無料プレビュー

CQC_1.02 クエーカー

CQC 1.02 クエーカー コーヒーの実は開花後、約35週間で成長します(キャネル、1985年)。コーヒーチェリーが緑から赤(場合によってはピンク、黄色、オレンジ)に変色したタイミングが、成熟したサインです。色の変化は果皮(皮)からクロロフィルが失われたことにより起こり、豆が成熟するにつれてフラボノイド色素に置き換えられていきます(ロペス他(1984年)、クリフォード&カズィ(1987年))。 クエーカーはピーナッツやグラッシー(草っぽい青臭さ)、または藁のような不快な風味をもたらします。「スペシャルティグレード」を名乗るコーヒー豆でも、販売用の豆袋1袋あたり最低でも1粒はクエーカーが混在しています。多くのグレーディングシステムにおいて、クエーカー5粒が黒豆1粒に値すると定めています。スペシャルティコーヒー協会(SCA)では、スペシャルティグレードのコーヒーはクエーカーが5粒以下でなければならないと規定しています。 BHの教育部門の責任者、ジェム・チャレンダーが市販のコーヒー豆を使用して、通常の豆とクエーカーをブラインドカッピングしている様子の動画です。 生豆に含まれるクエーカーは、精製と選定の工程で減らせそうですが、ブラジルのプランテーションで広く使用されている色選別機では、効果的にクエーカーを取り除けません。その理由は、欠点豆の色の変化がはっきりと確認できるのは焙煎後だからです。そのため、焙煎後に色選別機を使用するのも、クエーカーの量を減らすアプローチ方法の一つです。 未熟豆の化学的性質 健康に育った高品質のコーヒー豆と比較して、未熟豆は水分活性が低く、ショ糖、タンパク質、オイルの含有量などの主たる前駆体が不足しています(A Sフランカ他、2005年)。マッツァフェラ(1999年)の表では、未熟豆、成熟豆、さらに未成熟かつ黒豆に含まれるショ糖の相対量が示されています。 PVは未熟な黒豆を、Vはその他の欠点がない未熟豆を、Bは欠点のない成熟豆を示しています。出典:P.マッツァフェラ、1999年 カフェイン含有量に関しては、科学論文を比較しても一貫性は見えません。1999年にP.マッツァフェラが行なったブラジルのナチュラルプロセスのコーヒーを使用したガスクロマトグラフィーテストでは、異なる種類の欠点豆(黒豆、酸化した豆、未熟豆でテストを実施)でも、カフェイン量がほとんど変わらないという結果が得られました(P.マッツァフェラ、1999)。2005年のA Sフランカらによる研究では、同時に収穫した豆でも、未成熟豆よりも成熟豆の方がカフェイン含有量は大幅に低いという結果が出ました。1987年にクリフォードとカズィが行なった研究では、コーヒーに含まれる苦味のある化学物質、カフェインとトリゴネリンの欠点豆における量は、「わずかな差で重要なものではない」と考察されています。 成熟豆とクエーカーを比較した時に感じる不快な風味の説明として最も有力なものは、大幅なクロロゲン酸(CGA)の量の違いであるように見受けられます。とりわけ、クリフォードとカズィの1987年の研究では、成熟期の最後の5週間に、CGAの2つの部分群であるカフェオイルキナ酸(CQA)とジカフェオイルキナ酸(diCQA)との間に大きな比率の変化が見られました。この二つの部分群は生豆の総CQA含有量の85%を占めています(A Sフランカ、L. オリヴェイラ、2008年)。 メネゼスは1994年に、ブラジル産のアラビカ種の品種であるカトゥアイで実験を行い、収穫時に未熟豆と成熟豆を機械的に振り分けました。その結果、成熟途中の果実のCQAとdiCQAの比率が低いほど、コーヒーの風味が悪くなるという結論に至りました。 開花後数週間観察した様子。コーヒーチェリーのクロロゲン酸、カフェインおよびトリゴネリンは、コーヒーチェリーの成長とともに蓄積されます。アラビカマラゴジッペ種総CGA量-○-、総CQA量-■-、総5-FQA(5-カフェオイルキナ酸)量-△-、総diCQA量-▲-、カフェイン量-□-。クリフォードとカズィがこのグラフで使用したy軸の測定単位は珍しい単位です。グラフのy軸には、コーヒー豆100粒あたりの質量がグレイン(1グレインは64.79891ミリグラム)で示されています。(出典:メネゼス(1994))  1.02 終

