PC_4.03 カーボニックマセレーション

PC 4.03 カーボニックマセレーション

 

パナマのボルカンにあるフィンカ・デボラでカーボニックマセレーション中のコーヒーチェリー。


ワイン醸造において、1960年代にフランス、ボジョレーのジュール・ショーヴェ氏が、カーボニックマセレーション (CM) を開拓しました (T, Jarvis、2018)。フルカーボニックマセレーションでは、まず発酵タンクを二酸化炭素で満たして酸素を追い出します。その後、ブドウを慎重に加えます。タンクは密閉されているので酸素の侵入を防ぎ、細胞内発酵を促します。


細胞内発酵とは何ですか?

レッスン 3.06にて、発酵は多くの植物、動物、菌類が、利用可能な酸素がないときに食物からエネルギーを得るために使用するプロセスであるということを説明しました。 「細胞内」とは細胞の内部を意味します。言い換えれば、ブドウを取り囲む酵母や細菌ではなく、ブドウそのものによって発酵が行われることを意味します。

細胞内発酵を開始させるには、果実を注意深く扱い、丸ごと保存する必要があります。細胞内発酵は、酸素にアクセスできなくなったときに代謝を呼吸から発酵に切り替えるブドウ自体に依存しているためです。

ワイン用のブドウは、細胞内発酵により、少量のエタノール (最大 2%) を生成し、リンゴ酸が分解され、グリセロールとアセトアルデヒドが蓄積されます (C Tesniere & C Flanzy、2011)。このプロセス中に、フェノール化合物と一部の芳香分子も皮から果肉へと拡散し、果肉がピンク色になります。この果肉のピンク色は、この方法で処理されたパーチメントにも見られ、少なくとも同じ拡散プロセスの一部が起こっていることを示唆しています。コーヒーで細胞内発酵が起こるかどうかはまだわかっていません。赤ワインを着色するアントシアニンはこのプロセス中に果肉に移動するため、赤い色にするために皮と果汁を長時間接触させる必要はありません。これが、このスタイルのワインにおいてタンニンの量を制限します。ですが、これがコーヒーにどのように当てはまるかは明らかではありません。通常、コーヒーの発酵では皮との接触はないからです。かーボニックマセレーションはコーヒーに含まれるタンニンを分解したり変化させたりしないことを強調しておく必要があります。

ワイン醸造におけるカーボニックマセレーション中、タンクの底にあるブドウの一部が破裂して果汁が放出され、ブドウの皮にいた酵母や細菌によって細胞外発酵が起こります。カーボニックマセレーションの後、ブドウを圧搾し、残った果汁を取り出して発酵させます。このプロセスにより、タンニンが非常に少ないものの、強烈な赤い果実とバブルガムのフレーバーを特徴とする、非常に淡い色の赤ワインが生成されます。タンニンが少ないため、こういったワインは熟成にはあまり適していません。そのため、このスタイルのワインは通常、瓶詰め後わずか6週間で販売できます。

ナチュラルワインのムーブメントは、硫酸塩などの添加物を使用しないワイン造りを推進しています。ナチュラルワインの支持する人たちは、発酵プロセス中の酸素の除去により微生物による損傷やワインの望ましくない酸化のリスクが大幅に低減されるため、フルカーボニックマセレーションが特に有用であると考えています。発酵の安全性とコントロールが強化されたため、このプロセスはコーヒー生産者の間で人気が高まっているようです。特に興味深いのは、CMワインの特徴として知られる赤い果実とバブルガムの品質が、CMコーヒーのフレーバーの特徴にも見られることです。

コーヒーのプロセスにおけるカーボニックマセレーションは、2015年にササ・セスティック氏がコロンビアのコーヒー生産者であるカミロ・マリサンダー氏のCMコーヒーを使用して世界バリスタチャンピオンシップで優勝したことで有名になりました。パナマのモーガンエステートとの最近のコラボレーション後、セスティック氏は CMプロセスで使用される温度と時間について次のように説明しました。

「甘味を促すために、より高温の20°Cでカーボニックマセレーションプロセスを行うことにしました。そして、より複雑なフレーバーを促すために、カーボニックマセレーション発酵の期間を65時間まで延長しました。」 (Sasa Sestic in T. Newton2015)


4.03 終

ブログに戻る