PC_5.04 ナチュラルプロセスにおける糖分
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PC 5.04 ナチュラルプロセスにおける糖分
ナチュラルプロセスでは、ミューシレージの糖分は種へと移るのでしょうか?
ナチュラルプロセスのコーヒーは、通常ウォッシュドのコーヒーよりも甘く、コクがあり、独特のフルーティーなフレーバーがあります。このナチュラルプロセスのコーヒーの甘さ、コク、特徴的なフレーバーは、コーヒーチェリーの甘くて粘り気のある果肉との長時間の接触から生じているように感じますが、エビデンスはあるのでしょうか?もしそうでない場合、何が理由なのでしょうか?
ナチュラルプロセスのコーヒーには糖分がより多く含まれていますか?
コーヒー豆の主な糖分の種類はショ糖で、コーヒー豆の5~9%を占め、総糖度の90%以上を占めています。検出されるショ糖の量は、どのコーヒー精製方法においても違いは無く、むしろコーヒーの育ち方によって異なります。しかし実際にはナチュラルプロセスの生豆は、ウォッシュドよりも多くの果糖とブドウ糖を含んでいるため、全体的に多くの糖分を含んでいます。パルプドナチュラルはその中間になります(S Knopp 他、2006)。
ですが、果肉の糖分がパーチメントを越えて乾燥途中の種に移ることができるのなら、なぜこの現象はチェリーが木に実っている際に起こらないのでしょうか。また糖分自体は焙煎中にほとんど破壊されることから、さらに甘くなったこの甘みはどこから生じるのでしょうか?
何が起こっているかについて知るための最初の手がかりは、プロセス前のコーヒー豆の果糖とブドウ糖の含有量はウォッシュドのコーヒーよりも多いということです。これは、ナチュラルプロセスの精製中に糖度が上昇するのではなく、むしろウォッシュドプロセスの精製中に糖度が低下することを意味します。
ウォッシュドコーヒーの糖度が低いのはなぜですか?
ウォッシュドプロセスの一環として、コーヒー豆はしばらく水に沈められるため、初期の研究では、コーヒー豆中の糖類が水に溶けることが示唆されていました(Wootton、1973)。ですが、それ以来機械的なウォッシュドのコーヒー精製やドライングベッドでも同じ変化が起こることが分かっているため、水が原因ではないようです(MKleinwächter&D Selmar、2010)。
代わりに研究者が発見したのは、コーヒーの種は発芽し始めているということです。ウォッシュドプロセスでは、種に保存されている糖を消費し、最初に最も単純な糖(ブドウ糖と果糖)を使い果たします。ショ糖レベルに影響を与えるだけでなく、ウォッシュドのコーヒーの発芽は種子中の特定のアミノ酸の濃度を増加させます。アミノ酸は生豆の最も重要なアロマ前駆体のいくつかであるため、これはウォッシュドコーヒーに見られるアロマの複雑さをもたらします(S Knopp 他、2006)。
なぜウォッシュドコーヒーの種だけが発芽するのでしょうか?
コーヒーの種は本質的に常に発芽する準備ができています。他の多くの種子とは異なり、たとえば乾燥されているときでも、休眠期はありません。これがコーヒーの種をシードバンクに保管するのが難しい理由の1つです。代わりに、コーヒーの品種はリビングコレクション(living collections)に保管する必要があります。
種がまだチェリーの中にある間、植物ホルモンなのか水の存在なのか不明ですが果肉の何かが種の発芽を妨げます。ですが、発酵中に果肉が除去された途端、発芽の準備のために種の代謝作用は変化し始めます。ナチュラルプロセスのコーヒーにおいて、チェリーが乾燥するまでチェリーの果肉が発芽を抑制します。乾燥すると、種の代謝が完全に停止します。これにより、種の糖度が維持されます(R. F. Schwan and G. H. Fleet [eds.], 2014)。
ナチュラルプロセスのコーヒーに甘さとフルーティーな香りを与えるものは何ですか?
精製中に糖分が種子に渡ることがほとんどないことは今では明らかですが、種子に吸収されているように見える化合物がいくつかあります。これらは果肉自体からの香りではなく、果肉が発酵し始めるときに微生物によって生成される揮発性化合物、特にエステルです(GV de Melo Pereira 他、2014)。これらの化合物は、精製前の生豆に含まれる大部分の揮発性化合物とは異なり、焙煎に耐え、焙煎したコーヒーにフローラルでフルーティーな香りを与えることができます。
酪酸エチルなどのこれらのエステルのいくつかは、甘味の知覚にも寄与します(D. Labbe 他、2006)。糖分自体は焙煎中にほとんど破壊されますが、フランなどのカラメル化反応中に生成される多くのアロマ分子の重要な前駆体でもあり、ナチュラルプロセスのコーヒーをより甘くさせているようです。
5.04 終