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WC_5.02 風味と味わい

風味と味わい サードウェーブにおけるコーヒーに使用する水の進化 2000年代前半にスペシャルティコーヒーの文化が花開き始めるなか、水がコーヒーの品質にどれほどの影響を与えているか、に関する理解が広がるまでに長い時間がかかりました。水の化学的な側面がコーヒーの品質にどのような影響を及ぼしているかについては、ある発見がスタート地点となりました。その発見とは、軟水地域のロースターの焙煎度は硬水地域のロースターに比べ深かったということです。広範に見られたこの傾向は、やがて硬水地域の緩衝能の高さが原因であると解明されました。 軟水地域では、酸味の減少につながる緩衝能の低い軟水が使われるため、カッピングでは酸味を感じやすくなります。そのため、軟水地域のロースターは自然と焙煎プロセスを通じて酸味を抑えようとします。より高温で長時間焙煎することで、酸の分解と揮発によってコーヒーの酸味は低下します。硬水を用いてカッピングをしているロースターでは、酸味を強めるためにコーヒーが浅めに焙煎される傾向がありました。硬水地域のロースターは、過剰な硬度によってフルーティーな風味が和らいでしまったことから、多くの味わいが損なわれていました。 硬水を使用するロースターは浅めの焙煎、軟水を使用するロースターは深めの焙煎という傾向を示すインフォグラフィック 近頃はスペシャルティコーヒーロースターも、海外の卸先顧客やサブスクライバー(定期購買者)に商品を発送することがよくあります。つまり、硬水地域のロースターが軟水地域のカフェに焙煎豆を販売することも(その逆も)珍しくありません。そのため、ロースターが理想とするフレーバーを再現するために、ロースターが使用する水に類似した水レシピの使用を検討することをお勧めします。 スペシャルティコーヒー業界における水のレシピは、以前と比べて遥かに標準化されてきています。しかしながら、あるロースターの水質を正確に再現するというのは、かつて考えられていたよりも更に複雑であることがわかっています。なぜなら、ミネラルの置換をせずに水中のマグネシウムイオンとカルシウムイオンのバランスを変えることが非常に難しいためです。また、マグネシウムとカルシウムはかなり異なるメカニズムでコーヒーのフレーバーに影響を及ぼしていることがわかり、この点についてはようやく研究を通して解明し始めたばかりです。 5.02 終

WC_5.02 風味と味わい

風味と味わい サードウェーブにおけるコーヒーに使用する水の進化 2000年代前半にスペシャルティコーヒーの文化が花開き始めるなか、水がコーヒーの品質にどれほどの影響を与えているか、に関する理解が広がるまでに長い時間がかかりました。水の化学的な側面がコーヒーの品質にどのような影響を及ぼしているかについては、ある発見がスタート地点となりました。その発見とは、軟水地域のロースターの焙煎度は硬水地域のロースターに比べ深かったということです。広範に見られたこの傾向は、やがて硬水地域の緩衝能の高さが原因であると解明されました。 軟水地域では、酸味の減少につながる緩衝能の低い軟水が使われるため、カッピングでは酸味を感じやすくなります。そのため、軟水地域のロースターは自然と焙煎プロセスを通じて酸味を抑えようとします。より高温で長時間焙煎することで、酸の分解と揮発によってコーヒーの酸味は低下します。硬水を用いてカッピングをしているロースターでは、酸味を強めるためにコーヒーが浅めに焙煎される傾向がありました。硬水地域のロースターは、過剰な硬度によってフルーティーな風味が和らいでしまったことから、多くの味わいが損なわれていました。 硬水を使用するロースターは浅めの焙煎、軟水を使用するロースターは深めの焙煎という傾向を示すインフォグラフィック 近頃はスペシャルティコーヒーロースターも、海外の卸先顧客やサブスクライバー(定期購買者)に商品を発送することがよくあります。つまり、硬水地域のロースターが軟水地域のカフェに焙煎豆を販売することも(その逆も)珍しくありません。そのため、ロースターが理想とするフレーバーを再現するために、ロースターが使用する水に類似した水レシピの使用を検討することをお勧めします。 スペシャルティコーヒー業界における水のレシピは、以前と比べて遥かに標準化されてきています。しかしながら、あるロースターの水質を正確に再現するというのは、かつて考えられていたよりも更に複雑であることがわかっています。なぜなら、ミネラルの置換をせずに水中のマグネシウムイオンとカルシウムイオンのバランスを変えることが非常に難しいためです。また、マグネシウムとカルシウムはかなり異なるメカニズムでコーヒーのフレーバーに影響を及ぼしていることがわかり、この点についてはようやく研究を通して解明し始めたばかりです。 5.02 終

