示されている通り、電子2個分のプラスの電荷を持ちます。マグネシウムイオンが電子2個分のプラスの電荷を持つのに対し、塩素イオンはマイナスの電荷を1個しか持ちません。そのため、塩化マグネシウム分子は、1個のマグネシウムイオンにつき2個の塩素イオンによって構成されます。塩化マグネシウムは、元素記号でMgCl2と表記します。元素記号や化学式の読み方について復習したい人は、こちらのリンクより「化学式の読み方」を参照してください。 0.03 終
WC_0.0 プロローグ:水の化学
本章の内容 このコースには化学の基本知識が求められますが、水とコーヒーで起こり得る主な化学反応について、必要な情報に絞って分かりやすくご説明します。 水分子の結合の仕組みや、水が優秀な溶媒である理由を解説します。 水分子の化学結合を学んだ後は、大気中の二酸化炭素やミネラルを溶解する水の働きについて学びます。 0.0 終
WC_0.0 プロローグ:水の化学
本章の内容 このコースには化学の基本知識が求められますが、水とコーヒーで起こり得る主な化学反応について、必要な情報に絞って分かりやすくご説明します。 水分子の結合の仕組みや、水が優秀な溶媒である理由を解説します。 水分子の化学結合を学んだ後は、大気中の二酸化炭素やミネラルを溶解する水の働きについて学びます。 0.0 終
ACM_7.1 焙煎における溶解度の捉え方
焙煎における溶解度の捉え方 味わいのプロファイル作りの際には、複数のテストロースト品を比較し、コーヒーの味覚的な特徴を解析します。カッピングテーブル上での正確なクラストのブレイク方法を含め、それぞれのカップが同じ抽出パラメーターとなる手順を用いることがとても重要です。クラストをブレイクしたら、全く同じ時間でそれぞれのカップからサンプルを採取します。官能評価を終えたら、どの焙煎プロファイルがより可溶性が高かったか、TDSの計測値を比べます。 可溶性を考慮した焙煎プロファイルへのアプローチ方法 例として4つのテストロースト品で味を取って8分後にTDSを計測し、クラストをブレイクした4分後にカッピングボウルから粉を取り除いたとします。 素晴らしい焙煎とは溶解性が高く品質的に優れている焙煎を指します。溶解性が低くても美味しければ構いませんが、溶解性の高い焙煎プロファイルで仕上げたコーヒーを用いるより、目標とするTDSに達するためにより多くのコーヒーが必要になるので、コストを価格に転嫁する必要に迫られます。つまり、1杯あたりの粗利が下がるとも言えます。この差はエスプレッソでより顕著となり、溶解度が低い一方品質的に美味しい焙煎プロファイルの例と同じく、その焙煎プロファイルでエスプレッソを抽出し、18~22%の収率に達することは難しいでしょう。 例: テスト#1:ある焙煎プロファイルにおいては、1.5%のTDSで焦げた味がして美味しくありませんでした。 溶解性の面では優れていても、風味は良くありませんので、この一杯はなかった事にしましょう。 溶解性 ✔風味 ❌ テスト#2:この焙煎プロファイルは野菜のような味わいかつ溶解性も低いプロファイルでした。これは許容できません。 溶解性 ❌風味 ❌ テスト#3:この焙煎プロファイルは品質的に優れており、TDSは1.15%でした。 溶解性 ✔風味 ✔ テスト#4:このプロファイルは品質的に優れており、TDSは1.3%でした。 溶解性 ✔風味 ✔ お客様に提供する焙煎プロファイルとして正しいのは、明らかに1.3%のTDSを示した最後の焙煎プロファイルでしょう。この焙煎プロファイルを使用することで、バリスタとしてもより簡単に抽出をすることができます。もちろんテスト#3も品質的に優れており、なかなかの溶解度でしたが、テスト#4ほどの結果ではありませんでした。もしテスト#4より品質的に優れていれば、溶解性の低下を受け入れた上で、テスト#3のプロファイルを選ぶことも可能です。 ...
