CQC_3.03 カッピングを始めるタイミング
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CQC3.03 カッピングを始めるタイミング
タイミングと温度
テキサス大学のブラウンとディラーの研究(2016)では、火傷を避けるためにはドリンクを71°C未満に冷ましてから提供しなくてはいけないと報告しています。同じように、SCAカッピングプロトコルは、カッパーが感覚評価を始める前にサンプルの温度を71°C未満に冷ますことを規定に定めています。一方、BHのカッピングプロトコルでは、コーヒーの温度が安全な71°C未満に下がってからアロマの評価を開始し、更に65°Cまで下がるのを待ち、カッピングを開始することを推奨しています。
ここで、第2章で説明した実験を思い出してください。重さ約300gまでのセラミック製カッピングボウルは、他の素材のボウルを使った場合に比べ、熱を奪うのが速いことがわかりました。この実験では、スラリーの温度(コーヒー粉10gと湯180gを使用)を記録したところ、わずか4:30分後に70°Cを下回りました。一方、バリスタハッスルの43gのプラスチック製カッピングボウルでは、スラリーの温度が70°Cを下回るまでに9分もかかりました。このため、最初のサンプルのカッピングを開始する前に、舌に火傷を負わないよう温度を計ることをBHでは奨励します。
各サンプルの味について完全に把握するには、広範囲の温度帯でカッピングを行い、温度が下がるにつれてフレーバーがどう変化するかを観察することが不可欠です。ただし、40°Cまで冷めるのを待つには時間がかかり過ぎて実用に向かないので、次の3つの温度で感覚的な印象を記録することをお勧めします。
1段階目、高温— 65°C:熱いが味わえる温度
2段階目、適温— 55°C:飲みやすい温度
3段階目、暖かい— 45°C:コーヒーの温度。45°ではまだアロマがあるが、この温度を下回ると冷めすぎているとみなされる最低ライン
この3段階の評価システムでは、次の段階へ進むまでに約5分の猶予があるため、その間にスコアリングを完了させます。仮にテーブルに10杯のサンプルが用意されているとすれば、各カップのスコアリングには約30秒の時間があることになります。このシステムでは最初のカッピングボウルにお湯を注いでから25分以内に最終スコアを付け終わるので、たいへん効率的です。
温度と味の生理学
舌には約8,000の味蕾があり、それぞれの味蕾には50〜150の味覚受容体細胞が存在します(ブリタニカ)。つまり、人がもつ味覚受容体細胞(TR)は数十万にも及ぶのです。温度が上がると甘味の感じ方が強くなるのは、TR細胞の一種であるTRPM5によるものです。この味覚受容体細胞の発現でよく知られているのは、室温のアイスクリームやソフトドリンクを味わった時と比較して、氷点下付近の温度で同じ食べ物や飲み物を味わうときに感じる体験でしょう。(低温の温度帯でバランスの取れた味の飲み物や食べ物は、高い温度帯で提供されると過度に甘い味がする可能性があります。)
しかし、コーヒーの温度が高ければ高いほど、甘味が強く感じられるわけではありません。ショ糖(スクロース)、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、麦芽糖(マルトース)への応答は、温度が35°Cから39°Cのときに最大に達し、これよりも低温や高温になると次第に弱まることがルーらによる研究(2016)で報告されています。さらに、甘味料の濃度が高いときよりも低いときの方が、甘味の増加をより明確に感じられます。生豆に含まれる糖の99%が焙煎過程で分解されることを考慮すれば、この研究報告は生豆以上に焙煎後のコーヒーに関連していると言えるでしょう(フラマン, 2002)。
3.03 終