WC_3.01 ランゲリア指数

ランゲリア指数 1936年カリフォルニア大学バークレー校のW.F.ランゲリア教授がある研究論文を発表しました。その中で彼は、水が炭酸カルシウムで飽和状態にあるときのpHを計算する新しい方法を説明しました。この飽和点はpHs(理論的pH値)として知られています。ランゲリア指数(LSI)は、今日知られているように、水サンプルの実際のpHと、炭酸カルシウムで飽和しているときのpHとの差を表します。 LSIがゼロの場合、水はバランスが取れており、石灰鱗(ライムスケール)を溶解したり析出したりすることはありません。マイナスの場合は、水が飽和しておらず、炭酸カルシウムを溶解する能力があることを示します。-2などの非常に低い値は、水が炭酸カルシウムを溶解する可能性が高いことを示しており、水がボイラーやパイプ内の腐食を引き起こす可能性が高いことが推測されます。プラスの値は、水が炭酸カルシウムで過飽和であり、石灰が析出されることを示します。例えば、読み取り値が2の場合、著しい量の石灰の堆積物(石灰鱗、ライムスケールとも)が残りやすいことを示します。 ランゲリア指数スケールの図。負の数は腐食性を示し、正の数は石灰鱗(ライムスケール)形成の可能性を示します。上記の図は-2から+2までのランゲリア指数スケール。そのスケールの両端において腐食が起こる可能性と石灰鱗(ライムスケール)が形成される可能性を示します。 ランゲリアは、飽和水で石灰鱗(ライムスケール)が形成される可能性を戦略的に活用することを思いつきました。彼のアイデアは石灰鱗(ライムスケール)をある種のテフロンのようなコーティング剤として使用することでした。1936年に発表された論文では「炭酸カルシウムは単体、もしくは錆とともに用いることにより、自己修復または自然保護力のある皮膜の形成を助ける」と述べています。         この図の緑色の範囲は、La Marzoccoの安全な水域を示しています。LSI値は0.2〜0.7です。前項のScott Guglielmino氏の推奨事項を参照した場合、LSIが0.2から0.7の範囲にある水は、石灰鱗(ライムスケール)の形成をある程度促進させるが、過度ではない安全なレベルの飽和度にあることを示しています。 LSIを計測するためには、LSIカリキュレーターが必要となります。オンラインで使用できるものもあり、Android端末を利用される方であれば、チェコ出身のバリスタJan Komarek氏によって開発された「Water Geek」と呼ばれる無料のアプリをお勧めします。この先端的な無料アプリでは月毎のボイラー内に堆積する石灰鱗(ライムスケール)をミリグラム単位で予測することができます。また、蒸気ボイラーと抽出ボイラーでの水の挙動の違いも考慮されています。蒸気ボイラー内の温度は通常約120℃で、抽出ボイラー内の温度はグループヘッドで抽出される際の設定温度と近い温度になります。他にも、優れたリソースとしてLa Marzocco社のウォーター・カリキュレーターがあります。このウェブアプリでは、La Marzocco社が考える水の安全性を管理するための最大限または最低限の推奨レベルを計算することができます。 総溶解固形分(TDS)[ppm] 90 150 総硬度[ppm] 70 100 総鉄分(Fe+2/Fe+3)[ppm] 0 0.02 遊離塩素(Cl2)[ppm] 0 0.05 全塩素(Cl2)[ppm] 0 0.1 pH 6.5...

