ACM_7.1 焙煎における溶解度の捉え方
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焙煎における溶解度の捉え方
味わいのプロファイル作りの際には、複数のテストロースト品を比較し、コーヒーの味覚的な特徴を解析します。カッピングテーブル上での正確なクラストのブレイク方法を含め、それぞれのカップが同じ抽出パラメーターとなる手順を用いることがとても重要です。クラストをブレイクしたら、全く同じ時間でそれぞれのカップからサンプルを採取します。官能評価を終えたら、どの焙煎プロファイルがより可溶性が高かったか、TDSの計測値を比べます。
可溶性を考慮した焙煎プロファイルへのアプローチ方法
例として4つのテストロースト品で味を取って8分後にTDSを計測し、クラストをブレイクした4分後にカッピングボウルから粉を取り除いたとします。
素晴らしい焙煎とは溶解性が高く品質的に優れている焙煎を指します。溶解性が低くても美味しければ構いませんが、溶解性の高い焙煎プロファイルで仕上げたコーヒーを用いるより、目標とするTDSに達するためにより多くのコーヒーが必要になるので、コストを価格に転嫁する必要に迫られます。つまり、1杯あたりの粗利が下がるとも言えます。この差はエスプレッソでより顕著となり、溶解度が低い一方品質的に美味しい焙煎プロファイルの例と同じく、その焙煎プロファイルでエスプレッソを抽出し、18~22%の収率に達することは難しいでしょう。
例:
テスト#1:ある焙煎プロファイルにおいては、1.5%のTDSで焦げた味がして美味しくありませんでした。 溶解性の面では優れていても、風味は良くありませんので、この一杯はなかった事にしましょう。
溶解性 ✔風味 ❌
テスト#2:この焙煎プロファイルは野菜のような味わいかつ溶解性も低いプロファイルでした。これは許容できません。
溶解性 ❌風味 ❌
テスト#3:この焙煎プロファイルは品質的に優れており、TDSは1.15%でした。
溶解性 ✔風味 ✔
テスト#4:このプロファイルは品質的に優れており、TDSは1.3%でした。
溶解性 ✔風味 ✔
お客様に提供する焙煎プロファイルとして正しいのは、明らかに1.3%のTDSを示した最後の焙煎プロファイルでしょう。この焙煎プロファイルを使用することで、バリスタとしてもより簡単に抽出をすることができます。もちろんテスト#3も品質的に優れており、なかなかの溶解度でしたが、テスト#4ほどの結果ではありませんでした。もしテスト#4より品質的に優れていれば、溶解性の低下を受け入れた上で、テスト#3のプロファイルを選ぶことも可能です。
現場でできる溶解性試験
この方法は、新しいコーヒーが届いた際にも用いることができます。テスト方法が一貫していれば、コーヒーの特徴を高い精度で予測できるようになるでしょう。
コーヒーのTDSが思ったよりも低かったなら、より高い温度、細かな挽き目、あるいはより長い抽出時間で抽出を促してみてください。狙いとするTDSを達成するために、抽出効率は下がりますが粉量を増やすことも選択できます。
TDSが普段の平均値と変わらなければ、普段通りの抽出レシピでアプローチすれば普段と同等の結果が期待できます。
TDSが高かった場合、下記の3つの選択肢いずれかに該当する可能性があります:
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より素早くまたは高温で、あるいは普段より高い温度で煎り止めしたコーヒーである。しかし、普段の焙煎プロファイルとはフレーバーにかなりの違いがある可能性が高い。
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これまでの焙煎プロファイルは十分に発達できておらず、溶解性も低かったため、この新たな焙煎プロファイルによって品質が改善した。
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もともと他のコーヒーより、多孔性のあるコーヒー豆だった。
2.と3.については、品質が優れている場合は気にする必要はありません。より簡単に美味しく抽出できる新しい焙煎プロファイルを楽しんで選択しましょう!
7.1 終