CQC_1.02 クエーカー

CQC 1.02 クエーカー コーヒーの実は開花後、約35週間で成長します(キャネル、1985年)。コーヒーチェリーが緑から赤(場合によってはピンク、黄色、オレンジ)に変色したタイミングが、成熟したサインです。色の変化は果皮(皮)からクロロフィルが失われたことにより起こり、豆が成熟するにつれてフラボノイド色素に置き換えられていきます(ロペス他(1984年)、クリフォード&カズィ(1987年))。 クエーカーはピーナッツやグラッシー(草っぽい青臭さ)、または藁のような不快な風味をもたらします。「スペシャルティグレード」を名乗るコーヒー豆でも、販売用の豆袋1袋あたり最低でも1粒はクエーカーが混在しています。多くのグレーディングシステムにおいて、クエーカー5粒が黒豆1粒に値すると定めています。スペシャルティコーヒー協会(SCA)では、スペシャルティグレードのコーヒーはクエーカーが5粒以下でなければならないと規定しています。 BHの教育部門の責任者、ジェム・チャレンダーが市販のコーヒー豆を使用して、通常の豆とクエーカーをブラインドカッピングしている様子の動画です。 生豆に含まれるクエーカーは、精製と選定の工程で減らせそうですが、ブラジルのプランテーションで広く使用されている色選別機では、効果的にクエーカーを取り除けません。その理由は、欠点豆の色の変化がはっきりと確認できるのは焙煎後だからです。そのため、焙煎後に色選別機を使用するのも、クエーカーの量を減らすアプローチ方法の一つです。 未熟豆の化学的性質 健康に育った高品質のコーヒー豆と比較して、未熟豆は水分活性が低く、ショ糖、タンパク質、オイルの含有量などの主たる前駆体が不足しています(A Sフランカ他、2005年)。マッツァフェラ(1999年)の表では、未熟豆、成熟豆、さらに未成熟かつ黒豆に含まれるショ糖の相対量が示されています。 PVは未熟な黒豆を、Vはその他の欠点がない未熟豆を、Bは欠点のない成熟豆を示しています。出典:P.マッツァフェラ、1999年 カフェイン含有量に関しては、科学論文を比較しても一貫性は見えません。1999年にP.マッツァフェラが行なったブラジルのナチュラルプロセスのコーヒーを使用したガスクロマトグラフィーテストでは、異なる種類の欠点豆(黒豆、酸化した豆、未熟豆でテストを実施)でも、カフェイン量がほとんど変わらないという結果が得られました(P.マッツァフェラ、1999)。2005年のA Sフランカらによる研究では、同時に収穫した豆でも、未成熟豆よりも成熟豆の方がカフェイン含有量は大幅に低いという結果が出ました。1987年にクリフォードとカズィが行なった研究では、コーヒーに含まれる苦味のある化学物質、カフェインとトリゴネリンの欠点豆における量は、「わずかな差で重要なものではない」と考察されています。 成熟豆とクエーカーを比較した時に感じる不快な風味の説明として最も有力なものは、大幅なクロロゲン酸(CGA)の量の違いであるように見受けられます。とりわけ、クリフォードとカズィの1987年の研究では、成熟期の最後の5週間に、CGAの2つの部分群であるカフェオイルキナ酸(CQA)とジカフェオイルキナ酸(diCQA)との間に大きな比率の変化が見られました。この二つの部分群は生豆の総CQA含有量の85%を占めています(A Sフランカ、L. オリヴェイラ、2008年)。 メネゼスは1994年に、ブラジル産のアラビカ種の品種であるカトゥアイで実験を行い、収穫時に未熟豆と成熟豆を機械的に振り分けました。その結果、成熟途中の果実のCQAとdiCQAの比率が低いほど、コーヒーの風味が悪くなるという結論に至りました。 開花後数週間観察した様子。コーヒーチェリーのクロロゲン酸、カフェインおよびトリゴネリンは、コーヒーチェリーの成長とともに蓄積されます。アラビカマラゴジッペ種総CGA量-○-、総CQA量-■-、総5-FQA(5-カフェオイルキナ酸)量-△-、総diCQA量-▲-、カフェイン量-□-。クリフォードとカズィがこのグラフで使用したy軸の測定単位は珍しい単位です。グラフのy軸には、コーヒー豆100粒あたりの質量がグレイン(1グレインは64.79891ミリグラム)で示されています。(出典:メネゼス(1994))  1.02 終

CQC_0.00 プロローグ

CQC 0.00 プロローグ コーヒーの品質管理  このコースは、コーヒーの味を評価し格付けする方法を全てカバーするコースです。バリスタ、ロースター、生豆のバイヤーなど、コーヒーのサプライチェーンにおいてコーヒーの品質を管理している立場にいる方々を対象に作成されています。 このコースでは、欠点豆やフレーバーの汚れを特定する方法について学びます。カッピングの方法だけでなく、最新かつ重要なスコアリングシステムの仕組みに関しても取り上げます。さらにこのコースでは、カッピングプロセスを明らかにし、プロのコーヒーバイヤーやロースターがどのように品質管理をしているのか学ぶことができます。バリスタハッスルの主要なテイスティングコースであるこのコース内では、コーヒー業界としては20年ぶりに作られた、バリスタハッスル独自の全く新しいコーヒーグレーディングシステムの手順も紹介します。 このコースは5つの章で構成されています。第1章では特に焙煎由来の欠点に焦点を当てながら一般的な欠点豆を特定する方法をお伝えしていきます。 第2章は「カッピングのセッティング方法」と題された重要な章で、カッピング初心者の方でも、コーヒー業界で必要なカッピングの知識を学ぶことができます。またカッピングの経験が豊富な方には、どの手順が重要となり、それがカップにどのような影響を及ぼすのか、ガイドラインを提供します。第3章ではカッピングのセッティング方法に続き、味の取り方を学びます。嗅覚、味覚、そして触覚がどのように相互作用するのか、またテイスティングの際に啜って飲むようなテイスティング方法が、なぜフレーバーを感じやすくするのか生理学的に見ていきます。 第4章ではスコアリングの方法と、フレーバーと味わいがどのように細分化されるか学びます。このコースの最後には、1999年に導入されたSCAアラビカカッピングフォームやカップオブエクセレンス(COE)など、最新のスコアリングシステムの詳細な分析をします。そして第5章の最終レッスン「バリスタハッスル・カッピングプロトコル」にて、バリスタハッスルオリジナルのコーヒーグレーディング方法を、自信を持ってご紹介します。この最新の100点満点制のスコアリングシステムはこのコースで初めてお披露目となり、コーヒーバイヤー、ロースター、生産者、そしてバリスタに最大限役立つ情報を提供できるはずです。 0.00 終