WC_3.01 ランゲリア指数

ランゲリア指数 1936年カリフォルニア大学バークレー校のW.F.ランゲリア教授がある研究論文を発表しました。その中で彼は、水が炭酸カルシウムで飽和状態にあるときのpHを計算する新しい方法を説明しました。この飽和点はpHs(理論的pH値)として知られています。ランゲリア指数(LSI)は、今日知られているように、水サンプルの実際のpHと、炭酸カルシウムで飽和しているときのpHとの差を表します。 LSIがゼロの場合、水はバランスが取れており、石灰鱗(ライムスケール)を溶解したり析出したりすることはありません。マイナスの場合は、水が飽和しておらず、炭酸カルシウムを溶解する能力があることを示します。-2などの非常に低い値は、水が炭酸カルシウムを溶解する可能性が高いことを示しており、水がボイラーやパイプ内の腐食を引き起こす可能性が高いことが推測されます。プラスの値は、水が炭酸カルシウムで過飽和であり、石灰が析出されることを示します。例えば、読み取り値が2の場合、著しい量の石灰の堆積物(石灰鱗、ライムスケールとも)が残りやすいことを示します。 ランゲリア指数スケールの図。負の数は腐食性を示し、正の数は石灰鱗(ライムスケール)形成の可能性を示します。上記の図は-2から+2までのランゲリア指数スケール。そのスケールの両端において腐食が起こる可能性と石灰鱗(ライムスケール)が形成される可能性を示します。 ランゲリアは、飽和水で石灰鱗(ライムスケール)が形成される可能性を戦略的に活用することを思いつきました。彼のアイデアは石灰鱗(ライムスケール)をある種のテフロンのようなコーティング剤として使用することでした。1936年に発表された論文では「炭酸カルシウムは単体、もしくは錆とともに用いることにより、自己修復または自然保護力のある皮膜の形成を助ける」と述べています。         この図の緑色の範囲は、La Marzoccoの安全な水域を示しています。LSI値は0.2〜0.7です。前項のScott Guglielmino氏の推奨事項を参照した場合、LSIが0.2から0.7の範囲にある水は、石灰鱗(ライムスケール)の形成をある程度促進させるが、過度ではない安全なレベルの飽和度にあることを示しています。 LSIを計測するためには、LSIカリキュレーターが必要となります。オンラインで使用できるものもあり、Android端末を利用される方であれば、チェコ出身のバリスタJan Komarek氏によって開発された「Water Geek」と呼ばれる無料のアプリをお勧めします。この先端的な無料アプリでは月毎のボイラー内に堆積する石灰鱗(ライムスケール)をミリグラム単位で予測することができます。また、蒸気ボイラーと抽出ボイラーでの水の挙動の違いも考慮されています。蒸気ボイラー内の温度は通常約120℃で、抽出ボイラー内の温度はグループヘッドで抽出される際の設定温度と近い温度になります。他にも、優れたリソースとしてLa Marzocco社のウォーター・カリキュレーターがあります。このウェブアプリでは、La Marzocco社が考える水の安全性を管理するための最大限または最低限の推奨レベルを計算することができます。 総溶解固形分(TDS)[ppm] 90 150 総硬度[ppm] 70 100 総鉄分(Fe+2/Fe+3)[ppm] 0 0.02 遊離塩素(Cl2)[ppm] 0 0.05 全塩素(Cl2)[ppm] 0 0.1 pH 6.5...

WC_1.04 永久硬度

永久硬度とは 永久硬度とは、水を沸騰したときに除去されずに残るマグネシウムイオンとカルシウムイオンの濃度です。カルシウムやマグネシウムは、炭酸イオンと炭酸水素イオン以外の陰イオンとも化合物を生成し、それらが水に溶けると煮沸するだけでは取り除けません。塩化物と硫酸塩は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合し、硫酸マグネシウム や塩化カルシウム などの塩を生成します。これらのミネラルはライムスケールの原因にはならず、コーヒーの酸味をやわらげる働きもありませんが、コーヒーのフレーバーには影響します。永久硬度の測定方法 総硬度(GH)から炭酸塩硬度(KH)の測定値を差し引くことで、永久硬度をすばやく推定することができます。KHは一時硬度を、GHは水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの濃度を表しているため、永久硬度の推定値は、以下のような簡単な計算で求められます。総硬度(GH)-炭酸塩硬度(KH)=永久硬度例えば、GHが100 mg/LでKHが40 mg/Lの場合、GHからKHを差し引くだけで永久硬度を推定できます。100-40=永久硬度 60 mg/L滴定を応用した測定法によって、マグネシウムイオンとカルシウムイオンを別々に測定することも可能です。ただし、そのような専門的な滴定キットは手に入りづらく、必須という訳ではありません。専門的な滴定キットが手に入らず、GHとKHしか測定できない場合でも、水中のマグネシウムとカルシウムのバランスを推定する方法があります。GHの測定値を使えば、それぞれの地域の水道局が提供している情報を基に、水道水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの比率を推定できるのです。逆浸透膜浄水処理(第4章4.02を参照)を使って水を軟化している場合や、軟水化の必要がない地域に住んでいる場合、このミネラル比率は浄水処理後も変わりません。 1.04 終

