CQC_2.06 クラストのブレイクとグロリア・ペドロサ氏へのインタビュー
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CQC 2.06 クラストのブレイクとグロリア・ペドロサ氏へのインタビュー
動画:クラストのブレイク
浸漬式や透過式のコーヒー抽出をする際、お湯に触れたコーヒーの粉は、スラリーの上部にクラストを形成する傾向があります。クラストは気泡とコーヒーの粉、水でできた層で、断熱層のような役割を果たします。クラストは一般的に、3〜5分間置いたのちカッパーが「クラストのブレイク」を行います。上の動画で紹介しているように、カッパーがクラストの上部をカッピングスプーンで押し出すようにブレイクする方法が一般的です。
しかし、BHではクラストのブレイクの際、カッピングボウルの底まで攪拌する方法を用います。カッピングボウルの一番下まで、カッピングスプーンで最低でも4回攪拌する方法をおすすめしています。
クラストの層は、焙煎がより深いサンプルの方が厚くなります。ダークローストのコーヒーのCO2含有量(豆全体の乾燥重量の約2%)はライトローストの約4倍で、ライトローストが形成するCO2量は豆全体のわずか0.5%です(SCA)。細かな粒子よりも大きな粒子の方が、焙煎時のガスを多く含んでいるため、クラストとして浮かび上がってくる可能性が高くなります。多くの場合、お湯を入れてから3〜5分経過してからクラストをブレイクする方法が一般的です。しかし、たとえば片方のカップは3分間抽出して、もう片方は5分間抽出したとすると、長時間放置したカップの方が、収率がはるかに高くなってしまう可能性があるので、注意が必要です。
攪拌による乱流
この実験では、複数回攪拌したカッピングボウルと、全く攪拌しなかったカッピングボウルの収率を、通常通り4回攪拌した場合と比較しました。攪拌回数はよく議論の的になりますし、攪拌方法に関しては、今後さまざまなに方法に出会うはずなので、検証内容を文献にまとめています。この検証のミッションは、カッピング時に、異なるタイミングでクラストをブレイクしたり、異なる方法でブレイクする影響を解明することです。加えて、そこまで注意を払うに値するプロセスであるかどうかも調べました。
動画:クラストブレイキング–底まで攪拌する
スキミング
カッピング手順の中で最後のプロセスであるスキミングは、最新の注意が必要なステップです。クラストをブレイクしたのち、コーヒーの粉ほぼすべてがボウルの底に沈んだら、ボウルの表面に残った薄い泡の層を取り除く作業があります。この層になった気泡はエスプレッソのクレマに似ていて、そのほとんどは数分以内に消えてしまいます。しかし、この上澄みに含まれる微量の油分や不溶解性粒子の除去のため、層自体を取り除くことが重要なのです。これをスキミングと言い、不溶解性の粒子のカップへの混入を防ぎます。
グロリア・ペドロサ氏へのインタビュー
グロリア・ペドロサ氏はスイスのNKG(Neumann Kaffee Gruppe)クオリティ・サービスにてクオリティ・アドバイサリー・ユニットの責任者をしています。彼女は毎年、コンテナ何百個分ものコーヒー豆の購買責任を一人で担っています。グロリアは2006年のワールド・カップテイスターズ・チャンピオンシップの優勝者です。さらにQグレーダーの資格を持ち、ワールド・バリスタ・チャンピンシップのヘッドジャッジでもあります。
BH –カッピングの抽出に使用するお湯の温度は何度が最適だと思いますか。
GP –お湯を沸かす標高によりますが、沸騰した温度から5〜6度低い温度です。熱すぎると不快なフレーバーが出てしまい、逆に低すぎるとアロマが未抽出になってしまいます。w、93℃が最適です。
BH –クラストをブレイクする方法を教えてください。クラストをブレイクする際は、ボウルの底をかき混ぜるように攪拌することを推奨していますか。推奨する場合、何回攪拌するか教えてください。
GP –クラストをブレイクする方法はカッパーによってやり方が異なります。もしカップの底まで攪拌したら乱流が増えて、抽出が進行しがちです。重要なのは、クラストをブレイクする際の手順がしっかりとチームで定義されていて、誰がやっても同じであるということです。私たちは、注湯の4分後にクラストの表面を優しく3回攪拌してブレイクしています。
BH –カッピングボウルは予熱しておきますか。
GP –いいえ、しません。
BH –各サンプルを複数個用意することは、どれほど重要なのでしょうか。(普段はサンプルに対して何個ずつカップを用意していますか。)
GP –サンプルを最低でも各5カップ以上取る理由は、統計的な確率と関係があります。生豆は自然で栽培された植物であるため、ディフェクトが全くないことを保証することはできません。テイスティングしたカップ数が多ければ多いほど、そのコーヒーにディフェクトがないという確信が高まるか、もしくは、ディフェクトによる不快なフレーバーをもたらすリスクを見極められます。さらに、品質に均一性があるかどうかを確認できます。
BH –カッピングの挽き目を決めるために導入している方法はありますか。
GP –挽き目に関しては、すべての種類のコーヒーに共通して1つのスタンダードしかなく、SCAのカッピングのスタンダードを採用しています。メンテナンススケジュールもあるので、毎月グラインダーの挽き目設定に問題がないか確認し、必要に応じて調整を行なっています。
BH –カッピングに使用するグライダーの刃を変えるタイミングは、どのように判断しますか。
GP –弊社のグラインダーは高い処理能力があり何年も持つので、5〜7年経過したら刃の交換が必要になると考えています。
グウィリム・デイビス(Gwilym Davies)とのカッピング
2.06 終