CQC_0.00 プロローグ

CQC 0.00 プロローグ コーヒーの品質管理  このコースは、コーヒーの味を評価し格付けする方法を全てカバーするコースです。バリスタ、ロースター、生豆のバイヤーなど、コーヒーのサプライチェーンにおいてコーヒーの品質を管理している立場にいる方々を対象に作成されています。 このコースでは、欠点豆やフレーバーの汚れを特定する方法について学びます。カッピングの方法だけでなく、最新かつ重要なスコアリングシステムの仕組みに関しても取り上げます。さらにこのコースでは、カッピングプロセスを明らかにし、プロのコーヒーバイヤーやロースターがどのように品質管理をしているのか学ぶことができます。バリスタハッスルの主要なテイスティングコースであるこのコース内では、コーヒー業界としては20年ぶりに作られた、バリスタハッスル独自の全く新しいコーヒーグレーディングシステムの手順も紹介します。 このコースは5つの章で構成されています。第1章では特に焙煎由来の欠点に焦点を当てながら一般的な欠点豆を特定する方法をお伝えしていきます。 第2章は「カッピングのセッティング方法」と題された重要な章で、カッピング初心者の方でも、コーヒー業界で必要なカッピングの知識を学ぶことができます。またカッピングの経験が豊富な方には、どの手順が重要となり、それがカップにどのような影響を及ぼすのか、ガイドラインを提供します。第3章ではカッピングのセッティング方法に続き、味の取り方を学びます。嗅覚、味覚、そして触覚がどのように相互作用するのか、またテイスティングの際に啜って飲むようなテイスティング方法が、なぜフレーバーを感じやすくするのか生理学的に見ていきます。 第4章ではスコアリングの方法と、フレーバーと味わいがどのように細分化されるか学びます。このコースの最後には、1999年に導入されたSCAアラビカカッピングフォームやカップオブエクセレンス(COE)など、最新のスコアリングシステムの詳細な分析をします。そして第5章の最終レッスン「バリスタハッスル・カッピングプロトコル」にて、バリスタハッスルオリジナルのコーヒーグレーディング方法を、自信を持ってご紹介します。この最新の100点満点制のスコアリングシステムはこのコースで初めてお披露目となり、コーヒーバイヤー、ロースター、生産者、そしてバリスタに最大限役立つ情報を提供できるはずです。 0.00 終

Æ_5.01 グループヘッドでの温度調節

Æ 5.01 グループヘッドでの温度調節 「給湯温度」は、お湯がグループから出てコーヒーと接触するときの温度を指します。この温度を調整する方法はマシンにより異なり、設定温度の調整のしやすさにも違いがあります。最近のマルチボイラーマシンは、給湯温度を正確に制御することができます。 お使いのマシンの温度の安定度を知り、例えばスチームボイラーから熱湯を出す、グループをフラッシングしすぎるといった操作が、温度の安定性にどれほど影響するか把握しておくことが重要です。また、マシンによっては、抽出温度が安定するまでにフラッシングを長めに行う必要がある場合もあります。 シングルボイラーマシン 業務用のシングルボイラーのエスプレッソマシンでは、お湯はスチームボイラー内を通るパイプからなる熱交換器で加熱されます。抽出する際は冷たい水が熱交換器へ流れ込みます。水はグループヘッドにたどり着く前にここを通過し、熱交換器を取り巻く大量の熱湯や蒸気によって急速に加熱されます。 スチームボイラー内の温度は通常118~124 °Cで、コーヒーの抽出に必要な温度よりもはるかに高くなっています。このため、グループから出る前の湯から余分な熱をとるための仕組みが必要になります。これを成し遂げる最も一般的な方法は、サーモサイフォンを使用することです。 画像:一般的なシングルボイラーエスプレッソマシンのサーモサイフォン。 上の画像のステップは、サーモサイフォンの機能を説明しています。1)スチームボイラーの熱によって熱交換器内の水が >100°C に加熱されます。2)この熱湯がグループヘッド上部を通過します。3)グループヘッドが熱を空気中に放出し、抽出温度に近い温度まで(グループ内の湯ともども)冷却します。グループヘッドは熱質量が大きいため、温度が安定しやすくなっています。4)冷却された水は沈んでいくため、グループヘッドの底部から熱交換器の底部へと戻ります。熱交換器で加熱された熱湯が上昇し、グループで冷却された湯が下降するという一連の作用により、ポンプの停止中は水がシステム内を循環し続けます。5)エスプレッソの抽出が始まるとポンプのスイッチが入り、冷水がシステムに流れ込みます。6)冷水が熱交換器内の熱湯に合流すると、その温度は急速に>100°C に達します。7)湯はサーモサイフォンの両側からグループに入り、冷却された湯と熱水を混ぜ合わせます。8)サーモサイフォンの湯は、グループを通りコーヒーへと流れます。グループヘッドが持つ熱質量の大きさにより、お湯の抽出温度は安定します。 サーモサイフォン付のシングルボイラーマシンは非常に温度が安定しやすい一方、抽出温度を正確にコントロールすることは困難です。ボイラーの温度調節により抽出温度は変化しますが、サーモサイフォンの循環速度にも影響するため、予測可能な範囲ではありません。ボイラーの温度調節は、蒸気圧に好ましくない影響を及ぼす恐れもあります。その代わり、サーモサイフォンの流量を流量制御装置でコントロールすることにより温度調節が可能な場合もあります。マシンによっては、お湯に加える冷水の量を調節することで温度調節できるものもあります。 多くのシングルボイラーマシンにおいて、グループから出る最初の数ミリリットルの水は熱交換器に滞留したために熱すぎるか、配管に滞留し冷えすぎていることがあります。このような場合は、お湯が正しい温度になるまでフラッシングを長めに行う必要があるでしょう。 5.01 終