WC_1.04 永久硬度

永久硬度とは 永久硬度とは、水を沸騰したときに除去されずに残るマグネシウムイオンとカルシウムイオンの濃度です。カルシウムやマグネシウムは、炭酸イオンと炭酸水素イオン以外の陰イオンとも化合物を生成し、それらが水に溶けると煮沸するだけでは取り除けません。塩化物と硫酸塩は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合し、硫酸マグネシウム や塩化カルシウム などの塩を生成します。これらのミネラルはライムスケールの原因にはならず、コーヒーの酸味をやわらげる働きもありませんが、コーヒーのフレーバーには影響します。永久硬度の測定方法 総硬度(GH)から炭酸塩硬度(KH)の測定値を差し引くことで、永久硬度をすばやく推定することができます。KHは一時硬度を、GHは水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの濃度を表しているため、永久硬度の推定値は、以下のような簡単な計算で求められます。総硬度(GH)-炭酸塩硬度(KH)=永久硬度例えば、GHが100 mg/LでKHが40 mg/Lの場合、GHからKHを差し引くだけで永久硬度を推定できます。100-40=永久硬度 60 mg/L滴定を応用した測定法によって、マグネシウムイオンとカルシウムイオンを別々に測定することも可能です。ただし、そのような専門的な滴定キットは手に入りづらく、必須という訳ではありません。専門的な滴定キットが手に入らず、GHとKHしか測定できない場合でも、水中のマグネシウムとカルシウムのバランスを推定する方法があります。GHの測定値を使えば、それぞれの地域の水道局が提供している情報を基に、水道水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの比率を推定できるのです。逆浸透膜浄水処理(第4章4.02を参照)を使って水を軟化している場合や、軟水化の必要がない地域に住んでいる場合、このミネラル比率は浄水処理後も変わりません。 1.04 終

WC_0.03 ミネラルの溶解

ミネラルの溶解 コーヒーを淹れる際に大切な無機塩類(ミネラル)は、イオン化合物であり、イオン結合によって結び付いています。無機塩類は水に触れるとすぐに溶け始めます。溶解が起こると、結合して無機塩になっていたイオンはバラバラになり、解離します。つまり、ミネラルを形作っていたイオンは水中で結合が解かれた自由な状態になります。これはあらゆる無機塩類が溶解する際に起こります。水はイオンではありませんが、性質は少しイオンに似ています。水は極性分子ですので、水分子の数が反応を起こすのに十分な状態では、水分子の片側にプラスやマイナスの電荷が少しでも掛かるとイオンを引き付けます。下図のように1つのイオンを複数の水分子が取り囲み、他のイオンから引き離します。この図は、バラバラになったイオンが水分子(H₂O)に取り囲まれ、食塩(NaCl)が塩化物イオン(陰イオン)とナトリウムイオン(陽イオン)に解離していく様子を表しています。 イオン結合:電子を奪うコーヒーにとって重要なミネラルは、すべて無機塩類の形をとります。無機塩類は、イオン結合によって結び付いています。電子を他の原子と共有する代わりに、原子同士が1個または複数の電子を取り合って結合しています。こうした結合を「イオン結合」と呼び、無機塩類は代表的なイオン化合物として知られています。例えば、塩素(Cl)は水を消毒するために使われますが、外側の電子殻には7個の電子を持っています。塩素が安定するためには、他の分子から電子を1つ「奪う」必要があります。電子はマイナスの電荷を持つので、塩素分子は奪った電子の数だけマイナスの電荷を得ます。電荷を得た原子は、イオンになります。電子を奪った方の原子は、マイナスの電荷を得るので「陰イオン」と呼ばれ、電子を奪われた方の原子は、プラスの電荷を得て「陽イオン」と呼ばれます。化学式では、陽イオンと陰イオンを区別するために記号を用います。プラス(+)やマイナス(-)の記号を、元素記号に上付きで加えます。例えば、マグネシウムイオンは「Mg2+」と表記されます。マグネシウム原子の最外殻には電子が2個入っているので、その2個を奪われ、マグネシウムイオンになっています。記号で示されている通り、電子2個分のプラスの電荷を持ちます。マグネシウムイオンが電子2個分のプラスの電荷を持つのに対し、塩素イオンはマイナスの電荷を1個しか持ちません。そのため、塩化マグネシウム分子は、1個のマグネシウムイオンにつき2個の塩素イオンによって構成されます。塩化マグネシウムは、元素記号でMgCl2と表記します。元素記号や化学式の読み方について復習したい人は、こちらのリンクより「化学式の読み方」を参照してください。 0.03 終

