ミルクサイエンス2章04

界面活性剤は、2つの物質間の表面張力を下げる化合物です。表面張力とは、液体表面の分子をくっつけようとする力です。これは、水を結合させて水滴を形成するのと同じ力になります。表面張力によって液体が元に戻るため、純水中の気泡はすぐに破裂します。

気泡が破裂しないようにする最善の方法は、気泡を界面活性剤で包み込むことです。泡の化学において、この包み込むプロセスの名称は「吸着作用」と言います。このプロセスでは、物質が別の物質に付着し、その上に膜が形成されます。このプロセスと、ある物質が他の物質と全体的に混ざり合う吸収のプロセスとを混同しないようにしてください。吸着は表面でのみ生じます。コーヒー飲料では、界面活性剤がミルクと空気の間の表面張力を下げるため、泡が破裂しにくくなります。表面張力が低いということは、フォームの弾力性が高いことを意味します。たとえば、液体に囲まれた泡を引き伸ばそうとすると、泡周囲の界面活性剤の濃度が減少します。これにより表面張力が上昇し、多くのエネルギーが必要になります。適切な量の界面活性剤を使用すると、気泡は破裂するのではなく、元のサイズに戻ろうとします。表面張力が低い弾性フォームにより、ラテアーティストは絵柄をより長く持続させながら、より多くの時間をかけてコーヒーにミルクを注ぐことができます。

ミルクフォームの主な界面活性剤は、タンパク質のβ-ラクトグロブリンです。この非常に弾力性のあるホエイプロテインは、他のタンパク質との混濁を招くことなく、非常に長持ちする泡の生成を可能にします。このタンパク質の鍵となるのは「弾力性」です。フォームのそれぞれの細胞が真新しいゴム風船だと想像してみてください。押したり潰したりすると変形ますが、その形状は元に戻ります。ゴムが少し古くなり脆くなってくると、応力に反応できなくなり、破裂してしまいます。このフォームのFoam Elasticity アプリで説明していますが、弾性をコントロールする要因は複雑で、適切な添加剤を数パーセント使用するだけで大きな違いが生じます。そのため私たちが言えることは、丈夫で弾力のある泡を作るために必要なバランスをβ-ラクトグロブリンが持っているということです。

もともと表面張力が低い場合、全体的に必要な界面活性剤の量は少なくなります。平均気泡径が小さいミルクフォームは、通常、より湿っているため、表面張力が低くなります。アボット教授によると、「一般的に、最も低い表面張力に達する最小限の量の界面活性剤は、より長持ちする泡を生成します。たとえば半径が小さいフォームは、排出がゆっくりなため長持ちする傾向があり、濃厚な質感ため望ましいのです。」とのことです。 ミルクの平均気泡直径を小さくすることで、アボット教授によるフォームに関する5つの要素の3番目の要素である経時的な安定性が得られます。こういったフォームの豊かな質感は、4番目の要素である適度な粘度も満たしています。


ミルクフォームの気泡が安定するまでには時間が必要

ミルクをスチームするとき、非常に大きな気泡がいくつか発生しますが、表面を安定させる物質がその泡の周囲を取り囲むには大きすぎるため、こういった大きな気泡はすぐに破裂します。アボット教授は、「主な界面活性剤は…界面に移動するのが比較的遅い(起泡力の弱い)タンパク質ですが、そこに到達すると強力な界面を生成するため、安定した泡が得られます。」と説明しています。

これは、ミルクをスチーミングする初期段階で、望ましくない大きな気泡があるミルクからきめ細かい光沢のあるミルクフォームへの変化に数秒かかる理由を説明しています。一度フォームが安定すると、排水が行われる前に、気泡はミルク全体に完全に分散されます。


エスプレッソに含まれる界面活性剤

エスプレッソフォームも泡の議論に関係しています。もしカプチーノとエスプレッソを並べて置いたとすると、エスプレッソは必ず1~2分以内にフォームに穴が空いてしまいます。カプチーノのフォームは、排水のプロセスにより、光沢が多少劣るものの、比較的安定した状態を保ちます。エスプレッソに含まれる弾性の界面活性剤はミルクよりもかなり少なく、これがミルクフォームよりもクレマの持続性が劣る理由を説明しています。

アボット教授は次のように説明しています。

「エスプレッソに含まれる界面活性剤は、多糖類(別名複合炭水化物)と褐色のタンパク質複合体(メラノイジンを含む)の複雑な混合物です。それぞれの成分の表面張力は約60および約46mN/mです。つまり、多糖類のほとんどは界面活性剤ではありませんが、フォームに安定性をもたらします。またエスプレッソのタンパク質は界面活性剤としてはほぼ力不足ですが、適度な量のフォームを生成するには十分な量になります。」




2.04 終

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