Æ_5.01 グループヘッドでの温度調節

Æ 5.01 グループヘッドでの温度調節 「給湯温度」は、お湯がグループから出てコーヒーと接触するときの温度を指します。この温度を調整する方法はマシンにより異なり、設定温度の調整のしやすさにも違いがあります。最近のマルチボイラーマシンは、給湯温度を正確に制御することができます。 お使いのマシンの温度の安定度を知り、例えばスチームボイラーから熱湯を出す、グループをフラッシングしすぎるといった操作が、温度の安定性にどれほど影響するか把握しておくことが重要です。また、マシンによっては、抽出温度が安定するまでにフラッシングを長めに行う必要がある場合もあります。 シングルボイラーマシン 業務用のシングルボイラーのエスプレッソマシンでは、お湯はスチームボイラー内を通るパイプからなる熱交換器で加熱されます。抽出する際は冷たい水が熱交換器へ流れ込みます。水はグループヘッドにたどり着く前にここを通過し、熱交換器を取り巻く大量の熱湯や蒸気によって急速に加熱されます。 スチームボイラー内の温度は通常118~124 °Cで、コーヒーの抽出に必要な温度よりもはるかに高くなっています。このため、グループから出る前の湯から余分な熱をとるための仕組みが必要になります。これを成し遂げる最も一般的な方法は、サーモサイフォンを使用することです。 画像:一般的なシングルボイラーエスプレッソマシンのサーモサイフォン。 上の画像のステップは、サーモサイフォンの機能を説明しています。1)スチームボイラーの熱によって熱交換器内の水が >100°C に加熱されます。2)この熱湯がグループヘッド上部を通過します。3)グループヘッドが熱を空気中に放出し、抽出温度に近い温度まで(グループ内の湯ともども)冷却します。グループヘッドは熱質量が大きいため、温度が安定しやすくなっています。4)冷却された水は沈んでいくため、グループヘッドの底部から熱交換器の底部へと戻ります。熱交換器で加熱された熱湯が上昇し、グループで冷却された湯が下降するという一連の作用により、ポンプの停止中は水がシステム内を循環し続けます。5)エスプレッソの抽出が始まるとポンプのスイッチが入り、冷水がシステムに流れ込みます。6)冷水が熱交換器内の熱湯に合流すると、その温度は急速に>100°C に達します。7)湯はサーモサイフォンの両側からグループに入り、冷却された湯と熱水を混ぜ合わせます。8)サーモサイフォンの湯は、グループを通りコーヒーへと流れます。グループヘッドが持つ熱質量の大きさにより、お湯の抽出温度は安定します。 サーモサイフォン付のシングルボイラーマシンは非常に温度が安定しやすい一方、抽出温度を正確にコントロールすることは困難です。ボイラーの温度調節により抽出温度は変化しますが、サーモサイフォンの循環速度にも影響するため、予測可能な範囲ではありません。ボイラーの温度調節は、蒸気圧に好ましくない影響を及ぼす恐れもあります。その代わり、サーモサイフォンの流量を流量制御装置でコントロールすることにより温度調節が可能な場合もあります。マシンによっては、お湯に加える冷水の量を調節することで温度調節できるものもあります。 多くのシングルボイラーマシンにおいて、グループから出る最初の数ミリリットルの水は熱交換器に滞留したために熱すぎるか、配管に滞留し冷えすぎていることがあります。このような場合は、お湯が正しい温度になるまでフラッシングを長めに行う必要があるでしょう。 5.01 終

Æ_4.03粒子のサイズと形

Æ 4.03粒子のサイズと形 左:エスプレッソ用に挽いた粉、右:フィルター用に挽いた粉 ジャミングの発生には、粒子間の摩擦や粒子の変形しやすさ、粒子のサイズと形などを含む複数の要素が関係します。ジャミングは、連結した粒子網を形成するのに十分な粒子が接触したときに発生し(JM バルベルデら、2004)、コーヒーベッド全体に力を伝達します。 粒子がコーヒーベッド全体のつながりを形成するのに十分な密度になるこの点を浸透閾値と呼びます。 浸透閾値 この場合の「浸透」とは、コーヒーベッドの隙間をお湯が通ることではなく、ベッドそのものの連動性を指します。密度、すなわち粒子間のつながりが増えるにつれて、粒子は互いにつながって集合体になっていきます。集合体はさらに大きなつながりを形成し、ついにはベッド全体に広がります——その地点が浸透閾値です。 浸透閾値:(a)低密度のとき、粒子間に相互作用はほとんどありません (b)粒子が追加され密度が増すと、粒子間の相互作用が促され集合体が形成されます (c)さらに密度が増すにつれ、集合体の相互作用の範囲が広がっていきます (d)浸透閾値に達すると、この相互作用はコーヒーベッド全体に広がります。 この概念は、私たちが慣れ親しんだ、水が多孔性物質を通過するという意味の「浸透」の概念と数学的に関係があります。この場合において水が通過できるようになるには、粒子ではなく細孔が同様の方法でコーヒーベッド全体で相互接続する必要があります。 アスペクト比 アスペクト比とは粒子の最長寸法と最短寸法の比率です(縦横比と同様)。球体のアスペクト比は1:1で、細長い形状になるほどアスペクト比は高くなります。 この粒子のアスペクト比は最長寸法(a)と最短寸法(b)間の比率で、およそ1:2です。 アスペクト比が高い粒子は低密度でも浸透します。粒子の形状が完璧な球体なら、浸透閾値は密度がおよそ28%のときです。アスペクト比100:1の細長い粒子なら、たった1%の密度ですべての粒子がつながり合います。 アスペクト比と浸透閾値の影響に関する詳細は、メタルナノ粒子を加えることで物質を導体に変化させる試みを例にとった、アボット教授の解説で詳しく説明されています。長く、薄い粒子はより低い密度で浸透します。もし長く薄いナノ粒子を使えば、物質を導電へと変化させるために必要な粒子の量ははかなり少なく済みます。 アスペクト比が浸透に及ぼす影響によって、タンピング時にコーヒーベッドが「詰まる」ポイントが決定します。さらにアスペクト比は、充填密度にも関係しているおり、コーヒーパックに別の影響をもたらします。もし適当にコーヒーを詰めようとすると、コーヒーベッドの密度は粒子の形状に左右されます。粒子の球形度が低いと、まず充填密度がわずかに上昇し、その後一気に下降します(PM チェイキンら、2006)。アスペクト比が約1.5のとき充填密度は最高値に達し、完全な球形を1とすると、その際の球形度は0.85に相当します(J Zhao et al., 2011)したがって球形度が0.85未満の場合、密度は低くなります。通常コーヒーの粉の球形度は約0.75~0.85(KM モロニーら、2019)なので、この範囲内で最も球形度の高いコーヒーで、密度も最高値に達すると考えられます。 これはコーヒーにとって何を意味するのでしょうか? もしコーヒーの粉の球形度が低ければ低密度で浸透が始まりジャミングが発生し、結果的にボイド率も大きくなります。ボイド率が大きいということは、粒子間の隙間が増え、個々の隙間も大きくなることを意味します。レッスン4.01で学んだように、たとえ微細な変化でも細孔のサイズが変わるとお湯の流れに大きな影響が出るため、流量が不均一になるとともにチャネリング発生の可能性が高まります。これは粒子の球形度の低い(第1章で学んだコニカル刃のグラインダーによって生み出される細長い粒子がその一例)と、パック内のお湯の流れが不均一になり、その結果抽出も不均一になる可能性があるということです。 粒度 粒度分布もジャミングの発生に影響します。例えば、ホッパーを通る粉の動きに関する研究で、Y ザオら(2018)は粒度分布が広がるとジャミングの可能性が増すことを発見しました。 4.03...

