IM_2.04 温度と時間の分析
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IM 2.04 温度と時間の分析
フレンチプレスやカッピングボウルの底にコーヒーの粉を長時間浸すことは、抽出にあまり良くないともしかしたら思っているかもしれません。ですが、スティーブンアボット教授によって開発されたバリスタハッスルの成分抽出アプリ(現在海外版のみ、国内版の開発も検討中)のグラフ(下)は、そうとは限らないことを示唆しています。ご覧のとおり、フレンチプレスでは8分後に予想される収率は非常に低いです。フレンチプレスやカッピングなどの静的浸漬法は、長い抽出時間と非常に高い抽出温度とを組み合わせた場合に、他の抽出方法よりも過抽出による影響を受けにくくなっています。たとえばコーヒーを10分間煮立たせると、かなりの過抽出によるフレーバーが生じますが、一方フレンチプレスやカッピングでは、抽出時間が進むにつれて抽出温度は低下するため、過抽出が起こりづらくなります。
このアプリは、スティーブンアボット教授によって開発されたものです。科学的な実験の結果とモデルを使用して、コーヒー抽出における様々な変数が収率と成分にどのように影響するかを予測できます。このアプリのすべての機能の詳細な説明については、アドバンスエスプレッソコースでもご紹介しています。
さまざまな浸漬法の一般的な抽出レシピを見ていきましょう。 イブリックやサイフォンなど、より多くの乱流を伴う浸漬法では、抽出に必要な時間が短くなります。フレンチプレスなどの静的浸漬法は、抽出にはより長くの時間が必要となります。たとえば、ジェズべはサンドヒーターで2分強で抽出できますが、フレンチプレスでは4分未満でプレスされることは多くないでしょう。 この抽出レシピと同じくらい古い1855年に印刷されたThe Encyclopedia of Domestic Economyによる抽出レシピでも、著者はコーヒーを長い時間沸騰させないようにと注意を促しています。
「コーヒーの一番良い成分はすぐに抽出されるので、長時間沸騰させると上質なアロマとフレーバーが失われてしまいます。コーヒーは沸騰させるのではなく、沸騰しそうなところまで温度を上げるだけでよいというルールを提唱する人もいます。」(ウェブスター & パークス、1855)
抽出温度と時間がもたらす味への影響
コーヒー中のすべての成分は異なる溶解度を持っています。たとえば、塩、糖、酸、フェノール類、脂質が水に溶けるために必要な時間も様々です。すぐに溶けるものもあれば、時間がかかるものもあります。抽出温度と接触時間を変えるとコーヒー粉中のどの成分が水に溶けるかも変わるので、コーヒーを淹れるときにはその点を考慮する必要があります。
コーヒーの苦味の由来となる化合物は、極性の低い(水に溶けにくい)ものが大部分を占めています。そして極性の低い分子を溶解するには、一般的には抽出温度を高くする必要があります。そのため、沸騰したお湯で長時間抽出することは、コーヒーに苦味をもたらします。場合によっては、非極性のフレーバー化合物が水に溶けずに油に溶けることがあります。エスプレッソ抽出では温度が高いほど、極性の高いまたは揮発性の高い化合物よりも、極性の低いアロマ分子の抽出速度により大きな影響を与えることが示されています(サンチェス・ロペスら、2016)。
より多くの油分によりコーヒースラリーから抽出されるとき、コーヒー中の油分がより多くの非極性化合物を溶解している可能性があります。より多くの油分を得る抽出方法で抽出されたコーヒーは、揮発性も極性の低い化合物の割合が高くなります。 サンチェス・ロペス氏は、高温で抽出される低極性分子をいくつか特定しました。特定された低極性分子の中には、スパイシーでスモーキーな香りに関連するフラン、そして「ロースト香」の重要な構成要素の1つであり、苦味、収斂性、焦げた風味に関連するピリジンが含まれていました。
非常に極性の高い水溶性の分子は、水がそれほど熱くなくても、比較的簡単に水に溶けることができます。最初に溶けやすいコーヒーの要素は、フルーツ酸類と有機塩類(軽く、明るく、フルーティーなフレーバー)であり、焙煎中に起こるメイラード反応と糖の褐変から生成される芳香族化合物(ナッツ、キャラメル、バニラ、チョコレート、バターなど)がそれに続きます。コーヒーを飲む人の中には苦い味を好まない人もいるため、低めの温度で短時間で抽出する方法もかなり魅力的に思われますが、残念ながら低い温度での抽出は、多くの場合に甘さと複雑さをも犠牲にしています。
低すぎる温度で抽出すると、酸味のバランスが崩れる傾向があり、アロマと苦味もありません。もちろん過度の苦味は望ましくありませんが、コーヒーに苦味がないことにより複雑さが欠如する傾向もあります(メスタ、グラバスニア、およびジュリアーノ、2016)。
2.04 終