ACM_7.1 焙煎における溶解度の捉え方
焙煎における溶解度の捉え方 味わいのプロファイル作りの際には、複数のテストロースト品を比較し、コーヒーの味覚的な特徴を解析します。カッピングテーブル上での正確なクラストのブレイク方法を含め、それぞれのカップが同じ抽出パラメーターとなる手順を用いることがとても重要です。クラストをブレイクしたら、全く同じ時間でそれぞれのカップからサンプルを採取します。官能評価を終えたら、どの焙煎プロファイルがより可溶性が高かったか、TDSの計測値を比べます。 可溶性を考慮した焙煎プロファイルへのアプローチ方法 例として4つのテストロースト品で味を取って8分後にTDSを計測し、クラストをブレイクした4分後にカッピングボウルから粉を取り除いたとします。 素晴らしい焙煎とは溶解性が高く品質的に優れている焙煎を指します。溶解性が低くても美味しければ構いませんが、溶解性の高い焙煎プロファイルで仕上げたコーヒーを用いるより、目標とするTDSに達するためにより多くのコーヒーが必要になるので、コストを価格に転嫁する必要に迫られます。つまり、1杯あたりの粗利が下がるとも言えます。この差はエスプレッソでより顕著となり、溶解度が低い一方品質的に美味しい焙煎プロファイルの例と同じく、その焙煎プロファイルでエスプレッソを抽出し、18~22%の収率に達することは難しいでしょう。 例: テスト#1:ある焙煎プロファイルにおいては、1.5%のTDSで焦げた味がして美味しくありませんでした。 溶解性の面では優れていても、風味は良くありませんので、この一杯はなかった事にしましょう。 溶解性 ✔風味 ❌ テスト#2:この焙煎プロファイルは野菜のような味わいかつ溶解性も低いプロファイルでした。これは許容できません。 溶解性 ❌風味 ❌ テスト#3:この焙煎プロファイルは品質的に優れており、TDSは1.15%でした。 溶解性 ✔風味 ✔ テスト#4:このプロファイルは品質的に優れており、TDSは1.3%でした。 溶解性 ✔風味 ✔ お客様に提供する焙煎プロファイルとして正しいのは、明らかに1.3%のTDSを示した最後の焙煎プロファイルでしょう。この焙煎プロファイルを使用することで、バリスタとしてもより簡単に抽出をすることができます。もちろんテスト#3も品質的に優れており、なかなかの溶解度でしたが、テスト#4ほどの結果ではありませんでした。もしテスト#4より品質的に優れていれば、溶解性の低下を受け入れた上で、テスト#3のプロファイルを選ぶことも可能です。 ...
ACM_6.5 二酸化炭素量設定と水分値設定が与える計測値への影響
二酸化炭素量設定と水分値設定が与える計測値への影響 この動画では、MattがVSTコーヒーツールアプリで二酸化炭素と水分の設定を変えるとどうなるかを説明しています。 アンドロイドユーザー向けのスクリーンショット ここでは、なぜ二酸化炭素量設定と水分値設定が重要か、コーヒーツールアプリのスクリーンショットの実例を使って説明します。 この例では液体保持率(LRR)はグラム当たり2ミリリットル、間質液のTDSが0%として設定しています。 例A:アンドロイド版VSTアプリのスクリーンショット 二酸化炭素量1%、水分値3%の含有率に着目してください。 例B:二酸化炭素量と水分値の設定をゼロにしています。 不思議な点とその理由 この2つの例の最も大きな違いは二酸化炭素量1%、水分値3%で設定した方が収率が0.95%高いという点です。 不思議なことに全く同じ抽出比率で淹れた2つの液量(BEV)に2グラムの差があります。 なぜならコーヒーと抽出に使用した水の比率の変動は、使用するコーヒー量が少ないほど、粉に留まる液体も少なくなるという液体保持率の影響です。 もう一つ不思議なのは、最初の例の方が収率が0.95%高く、つまりほぼ1%であり、これは相当な影響であることでしょう。 これは例Aでは、二酸化炭素量1%、水分値3%設定により、15グラムでなく14.45グラムとされているためです。 例Bでは例Aより多い15グラムのコーヒーで、抽出に使用した水も例Aより0.45グラム少なくなっています。少ないコーヒーと少し多めの水であれば、同じTDS値でも高めの収率を得る結果となります。 極深煎りの場合 2ハゼ以降まで焙煎した深煎りだと、焙煎中に熱が加わることでより多くの炭水化物とクロロゲン酸が二酸化炭素と水蒸気に変わるため、二酸化炭素量は比較的多くなります。二酸化炭素の含有率が1%で水分含有率もたった1%だったとしてみましょう。 E. E Lockhartによる従来の計算式を用いると、20グラム:40グラムの抽出比率で淹れたTDS10%のエスプレッソはこのように算出されます:...