Æ_4.03粒子のサイズと形

Æ 4.03粒子のサイズと形 左:エスプレッソ用に挽いた粉、右:フィルター用に挽いた粉 ジャミングの発生には、粒子間の摩擦や粒子の変形しやすさ、粒子のサイズと形などを含む複数の要素が関係します。ジャミングは、連結した粒子網を形成するのに十分な粒子が接触したときに発生し(JM バルベルデら、2004)、コーヒーベッド全体に力を伝達します。 粒子がコーヒーベッド全体のつながりを形成するのに十分な密度になるこの点を浸透閾値と呼びます。 浸透閾値 この場合の「浸透」とは、コーヒーベッドの隙間をお湯が通ることではなく、ベッドそのものの連動性を指します。密度、すなわち粒子間のつながりが増えるにつれて、粒子は互いにつながって集合体になっていきます。集合体はさらに大きなつながりを形成し、ついにはベッド全体に広がります——その地点が浸透閾値です。 浸透閾値:(a)低密度のとき、粒子間に相互作用はほとんどありません (b)粒子が追加され密度が増すと、粒子間の相互作用が促され集合体が形成されます (c)さらに密度が増すにつれ、集合体の相互作用の範囲が広がっていきます (d)浸透閾値に達すると、この相互作用はコーヒーベッド全体に広がります。 この概念は、私たちが慣れ親しんだ、水が多孔性物質を通過するという意味の「浸透」の概念と数学的に関係があります。この場合において水が通過できるようになるには、粒子ではなく細孔が同様の方法でコーヒーベッド全体で相互接続する必要があります。 アスペクト比 アスペクト比とは粒子の最長寸法と最短寸法の比率です(縦横比と同様)。球体のアスペクト比は1:1で、細長い形状になるほどアスペクト比は高くなります。 この粒子のアスペクト比は最長寸法(a)と最短寸法(b)間の比率で、およそ1:2です。 アスペクト比が高い粒子は低密度でも浸透します。粒子の形状が完璧な球体なら、浸透閾値は密度がおよそ28%のときです。アスペクト比100:1の細長い粒子なら、たった1%の密度ですべての粒子がつながり合います。 アスペクト比と浸透閾値の影響に関する詳細は、メタルナノ粒子を加えることで物質を導体に変化させる試みを例にとった、アボット教授の解説で詳しく説明されています。長く、薄い粒子はより低い密度で浸透します。もし長く薄いナノ粒子を使えば、物質を導電へと変化させるために必要な粒子の量ははかなり少なく済みます。 アスペクト比が浸透に及ぼす影響によって、タンピング時にコーヒーベッドが「詰まる」ポイントが決定します。さらにアスペクト比は、充填密度にも関係しているおり、コーヒーパックに別の影響をもたらします。もし適当にコーヒーを詰めようとすると、コーヒーベッドの密度は粒子の形状に左右されます。粒子の球形度が低いと、まず充填密度がわずかに上昇し、その後一気に下降します(PM チェイキンら、2006)。アスペクト比が約1.5のとき充填密度は最高値に達し、完全な球形を1とすると、その際の球形度は0.85に相当します(J Zhao et al., 2011)したがって球形度が0.85未満の場合、密度は低くなります。通常コーヒーの粉の球形度は約0.75~0.85(KM モロニーら、2019)なので、この範囲内で最も球形度の高いコーヒーで、密度も最高値に達すると考えられます。 これはコーヒーにとって何を意味するのでしょうか? もしコーヒーの粉の球形度が低ければ低密度で浸透が始まりジャミングが発生し、結果的にボイド率も大きくなります。ボイド率が大きいということは、粒子間の隙間が増え、個々の隙間も大きくなることを意味します。レッスン4.01で学んだように、たとえ微細な変化でも細孔のサイズが変わるとお湯の流れに大きな影響が出るため、流量が不均一になるとともにチャネリング発生の可能性が高まります。これは粒子の球形度の低い(第1章で学んだコニカル刃のグラインダーによって生み出される細長い粒子がその一例)と、パック内のお湯の流れが不均一になり、その結果抽出も不均一になる可能性があるということです。 粒度 粒度分布もジャミングの発生に影響します。例えば、ホッパーを通る粉の動きに関する研究で、Y ザオら(2018)は粒度分布が広がるとジャミングの可能性が増すことを発見しました。 4.03...