WC_0.03 ミネラルの溶解

ミネラルの溶解 コーヒーを淹れる際に大切な無機塩類(ミネラル)は、イオン化合物であり、イオン結合によって結び付いています。無機塩類は水に触れるとすぐに溶け始めます。溶解が起こると、結合して無機塩になっていたイオンはバラバラになり、解離します。つまり、ミネラルを形作っていたイオンは水中で結合が解かれた自由な状態になります。これはあらゆる無機塩類が溶解する際に起こります。水はイオンではありませんが、性質は少しイオンに似ています。水は極性分子ですので、水分子の数が反応を起こすのに十分な状態では、水分子の片側にプラスやマイナスの電荷が少しでも掛かるとイオンを引き付けます。下図のように1つのイオンを複数の水分子が取り囲み、他のイオンから引き離します。この図は、バラバラになったイオンが水分子(H₂O)に取り囲まれ、食塩(NaCl)が塩化物イオン(陰イオン)とナトリウムイオン(陽イオン)に解離していく様子を表しています。 イオン結合:電子を奪うコーヒーにとって重要なミネラルは、すべて無機塩類の形をとります。無機塩類は、イオン結合によって結び付いています。電子を他の原子と共有する代わりに、原子同士が1個または複数の電子を取り合って結合しています。こうした結合を「イオン結合」と呼び、無機塩類は代表的なイオン化合物として知られています。例えば、塩素(Cl)は水を消毒するために使われますが、外側の電子殻には7個の電子を持っています。塩素が安定するためには、他の分子から電子を1つ「奪う」必要があります。電子はマイナスの電荷を持つので、塩素分子は奪った電子の数だけマイナスの電荷を得ます。電荷を得た原子は、イオンになります。電子を奪った方の原子は、マイナスの電荷を得るので「陰イオン」と呼ばれ、電子を奪われた方の原子は、プラスの電荷を得て「陽イオン」と呼ばれます。化学式では、陽イオンと陰イオンを区別するために記号を用います。プラス(+)やマイナス(-)の記号を、元素記号に上付きで加えます。例えば、マグネシウムイオンは「Mg2+」と表記されます。マグネシウム原子の最外殻には電子が2個入っているので、その2個を奪われ、マグネシウムイオンになっています。記号で示されている通り、電子2個分のプラスの電荷を持ちます。マグネシウムイオンが電子2個分のプラスの電荷を持つのに対し、塩素イオンはマイナスの電荷を1個しか持ちません。そのため、塩化マグネシウム分子は、1個のマグネシウムイオンにつき2個の塩素イオンによって構成されます。塩化マグネシウムは、元素記号でMgCl2と表記します。元素記号や化学式の読み方について復習したい人は、こちらのリンクより「化学式の読み方」を参照してください。 0.03 終

WC_0.0 プロローグ:水の化学

本章の内容 このコースには化学の基本知識が求められますが、水とコーヒーで起こり得る主な化学反応について、必要な情報に絞って分かりやすくご説明します。 水分子の結合の仕組みや、水が優秀な溶媒である理由を解説します。 水分子の化学結合を学んだ後は、大気中の二酸化炭素やミネラルを溶解する水の働きについて学びます。                             0.0 終

WC_0.0 プロローグ:水の化学

本章の内容 このコースには化学の基本知識が求められますが、水とコーヒーで起こり得る主な化学反応について、必要な情報に絞って分かりやすくご説明します。 水分子の結合の仕組みや、水が優秀な溶媒である理由を解説します。 水分子の化学結合を学んだ後は、大気中の二酸化炭素やミネラルを溶解する水の働きについて学びます。                             0.0 終