ACM_6.5 二酸化炭素量設定と水分値設定が与える計測値への影響
二酸化炭素量設定と水分値設定が与える計測値への影響 この動画では、MattがVSTコーヒーツールアプリで二酸化炭素と水分の設定を変えるとどうなるかを説明しています。 アンドロイドユーザー向けのスクリーンショット ここでは、なぜ二酸化炭素量設定と水分値設定が重要か、コーヒーツールアプリのスクリーンショットの実例を使って説明します。 この例では液体保持率(LRR)はグラム当たり2ミリリットル、間質液のTDSが0%として設定しています。 例A:アンドロイド版VSTアプリのスクリーンショット 二酸化炭素量1%、水分値3%の含有率に着目してください。 例B:二酸化炭素量と水分値の設定をゼロにしています。 不思議な点とその理由 この2つの例の最も大きな違いは二酸化炭素量1%、水分値3%で設定した方が収率が0.95%高いという点です。 不思議なことに全く同じ抽出比率で淹れた2つの液量(BEV)に2グラムの差があります。 なぜならコーヒーと抽出に使用した水の比率の変動は、使用するコーヒー量が少ないほど、粉に留まる液体も少なくなるという液体保持率の影響です。 もう一つ不思議なのは、最初の例の方が収率が0.95%高く、つまりほぼ1%であり、これは相当な影響であることでしょう。 これは例Aでは、二酸化炭素量1%、水分値3%設定により、15グラムでなく14.45グラムとされているためです。 例Bでは例Aより多い15グラムのコーヒーで、抽出に使用した水も例Aより0.45グラム少なくなっています。少ないコーヒーと少し多めの水であれば、同じTDS値でも高めの収率を得る結果となります。 極深煎りの場合 2ハゼ以降まで焙煎した深煎りだと、焙煎中に熱が加わることでより多くの炭水化物とクロロゲン酸が二酸化炭素と水蒸気に変わるため、二酸化炭素量は比較的多くなります。二酸化炭素の含有率が1%で水分含有率もたった1%だったとしてみましょう。 E. E Lockhartによる従来の計算式を用いると、20グラム:40グラムの抽出比率で淹れたTDS10%のエスプレッソはこのように算出されます:...
