CQC_4.03 フレーバーの定義 続き

CQC 4.03 フレーバーの定義 続き

酸味

「酸味」の評価は、酸味の強度、酸味の質、またはその両方について行います。SCAとCOEどちらのフォームでも「強度」には数値によるスコアリングが求められますが、「酸味」には酸の質的な評価が求められます。COEプロトコルによれば、ネガティブな酸味は「きつい」「鋭い」、ポジティブな酸味は「洗練された」「きりっとした」などと表現されます。SCA方式では、新鮮なフルーツを想起させるポジティブな酸味には「明るい」「鮮やかな」、ネガティブな酸味には「酸っぱい」が提示されています。 SCAフォームでは、酸の強度が産地ごとの期待に沿うことも求められます。つまり、酸度の高いケニア産と酸度の低いスマトラ産では、酸の質において同じスコアを獲得することもあるでしょうが、その逆は起こりにくいということです。

酢酸は、コーヒーに含まれる他の有機酸と異なり、酸味だけではなくアロマにも影響を及ぼします。このため、酢酸の濃度が高すぎるとカップ全体に大きくネガティブな影響を与える可能性があります。しかし、少量の酢酸であれば、総体的にポジティブな酸味のプロファイルとなることが予想されます。

コーヒーのpHと口にしたときの酸味の印象に密接な関連はありません。知覚される酸味を左右するのは、液体の滴定酸度、つまりアルカリに対する緩衡作用の大きさです(N.Z. Rao and M. Fuller, 2018)。 SCAによると、酸味、ボディ、バランスは約60〜70°Cのときに評価します。


苦味

コーヒーの苦味は、部分的にはその苦味の強度、そしておそらく苦味を生み出す原因である化学物質の違いにより、ポジティブにもネガティブにも知覚されます。ポジティブな苦味と言えば、トニックウォーターに含まれるキナ酸のように、飲料の酸味と甘さをテコとして心地よい体験に変わる苦味の感覚です。また、ネガティブな苦味の一例はアスピリンやキニーネ(マラリアの特効薬)などの薬に見られますが、これらは希釈しないと相当な不快感をもたらします。

コーヒーの苦味の一因にカフェインがよく挙げられますが、カフェインレスコーヒーにも苦味はあります。カップの苦味の原因となる主要成分は、キナ酸ラクトン(キニド)やフェニルインダンとして知られるクロロゲン酸の分解物です。キナ酸ラクトンは「中煎りコーヒーの苦味成分の核」であり、コーヒーに求められる心地よい苦味に貢献します(ホフマン, 2009)。

キナ酸ラクトンをコーヒー抽出液から限外濾過によって分離させ、大きな分子から徐々に抽出液から分離していったところ、抽出液のどの部分が最も強い苦味を持つかが決まりました(フランク他、2005)。

コーヒーを焙煎するとクロロゲン酸が分解し、キナ酸とコーヒー酸を形成します。更にコーヒーを深煎りするとコーヒー酸が分解し、フェニルインダンを形成します。コーヒー酸は加熱により4-ビニルカテコール分子に分解し、この分子が2、3個結合するとフェニルインダン(ビニルカテコールオリゴマー)という分子の重合体になるのです。この化合物は、単独で「エスプレッソ系のコーヒー」を彷彿とさせる後を引くきつい苦味を持ち(フランク他、2007)、深煎りコーヒーの苦味の増加の一因としてと考えられています。元のクロロゲン酸よりゆっくりと抽出されるキナ酸ラクトンよりも、フェニルインダンは更に格段にゆっくりと抽出されます。このことは、抽出をコントロールすることで、これらの強い苦味成分がどれだけ抽出液に含まれるかを調節できることを示唆します(ブルームバーグ他、 2010) 。

甘さ

甘さは厳密に言えば味覚ですが、コーヒーに知覚される甘さはすべて味覚によるものとは限りません。焙煎したコーヒーには糖がほとんど残っておらず、舌で感じ取るには少なすぎるため、甘さの感覚は他に起因すると考えられます。糖以外にも甘味を持つ化合物はありますが、甘さの感覚のほとんどはキャラメルのように甘く香るアロマから来ると言えるでしょう。

ただし、直接味わうには低すぎる濃度であっても、甘い味のする分子は他の味覚に対する私たちの反応を調整し、苦味や酸味の不快な感覚を軽減する役割を果たします。

COEフォームには、「甘さとは、焙煎したコーヒーに含まれる糖の量のみならず、甘さの印象を与える他の成分の組み合わせにも依拠する」と規定されています。この問題についてリングルは、「甘さとは、明白な甘さに加え、フレーバーの心地よい豊かさを指す」とやや曖昧に述べています。

おそらくこの広義の甘さの定義ゆえに、SCAフォームは甘さの強度や質のスコアを割り当てず、単に甘さの有無をカッパーが記録できるようにしています。しかしながら、COEを含む他の格付けシステムのほとんどが、甘さの強度と質に同等に配点したスコアリングを採用しています。

SCAは、コーヒーが約40°Cの低温のときに甘さを評価するべきと述べています。

4.03 終

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