Æ_3.03 ディストリビューションのベストプラクティス

Æ 3.03 ディストリビューションのベストプラクティス ディストリビューションは抽出工程の一部ですが、よく見過ごされたり軽んじられたりします。タンピングはお客様にもバリスタの重要なスキルとして認識されていますが、その神髄はシンプルで機械的な動きである一方、ディストリビューションには色々な方法があり、理想的なディストリビューションの方法に関する結論はまだでていません。 グラインダーによるディストリビューション 適切なディストリビューションはグラインダーから始まります。グラインダーから出てきたコーヒーがどのようにフィルターバスケットに収まるかは、抽出に大きな影響をもたらします(G デイビス、2016)。理想的には、挽いた粉が始めから終わりまでバスケットに均等に落ちるようにグラインダーが設計されていて、バリスタが別途ディストリビューションに手をかけなくてよい状態が一番です。 つまりグラインダーの設計にもよりますが、グラインド中にポルタフィルターの位置を変えたり動かしたりすることは、ディストリビューションを改善する第一歩となりえます。最近のグラインダーはこの点が考慮されており、バスケットに適切に粉が落ちるよう、調節可能なフォークやシュートが取り付けられています。例えば、最近のグラインダーの多くは、フォークの位置を微調整できるようになっていますし、粉が排出されるシュートの角度を変えられるものも存在します。可能であれば、このような方法でグラインダーを調整したりポルタフィルターを固定したりして、粉がバスケットの中央にきれいに落ちるようにしましょう。 微粉のディストリビューション ディストリビューションという概念には、さまざまな大きさをしたコーヒーの粒子の配置も含まれています。この点において、ある種類のグラインダーは他のグラインダーよりも優れているようです。Nuova SimonelliのグラインダーMythos Oneの開発に携わった、2009年のワールド・バリスタ・チャンピオンのグウィリム・デイビス氏によれば、コーヒーの粉の排出が不均一なグラインダーが存在するとのことで、「初代Mythosではマシン側に重い粒子が、バリスタ側に軽い粒子が排出されていました。そのため、バスケットの奥から手前に向かって抽出が段階的に進行します」とデイビス氏は言います。この問題は、ダマを砕く機構やグラインダーの速度を落とすことで解決可能ですが、他のグラインダーでは問題は残ったままです。もし、あなたのグラインダーにこのような不均一なディストリビューションが疑われるなら、撹拌する(後述の「Weissのディストリビューションテクニック」を参照)など、バスケットに収まったコーヒーの粉全体を大きく動かすようなディストリビューション法が役立つでしょう。 グラインダーの設計による影響に加え、さまざまなディストリビューションのやり方の中にはコーヒーベッド内の微粉の分布に影響を与え、微粉の移動を引き起こすものもあります。 粒状の物質(コーヒーの粉や袋に入ったミューズリーなど)は、振られたり振動を与えられたりすると、液体のように動き始めます。するとその物質は「流れ」始め、液体の対流のような動きを見せます。これは粒子の対流、もしくは「ブラジルナッツ効果(大きなブラジルナッツが、ミックスナッツの表面に浮き上がることから名付けられた)」として知られています。 粒子が動くと小さな粒子は底に沈み、大きな粒子は上部に「浮かび」上がります。そのためタッピングを伴うディストリビューションでは、より多くの微粉がパックの底部に移動する可能性があるのです。 しかし、実際はこれがコーヒーに重大な影響を与えているという証拠はほとんどありません。その理由のひとつは、コーヒーの粉がグラインド時に発生する静電気を大量に帯びているということ。とても細かい微粉は自由に動かず、大きな粒子にくっつく傾向があります(つまり微粉を取り除くために粉をふるいにかけても十分な効果は得られません)。「ふるいがけ……は分離の効率が低いと言えます。コーヒーの粉の粒子間には強い接着力が働くからです」(クーンら、2017)。タッピングに関するバリスタハッスルの実験で、バスケットを固い所に100回ほど軽く打ち付けたところ、タッピングと抽出時間には相関がないと分かりました。こちらのリンクにその研究結果が掲載されています。   タッピングの実験結果と私たちが採ったディストリビューションの方法がまとめられた動画。 3.03 終

Æ_3.03 ディストリビューションのベストプラクティス

Æ 3.03 ディストリビューションのベストプラクティス ディストリビューションは抽出工程の一部ですが、よく見過ごされたり軽んじられたりします。タンピングはお客様にもバリスタの重要なスキルとして認識されていますが、その神髄はシンプルで機械的な動きである一方、ディストリビューションには色々な方法があり、理想的なディストリビューションの方法に関する結論はまだでていません。 グラインダーによるディストリビューション 適切なディストリビューションはグラインダーから始まります。グラインダーから出てきたコーヒーがどのようにフィルターバスケットに収まるかは、抽出に大きな影響をもたらします(G デイビス、2016)。理想的には、挽いた粉が始めから終わりまでバスケットに均等に落ちるようにグラインダーが設計されていて、バリスタが別途ディストリビューションに手をかけなくてよい状態が一番です。 つまりグラインダーの設計にもよりますが、グラインド中にポルタフィルターの位置を変えたり動かしたりすることは、ディストリビューションを改善する第一歩となりえます。最近のグラインダーはこの点が考慮されており、バスケットに適切に粉が落ちるよう、調節可能なフォークやシュートが取り付けられています。例えば、最近のグラインダーの多くは、フォークの位置を微調整できるようになっていますし、粉が排出されるシュートの角度を変えられるものも存在します。可能であれば、このような方法でグラインダーを調整したりポルタフィルターを固定したりして、粉がバスケットの中央にきれいに落ちるようにしましょう。 微粉のディストリビューション ディストリビューションという概念には、さまざまな大きさをしたコーヒーの粒子の配置も含まれています。この点において、ある種類のグラインダーは他のグラインダーよりも優れているようです。Nuova SimonelliのグラインダーMythos Oneの開発に携わった、2009年のワールド・バリスタ・チャンピオンのグウィリム・デイビス氏によれば、コーヒーの粉の排出が不均一なグラインダーが存在するとのことで、「初代Mythosではマシン側に重い粒子が、バリスタ側に軽い粒子が排出されていました。そのため、バスケットの奥から手前に向かって抽出が段階的に進行します」とデイビス氏は言います。この問題は、ダマを砕く機構やグラインダーの速度を落とすことで解決可能ですが、他のグラインダーでは問題は残ったままです。もし、あなたのグラインダーにこのような不均一なディストリビューションが疑われるなら、撹拌する(後述の「Weissのディストリビューションテクニック」を参照)など、バスケットに収まったコーヒーの粉全体を大きく動かすようなディストリビューション法が役立つでしょう。 グラインダーの設計による影響に加え、さまざまなディストリビューションのやり方の中にはコーヒーベッド内の微粉の分布に影響を与え、微粉の移動を引き起こすものもあります。 粒状の物質(コーヒーの粉や袋に入ったミューズリーなど)は、振られたり振動を与えられたりすると、液体のように動き始めます。するとその物質は「流れ」始め、液体の対流のような動きを見せます。これは粒子の対流、もしくは「ブラジルナッツ効果(大きなブラジルナッツが、ミックスナッツの表面に浮き上がることから名付けられた)」として知られています。 粒子が動くと小さな粒子は底に沈み、大きな粒子は上部に「浮かび」上がります。そのためタッピングを伴うディストリビューションでは、より多くの微粉がパックの底部に移動する可能性があるのです。 しかし、実際はこれがコーヒーに重大な影響を与えているという証拠はほとんどありません。その理由のひとつは、コーヒーの粉がグラインド時に発生する静電気を大量に帯びているということ。とても細かい微粉は自由に動かず、大きな粒子にくっつく傾向があります(つまり微粉を取り除くために粉をふるいにかけても十分な効果は得られません)。「ふるいがけ……は分離の効率が低いと言えます。コーヒーの粉の粒子間には強い接着力が働くからです」(クーンら、2017)。タッピングに関するバリスタハッスルの実験で、バスケットを固い所に100回ほど軽く打ち付けたところ、タッピングと抽出時間には相関がないと分かりました。こちらのリンクにその研究結果が掲載されています。   タッピングの実験結果と私たちが採ったディストリビューションの方法がまとめられた動画。 3.03 終

