
「注ぎの高さ」で味わいは変わる?
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前編後編にわたってお届けしましたBHブログ"ケトルの水流の物理学"はご覧いただけましたでしょうか?まだの方はぜひこちらよりご覧ください→前編、後編。

BHJapanではこちらのブログで記述されている事象を、実際に再現してみました、結果をハスラーの皆様にご報告いたします!

注ぐ高さによる影響と、それによる間接的な抽出時間への影響を除いて、コーヒースラリーに水を注ぐ速度は、撹拌量やコーヒーベッドにくぼみを作ってしまうかどうかに重要な影響を及ぼします。
ケトルのグースネックの幅、先端の滑らかさ、流れの垂直性、ケトルを周す動きの速さのすべてが水流の特性とスラリーとの相互作用を変化させます。
スラリーの表面のすぐ下に分裂までの長さがくる位置で注ぐことで、最良の結果が得られました。これは、ケトルからの水流がスラリーに入るときに飛び散る音が聞こえるポイントよりも少し低い位置で注ぐことで実現できます。
下記のGifは分裂がちょうど起こる高さでケトルを止めた場合です。
Bonavitaでは21.5cm、V60では17cmでした。この高さよりも多少低い位置のどこかがスイートスポット(適正な注湯距離)とブログでは記載されています。


【抽出】
では実際にBonavitaとV60のケトルを用いて、それぞれ分裂の始まる距離とそこから下げた位置での抽出で比較をしてみました。
※注湯距離以外のレシピは全て同条件。HarioV60ドリッパー使用。


今回の検証では、スラリーからの距離が10cmでの抽出で、どちらのケトルでも高い収率が出ました。
味わいとしてもクリーンで後味も心地よく、バランスが良い印象です。
対して距離が21.5cm、17cm、15.6cmの抽出はどれもフレーバーに多少の曇りと後味にネガティブな印象を感じました。
10cmでの注湯はTDSも高い数値を達成しており、水流で適切に撹拌をすれば、マニュアル(スプーンや、ドリッパーを揺らす)撹拌をしなくてもレシピ構築ができるということが言えるでしょう。
"ドリップとバッチブリュー"コース内でも取り上げている、2021年WBrCチャンピオン、マットウィントン氏のプレゼンテーション内でもレシピの均一性を出すために「マニュアルよりもケトルの水流での撹拌を取り入れている」と話されていました。
新チャプター2021年WBrCチャンピオン、マットウィントン氏のインタビューも追加!!ドリップに関して学びを深めたい方はBH「ドリップとバッチブリュー」がおススメです!!購入、無料プレビューはこちらから。
仮説として、今回15.6cm以上での高さからの注湯では下記のブログ内で記述されている現象が起きている可能性があります。
水流のスラリーへの接触が非常に不規則だと、大量の気泡がスラリーに混入し、水流の分裂が非常に速い段階で発生するため、撹拌がコーヒーベッドの深くまで到達せず、コーヒーベッドが十分に撹拌されていない状態になります。極端な場合、分裂の長さよりも高いところから注ぐと、液滴だけがスラリーに落ち、抽出をより均一にする撹拌はコーヒーベッドにて起こりません。
10cmの距離がよりスイートスポットに近い=乱流が適切に起こっており、1つ1つの粒子が適切に抽出されている可能性がありそうですね。
まとめ
今回の検証では、10cmがスイートスポットに最も近いという結論になりましたが、検証中は高さと注湯速度6.5/秒という条件をぶらさないようドリップをするのがとても大変でした。各々の条件で最適な距離を見出せた後も、抽出ごとにその部分がブレないようにトレーニングをする必要があると言えるでしょう。
マットウィントン氏は「台形のドリッパーでは水流の撹拌を行うレシピは、向いていないと検証できました」と言っているように、器具によってさらに結果は変わってきます。皆様の環境でもぜひ"注湯距離"を意識して抽出をしてみてください!!何か発見がありましたらBHまでメールやDMにてご連絡いただけますと幸いです。

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