ACM_7.1 焙煎における溶解度の捉え方

焙煎における溶解度の捉え方 味わいのプロファイル作りの際には、複数のテストロースト品を比較し、コーヒーの味覚的な特徴を解析します。カッピングテーブル上での正確なクラストのブレイク方法を含め、それぞれのカップが同じ抽出パラメーターとなる手順を用いることがとても重要です。クラストをブレイクしたら、全く同じ時間でそれぞれのカップからサンプルを採取します。官能評価を終えたら、どの焙煎プロファイルがより可溶性が高かったか、TDSの計測値を比べます。   可溶性を考慮した焙煎プロファイルへのアプローチ方法 例として4つのテストロースト品で味を取って8分後にTDSを計測し、クラストをブレイクした4分後にカッピングボウルから粉を取り除いたとします。 素晴らしい焙煎とは溶解性が高く品質的に優れている焙煎を指します。溶解性が低くても美味しければ構いませんが、溶解性の高い焙煎プロファイルで仕上げたコーヒーを用いるより、目標とするTDSに達するためにより多くのコーヒーが必要になるので、コストを価格に転嫁する必要に迫られます。つまり、1杯あたりの粗利が下がるとも言えます。この差はエスプレッソでより顕著となり、溶解度が低い一方品質的に美味しい焙煎プロファイルの例と同じく、その焙煎プロファイルでエスプレッソを抽出し、18~22%の収率に達することは難しいでしょう。 例: テスト#1:ある焙煎プロファイルにおいては、1.5%のTDSで焦げた味がして美味しくありませんでした。 溶解性の面では優れていても、風味は良くありませんので、この一杯はなかった事にしましょう。 溶解性  ✔風味 ❌   テスト#2:この焙煎プロファイルは野菜のような味わいかつ溶解性も低いプロファイルでした。これは許容できません。 溶解性 ❌風味 ❌   テスト#3:この焙煎プロファイルは品質的に優れており、TDSは1.15%でした。 溶解性 ✔風味 ✔   テスト#4:このプロファイルは品質的に優れており、TDSは1.3%でした。 溶解性 ✔風味 ✔   お客様に提供する焙煎プロファイルとして正しいのは、明らかに1.3%のTDSを示した最後の焙煎プロファイルでしょう。この焙煎プロファイルを使用することで、バリスタとしてもより簡単に抽出をすることができます。もちろんテスト#3も品質的に優れており、なかなかの溶解度でしたが、テスト#4ほどの結果ではありませんでした。もしテスト#4より品質的に優れていれば、溶解性の低下を受け入れた上で、テスト#3のプロファイルを選ぶことも可能です。  ...

ACM_7.1 焙煎における溶解度の捉え方

焙煎における溶解度の捉え方 味わいのプロファイル作りの際には、複数のテストロースト品を比較し、コーヒーの味覚的な特徴を解析します。カッピングテーブル上での正確なクラストのブレイク方法を含め、それぞれのカップが同じ抽出パラメーターとなる手順を用いることがとても重要です。クラストをブレイクしたら、全く同じ時間でそれぞれのカップからサンプルを採取します。官能評価を終えたら、どの焙煎プロファイルがより可溶性が高かったか、TDSの計測値を比べます。   可溶性を考慮した焙煎プロファイルへのアプローチ方法 例として4つのテストロースト品で味を取って8分後にTDSを計測し、クラストをブレイクした4分後にカッピングボウルから粉を取り除いたとします。 素晴らしい焙煎とは溶解性が高く品質的に優れている焙煎を指します。溶解性が低くても美味しければ構いませんが、溶解性の高い焙煎プロファイルで仕上げたコーヒーを用いるより、目標とするTDSに達するためにより多くのコーヒーが必要になるので、コストを価格に転嫁する必要に迫られます。つまり、1杯あたりの粗利が下がるとも言えます。この差はエスプレッソでより顕著となり、溶解度が低い一方品質的に美味しい焙煎プロファイルの例と同じく、その焙煎プロファイルでエスプレッソを抽出し、18~22%の収率に達することは難しいでしょう。 例: テスト#1:ある焙煎プロファイルにおいては、1.5%のTDSで焦げた味がして美味しくありませんでした。 溶解性の面では優れていても、風味は良くありませんので、この一杯はなかった事にしましょう。 溶解性  ✔風味 ❌   テスト#2:この焙煎プロファイルは野菜のような味わいかつ溶解性も低いプロファイルでした。これは許容できません。 溶解性 ❌風味 ❌   テスト#3:この焙煎プロファイルは品質的に優れており、TDSは1.15%でした。 溶解性 ✔風味 ✔   テスト#4:このプロファイルは品質的に優れており、TDSは1.3%でした。 溶解性 ✔風味 ✔   お客様に提供する焙煎プロファイルとして正しいのは、明らかに1.3%のTDSを示した最後の焙煎プロファイルでしょう。この焙煎プロファイルを使用することで、バリスタとしてもより簡単に抽出をすることができます。もちろんテスト#3も品質的に優れており、なかなかの溶解度でしたが、テスト#4ほどの結果ではありませんでした。もしテスト#4より品質的に優れていれば、溶解性の低下を受け入れた上で、テスト#3のプロファイルを選ぶことも可能です。  ...