Æ_1.02 グラインド方法

Æ1.02 グラインド方法 グラインドとは、物体に力をかけて細かく粉砕するプロセスを指します。このとき「圧縮」と「せん断」という2種類の力がかかります。圧縮とは、物体を平面に押しつけることを言います。せん断とは、ひとつの物体に対してふたつの異なる方向から力がかかることを言います。 図:圧縮(左)とせん断(右) 物体に圧縮応力がかかると、弱い部分に割れ目が生じます。そして最終的に割れ目同士がつながってその物体が砕け、大きさや形がバラバラな粒子になります。一方、せん断力がかかると、せん断面に沿って割れ目が生じることが多く(図参照)、粒子の大きさや形が比較的揃っています。そのため、より均一な抽出を促します。 最も効果的に豆を挽くことができるグラインダーは、この2種類の力を両方利用しています。まず「プレ粉砕」と呼ばれる最初の工程で、豆を圧縮して約1mmのサイズに砕きます。そして第2工程で豆をせん断します。「粉砕」または「仕上げ」と呼ばれるこの工程では、鋭い歯先がぶつかることで、プレ粉砕した豆を均一なサイズの粒子にカットします(M ペトラッコ、2005)。 抽出に適した粒度と形状にコーヒー豆を挽くためには、この第2工程で行われる豆をカットする動作が欠かせません(RJ クラーク、1987)。ブレードグラインダーのようにコーヒー豆を衝撃粉砕するグラインダーは、圧縮応力しか利用しないため、特定の粒度や形状に粉砕することができません。グラインダーの歯が鋭くなければならないのは、このためでもあります。歯の切れ味が鈍くなってくると豆にかかる圧縮応力が増え、せん断力が小さくなるため、粒度と形状が不規則になります。 業務用エスプレッソグラインダーとしては、フラット式またはコニカル式の刃を用いたグラインダーが使われます。これらのグラインダーは、回転する刃の隙間を通るコーヒー豆を適切な粒度に粉砕します。コニカル式はサイズの割に粉砕速度が速い、つまり効率が良いため、エスプレッソグラインダーとして人気です(M ペトラッコ、2005)。フラット式は大きいため、うまく粉砕するためには強力なモーターが必要ですが、粒度のばらつきが少ない傾向があります。エスプレッソ用の粉の粒度分布については、次のレッスンで詳しく説明します。 フラット式(左)とコニカル式(右)画像提供:Mazzer 画像:ローラーグラインダー、画像提供:Probat 最後に紹介するのがローラーグラインダーです。これは大型の工業用グラインダーで、市販の粉で販売されているコーヒーやカプセルポッドの製造用に使用されます。溝のついた大きなステンレス製の筒(ローラーミル)が対になって回転し、ロールの間を通過する豆を粉砕する仕組みになっています。特定の粒度と形状に粉砕するという点においては、ローラーグラインダーが最も効果的ですが、非常に大型かつ複雑なグラインダーであり、カフェで使用するにはあまりにも高価です。なかでも最も均一に粉砕できるのが、何対ものローラーを使用して徐々に粒度を小さくしていく大型の多段階式ローラーグラインダーです(RJ クラーク、1987)。 https://www.youtube.com/watch?v=ATf81ThKfnE この動画では、ローラーミルの仕組みが詳しく紹介されています。 グラインド時の温度 豆をグラインドすると摩擦により大量の熱が発生し、稼働中のグラインダー内ではコーヒー豆の温度が100℃に達することもあります(M ペトラッコ、2005)。この温度変化がコーヒーの反応に劇的な影響を及ぼします。バリスタの皆さんであれば、グラインダーが熱くなるにつれてエスプレッソの落ち方が徐々に速くなることは、経験上知っていると思います。この現象の理由としてよく挙げられるのが、高温になるとグラインダーの金属部品が膨張し、刃と刃の隙間が狭まるからだという直感的な説明です。しかしながらこの説明は事実とは異なるようで、この程度の温度変化であれば想定される金属膨張量はごくわずかとされています。 むしろ考えられるのは、温度が上昇することによりコーヒー豆の塑性が高まり、砕けにくくなるため、豆の破断の仕方が変わる(E. ウマンら、2016)ということです。この現象については、第2章で詳しく取り上げます。 温度の上昇による影響はもうひとつあり、これがエスプレッソの落ち方に影響を及ぼしている可能性があります。コーヒーに含まれる油分は室温では非常に粘り気がありますが、40℃を超えると液状になります。すると細かい亀裂から油分が流れ出し、粘性のある膜が粒子の表面に形成されます。グラインド後、粉が冷えてくるとこの膜は再び半固形状に固まり始めます。そのため粒子同士がくっついてダマになり、均一に抽出することができなくなるだけでなく、お湯の流れに対する抵抗が増します(MC ニコリ & O サボニッティ、2005)。 グラインダーを通過するほんのわずかな時間であっても、豆が高温になるとガス抜けと酸化が一気に進みます。グラインドチャンバー内のコーヒーの粉の温度は80~100℃にまで達するのです(M ペトラッコ、2005)。グラインダー内の温度が上がりすぎると、粉から香りが飛び、好ましくない特性が出てきてしまう可能性もあります。 1.02...

