エスプレッソマシンコース 第2章「プレインフュージョンの誕生」


現代のレバー式マシンがアイドリング状態にあるとき、グループヘッドを常に熱く保つために、サイフォンのように熱湯がピストンの外側を細い帯状に循環する仕組みになっています。このため、ピストンの構成部品には熱伝導性に優れた真鍮が使用されるのが一般的です(サーモサイフォンの仕組みについては次章で詳しく解説します)。一方、ガッジア氏のClassicaモデルでは、サーモサイフォン方式を用いず、ボイラー内の蒸気圧を利用してお湯をグループヘッドまで押し上げていました。とはいえ、旧式の仕組みと現代の仕組みのいずれにおいても、グループヘッドを高温に保つために熱湯が用いられている点は共通しています。


青色の部分は、真鍮製のプランジャー(ピストン)の外側を取り囲む細い帯状の湯の流れを示しています。赤い四角と大きなOリングは、ピストンの外側を水密に密閉するために設計されたシール部分を表しています。

ガッジア氏のマシンでは、バリスタがレバーを引くと、プランジャーが約50mm上方へと移動します。このとき、プランジャーはグループヘッドを取り囲む湯の帯と同じ高さの位置までスライドし、スリーブに空いた穴を通してお湯がコーヒーの粉の上に注がれる仕組みになっています。


グループ内に圧力がかかるのは、コーヒーベッドの上の空間が完全に水で満たされ、プランジャーとコーヒーベッドの上面の間に空気の隙間がなくなってからです。コーヒーパックの上の空間に水が満たされるまで約5秒かかり、さらに5秒かけてコーヒーパックが完全に水を吸収します。つまり、ガッジアのレバー式マシンは10秒間のプレインフュージョンを行っていたことになります。(プレインフュージョンの利点については、Barista Hustleアドバンスドエスプレッソコースで詳しく学べます。)


安全上の重要な注意事項です。どんな種類のレバー式マシンを操作する場合でも、レバーはしっかりと握ることが非常に重要です。もしレバーが手から滑り落ちると、勢いよく元の位置まで戻り、けがをする恐れがあります。

ガッジア氏のシステムは、11バールを超える圧力を達成することができました。これは20世紀において、コーヒーの粉の抽出中にこれほど高い圧力が安全に実現された初めての例でした。最初のモデルはClassicaと呼ばれ、1948年に発売されました。このマシンは、現在私たちが楽しんでいるものとまったく同じ、濃厚で滑らか、持続するクレマを持ち、豊かなテクスチャーとボディを備えたエスプレッソショットを抽出することができました。


自然な圧力のプロファイル

現代のレバー式マシン(Nuova Simonelli Leva)の圧力プロファイルと、ロータリーポンプを使用する一般的な一定圧のマシン(Nuova Simonelli Aurelia II)の圧力プロファイルの比較。データは G. Caprioli ら(2012年)によるものです。この実験では、バリスタがレバーを引いてから4秒半後にレバーを離しました。レバー式エスプレッソにおいては、プレインフュージョンの時間は4〜10秒の範囲を推奨します。

バリスタがスプリングレバー式マシンのレバーを引くと、内部のスプリングが圧縮され、その状態で固定されます。もしそのままレバーをロックしたままにしておくと、抽出は給水ラインの圧力で始まります。より高い圧力を得るためには、バリスタがレバーを少し持ち上げてスプリングのロックを解除し、スプリングの力でピストンを下へ押し下げる必要があります。

ガッジア氏の洗練されたスプリングレバー設計は、上のグラフで青色の線として示されているような圧力のプロファイルを生み出します。このレバー式の圧力プロファイルは、多くのエスプレッソ用の焙煎と相性が良く、相乗効果を発揮するように思われます。私たちの経験では、レバー式マシンで抽出されたエスプレッソショットは、最新鋭のマシンで淹れたものに劣らず、どれも非常に美味しく仕上がります。


2.05 終
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