ACM_5.2 濃度勾配および拡散
濃度勾配および拡散 浸漬法と透過法、2つの抽出方法の最も顕著な違いは、収率を経時的に測定した際の濃度勾配の変化です。 図を見るとこの2つの抽出方法では、時間の経過とともに抽出率が大きく異なっています。 この浸漬法 vs 透過法の図はスコット・ラオの許可を得て掲載しています。 水中でコーヒーの分子は、高濃度のところから低濃度のところへ自然に広がります。 この現象は拡散と呼ばれ、同時に濃度勾配と呼ばれる現象を伴います。 お湯を張ったカップにティーバッグを入れて、揺らさずに放っておけば、ティーバッグに近いところは溶解した紅茶の固形分の濃度がより高くなります。 ティーバッグ内部が最高の濃度になり、飲み口に近いカップ上部が最も低い濃度となります。(ティーバッグを長時間放置しない限り) これが濃度勾配です。 この勾配は濃度の差が大きいほどに急になります。 ティーバッグとお湯の場合、ティーバッグを軽く揺らして全体を混ぜればこの勾配差が小さくなると思うかもしれませんが、実際は勾配が大きくなります。なぜなら、ティーバッグを揺らした後に飲み口に近いカップ上部の薄い紅茶と混ざり、茶葉に最も近い液体部分の濃度が薄まるためです。 この濃度勾配の増大は、より速い拡散速度つまりより速い抽出速度に繋がります。これはカッピング時にクラストをブレークする際、撹拌がなぜ抽出速度を早めるのか、という説明を容易にします。 ティーバッグを揺らさなくても、お茶は結果として抽出されることは周知の事実ですが、抽出工程として遅く、時間の経過と共にお湯の温度が徐々に低下することでさらに遅くなります。 この図はティーバッグ内の濃い液体、ティーバッグ付近の濃い液体と、ティーバッグから離れた薄い液体間の濃度勾配を示しています。 最初に大量の水を加える浸漬法の抽出は、一般的に抽出サイクルの初期段階で高い抽出率に到達します。対照的にドリップコーヒーにおける、蒸らしと呼ばれるプレ・インフュージョンの間の収率は非常に低いとされています。 ドリップコーヒーは、抽出サイクルの始めに粒子が水を吸収する一方で、浸漬法ではお湯を注ぐとすぐに粉の表面抽出に移行します。 この抽出速度の差は、浸漬法には抽出に使用できる水が透過法に比べて抽出初期からより多く存在しているという単純な理由に寄ります。 水は抽出における溶媒であり、より多くの溶媒の存在はより速い抽出を意味するのです。 新鮮な抽出用のお湯が継続的に加えられ、ケトルの水流を使って粉を撹拌するドリップコーヒーは、カッピングに用いられる浸漬式抽出よりも高い濃度勾配を有するので、よりアグレッシブな抽出方法と捉えることができます。 ドリップコーヒーでは、蒸らしの工程を経て抽出が進むにつれて、固形分への浸食と高濃度帯から低濃度帯へと粒子が移動する拡散が起こります。 撹拌または浸食が機能しなくても、十分な時間が与えられればティーバッグ内の可溶性成分とカップ内の水との間には勾配がなくなります。 この平衡にはより高い温度でより速く至ります。 アレニウスの公式(レッスン4.4)で見たように、反応速度は温度の上昇とともに増加し、高濃度では減速します。 また、浸漬法における収率の曲線は時間を追うごとにかなり減少します。 逆に透過法は浸漬法と比べて抽出サイクルの終了時に高い収率へ到達します。 これは浸漬法に比べて、ドリップコーヒーの抽出が難しいことを意味しています。 また、浸漬法は抽出特性上18~22%の収率により早く達するので、抽出管理表の最適な抽出範囲に調整しやすいとも考えられていますが、だからと言って浸漬式抽出がより美味しいと言う訳ではありません クレバードリッパーやエアロプレスのようなハイブリッドタイプの抽出器具では、抽出終了時に一気に水位を下げるフェーズ(重力を使ったり、人為的に押したりするフェーズ)が存在します。ハイブリッドタイプの浸漬法と透過法の明確な違いは、抽出サイクルの最後に抽出する液体が最も濃い液体となることです。...