Æ_1.02 グラインド方法

Æ1.02 グラインド方法 グラインドとは、物体に力をかけて細かく粉砕するプロセスを指します。このとき「圧縮」と「せん断」という2種類の力がかかります。圧縮とは、物体を平面に押しつけることを言います。せん断とは、ひとつの物体に対してふたつの異なる方向から力がかかることを言います。 図:圧縮(左)とせん断(右) 物体に圧縮応力がかかると、弱い部分に割れ目が生じます。そして最終的に割れ目同士がつながってその物体が砕け、大きさや形がバラバラな粒子になります。一方、せん断力がかかると、せん断面に沿って割れ目が生じることが多く(図参照)、粒子の大きさや形が比較的揃っています。そのため、より均一な抽出を促します。 最も効果的に豆を挽くことができるグラインダーは、この2種類の力を両方利用しています。まず「プレ粉砕」と呼ばれる最初の工程で、豆を圧縮して約1mmのサイズに砕きます。そして第2工程で豆をせん断します。「粉砕」または「仕上げ」と呼ばれるこの工程では、鋭い歯先がぶつかることで、プレ粉砕した豆を均一なサイズの粒子にカットします(M ペトラッコ、2005)。 抽出に適した粒度と形状にコーヒー豆を挽くためには、この第2工程で行われる豆をカットする動作が欠かせません(RJ クラーク、1987)。ブレードグラインダーのようにコーヒー豆を衝撃粉砕するグラインダーは、圧縮応力しか利用しないため、特定の粒度や形状に粉砕することができません。グラインダーの歯が鋭くなければならないのは、このためでもあります。歯の切れ味が鈍くなってくると豆にかかる圧縮応力が増え、せん断力が小さくなるため、粒度と形状が不規則になります。 業務用エスプレッソグラインダーとしては、フラット式またはコニカル式の刃を用いたグラインダーが使われます。これらのグラインダーは、回転する刃の隙間を通るコーヒー豆を適切な粒度に粉砕します。コニカル式はサイズの割に粉砕速度が速い、つまり効率が良いため、エスプレッソグラインダーとして人気です(M ペトラッコ、2005)。フラット式は大きいため、うまく粉砕するためには強力なモーターが必要ですが、粒度のばらつきが少ない傾向があります。エスプレッソ用の粉の粒度分布については、次のレッスンで詳しく説明します。 フラット式(左)とコニカル式(右)画像提供:Mazzer 画像:ローラーグラインダー、画像提供:Probat 最後に紹介するのがローラーグラインダーです。これは大型の工業用グラインダーで、市販の粉で販売されているコーヒーやカプセルポッドの製造用に使用されます。溝のついた大きなステンレス製の筒(ローラーミル)が対になって回転し、ロールの間を通過する豆を粉砕する仕組みになっています。特定の粒度と形状に粉砕するという点においては、ローラーグラインダーが最も効果的ですが、非常に大型かつ複雑なグラインダーであり、カフェで使用するにはあまりにも高価です。なかでも最も均一に粉砕できるのが、何対ものローラーを使用して徐々に粒度を小さくしていく大型の多段階式ローラーグラインダーです(RJ クラーク、1987)。 https://www.youtube.com/watch?v=ATf81ThKfnE この動画では、ローラーミルの仕組みが詳しく紹介されています。 グラインド時の温度 豆をグラインドすると摩擦により大量の熱が発生し、稼働中のグラインダー内ではコーヒー豆の温度が100℃に達することもあります(M ペトラッコ、2005)。この温度変化がコーヒーの反応に劇的な影響を及ぼします。バリスタの皆さんであれば、グラインダーが熱くなるにつれてエスプレッソの落ち方が徐々に速くなることは、経験上知っていると思います。この現象の理由としてよく挙げられるのが、高温になるとグラインダーの金属部品が膨張し、刃と刃の隙間が狭まるからだという直感的な説明です。しかしながらこの説明は事実とは異なるようで、この程度の温度変化であれば想定される金属膨張量はごくわずかとされています。 むしろ考えられるのは、温度が上昇することによりコーヒー豆の塑性が高まり、砕けにくくなるため、豆の破断の仕方が変わる(E. ウマンら、2016)ということです。この現象については、第2章で詳しく取り上げます。 温度の上昇による影響はもうひとつあり、これがエスプレッソの落ち方に影響を及ぼしている可能性があります。コーヒーに含まれる油分は室温では非常に粘り気がありますが、40℃を超えると液状になります。すると細かい亀裂から油分が流れ出し、粘性のある膜が粒子の表面に形成されます。グラインド後、粉が冷えてくるとこの膜は再び半固形状に固まり始めます。そのため粒子同士がくっついてダマになり、均一に抽出することができなくなるだけでなく、お湯の流れに対する抵抗が増します(MC ニコリ & O サボニッティ、2005)。 グラインダーを通過するほんのわずかな時間であっても、豆が高温になるとガス抜けと酸化が一気に進みます。グラインドチャンバー内のコーヒーの粉の温度は80~100℃にまで達するのです(M ペトラッコ、2005)。グラインダー内の温度が上がりすぎると、粉から香りが飛び、好ましくない特性が出てきてしまう可能性もあります。 1.02...