ACM_5.2 濃度勾配および拡散
濃度勾配および拡散 浸漬法と透過法、2つの抽出方法の最も顕著な違いは、収率を経時的に測定した際の濃度勾配の変化です。 図を見るとこの2つの抽出方法では、時間の経過とともに抽出率が大きく異なっています。 この浸漬法 vs 透過法の図はスコット・ラオの許可を得て掲載しています。 水中でコーヒーの分子は、高濃度のところから低濃度のところへ自然に広がります。 この現象は拡散と呼ばれ、同時に濃度勾配と呼ばれる現象を伴います。 お湯を張ったカップにティーバッグを入れて、揺らさずに放っておけば、ティーバッグに近いところは溶解した紅茶の固形分の濃度がより高くなります。 ティーバッグ内部が最高の濃度になり、飲み口に近いカップ上部が最も低い濃度となります。(ティーバッグを長時間放置しない限り) これが濃度勾配です。 この勾配は濃度の差が大きいほどに急になります。 ティーバッグとお湯の場合、ティーバッグを軽く揺らして全体を混ぜればこの勾配差が小さくなると思うかもしれませんが、実際は勾配が大きくなります。なぜなら、ティーバッグを揺らした後に飲み口に近いカップ上部の薄い紅茶と混ざり、茶葉に最も近い液体部分の濃度が薄まるためです。 この濃度勾配の増大は、より速い拡散速度つまりより速い抽出速度に繋がります。これはカッピング時にクラストをブレークする際、撹拌がなぜ抽出速度を早めるのか、という説明を容易にします。 ティーバッグを揺らさなくても、お茶は結果として抽出されることは周知の事実ですが、抽出工程として遅く、時間の経過と共にお湯の温度が徐々に低下することでさらに遅くなります。 この図はティーバッグ内の濃い液体、ティーバッグ付近の濃い液体と、ティーバッグから離れた薄い液体間の濃度勾配を示しています。 最初に大量の水を加える浸漬法の抽出は、一般的に抽出サイクルの初期段階で高い抽出率に到達します。対照的にドリップコーヒーにおける、蒸らしと呼ばれるプレ・インフュージョンの間の収率は非常に低いとされています。 ドリップコーヒーは、抽出サイクルの始めに粒子が水を吸収する一方で、浸漬法ではお湯を注ぐとすぐに粉の表面抽出に移行します。 この抽出速度の差は、浸漬法には抽出に使用できる水が透過法に比べて抽出初期からより多く存在しているという単純な理由に寄ります。 水は抽出における溶媒であり、より多くの溶媒の存在はより速い抽出を意味するのです。 新鮮な抽出用のお湯が継続的に加えられ、ケトルの水流を使って粉を撹拌するドリップコーヒーは、カッピングに用いられる浸漬式抽出よりも高い濃度勾配を有するので、よりアグレッシブな抽出方法と捉えることができます。 ドリップコーヒーでは、蒸らしの工程を経て抽出が進むにつれて、固形分への浸食と高濃度帯から低濃度帯へと粒子が移動する拡散が起こります。 撹拌または浸食が機能しなくても、十分な時間が与えられればティーバッグ内の可溶性成分とカップ内の水との間には勾配がなくなります。 この平衡にはより高い温度でより速く至ります。 アレニウスの公式(レッスン4.4)で見たように、反応速度は温度の上昇とともに増加し、高濃度では減速します。 また、浸漬法における収率の曲線は時間を追うごとにかなり減少します。 逆に透過法は浸漬法と比べて抽出サイクルの終了時に高い収率へ到達します。 これは浸漬法に比べて、ドリップコーヒーの抽出が難しいことを意味しています。 また、浸漬法は抽出特性上18~22%の収率により早く達するので、抽出管理表の最適な抽出範囲に調整しやすいとも考えられていますが、だからと言って浸漬式抽出がより美味しいと言う訳ではありません クレバードリッパーやエアロプレスのようなハイブリッドタイプの抽出器具では、抽出終了時に一気に水位を下げるフェーズ(重力を使ったり、人為的に押したりするフェーズ)が存在します。ハイブリッドタイプの浸漬法と透過法の明確な違いは、抽出サイクルの最後に抽出する液体が最も濃い液体となることです。...