IM_6.01 ジェズベの歴史

IM 6.01 ジェズベの歴史

ジェズベは世界で最も古いコーヒーの抽出方法と言われています。そのデザインと抽出方法は何世紀にも渡って実質的には変わっていません。ジェズベはコーヒーを加熱するためにを利用していて、この加熱方法はイスラムの化学者にも広く知られている方法です。ジェズベが発明される以前は、コーヒーは今とは全く異なる飲み物でした。

コーヒーの木は6世紀の早期にアラビア半島に渡った可能性があるとされています。イエメンを征服後、50年間に及びイエメンを支配したエチオピア人によってもたらされたとも信じられています(ペンタグラスト、2010)。 15世紀までには、この植物はスーフィーの僧侶たちが毎晩の祈りに欠かせない儀式用の飲み物であるカフアに使用されるようになりました。

カフアはコーヒーと密接に関連しており、元々はエチオピア原産の麻薬植物の葉であるカートから作られていました(モリス、2019)。 15世紀の間に、カートはキシルやコーヒーチェリーを乾燥させたカスカラ、焙煎したコーヒー豆を煎じたものへと徐々に代わっていきました。

コーヒーを飲むことは、集会や宗教的儀式の中心となり、コーヒーはイスラム世界全体に広がり、1500年代にはエジプトに渡りました。 1516年にオスマン帝国がエジプトを征服した後、兵士たちはこの新しい飲み物をエジプトからトルコへ持ち帰りました。

この時代には、コーヒーは今日の「アラビア」または「ペルシャ湾」地域の抽出方法と同様の方法で淹れられていました。コーヒー豆は浅く焙煎され、すり鉢と乳棒で砕き、生姜やシナモン、カルダモンなどのスパイスと混ぜて水と煎じていました。コーヒーを15分間沸騰させるか、最大では1日中水に浸し、濾して、後で飲むために保存されていました(ユーカーズ、1922)。

16世紀にトルコでジェズべが発明されたことで、コーヒーをより速く淹れることができるようになりました。伝承によると、この抽出器具はスレイマン1世の厨房の使用人が発明したとされていますが、抽出器具の起源はさておき、この発明によってより深い焙煎とより細かく挽くことの2つの進化が必要になりました。

直火に耐えることを目的に作られた陶器または金属製の有孔平板の開発により、トルコではコーヒー豆の焙煎が容易になりました。これらは後に、現代のコーヒー焙煎機の前身である金属の有孔平板を用いた回転式シリンダーに置き換えられていきました(ユーカーズ、1922)。コーヒーをより深く焙煎することで、抽出時間が大幅に短縮でき、コーヒーを非常に細かく挽くことも容易になりました。

最初のコーヒーグラインダーもこの時期にトルコで発明されました。元々は小麦を砕くために使用されていたものと同様の石臼を使用しており(シノット、2010)、これによってジェズベでの抽出に必要な非常に細かな挽き目にすることができました。その後、間もなく円筒形の真鍮製ハンドグラインダーがトルコに登場しました。


写真:トルコで作られた円筒形の真鍮製ハンドグラインダー


上述の進歩によって、ジェズベの抽出に不可欠である細挽きが可能になりました。細かく挽かれた粉は、すべての細胞壁が破壊されて剥き出しの状態です。挽かれた後のコーヒー粉の破片中には空隙が残っていないため、粗く挽かれた粉と比べると密度が高くなります。それにより、コーヒーの粉は抽出器具またはカップの底に沈むことになります。同時に、微細な挽き目により露出する表面積が増加するため、迅速かつ濃度のあるコーヒーの抽出が可能になります(クラーク & フィッツトゥーム、2001)。

コーヒーを飲む習慣がヨーロッパ諸国に広まったのは、オスマン帝国との接触によるものでした。そのため、焙煎やグラインド、抽出においてトルコの慣行が主流となりました。コーヒーは17世紀に、トルコ大使のスレイマン・アガがパリで開催した豪華なパーティーにより流行となり(ペンタグラスト、 2010)、トルコ軍は1683年にウィーンでの包囲攻撃から撤退したときにコーヒー豆を残していったと言われています(クリフォード、2012) 。

このトルコ流の抽出方法はすぐに西ヨーロッパの人達の好みに合うように改良されました。 1711年にフランス人はリネン製のバッグで吊るすことによってコーヒーの粉をろ過することを始め、フランスとウィーンのコーヒーハウスではコーヒーにミルクを混ぜて飲むようになりました。イギリスのコーヒーハウスでは18世紀に入るまで、コーヒーの粉を沸騰させる方法が最も人気のあるコーヒーの淹れ方でしたが、そのポットのデザインは、1692年以降に蓋の無いジェズべスタイルの抽出器具から、よく知られている蓋付きのポットへと革命的な変貌を遂げました(ユーカーズ、1922)。

今日、ジェズベは東ヨーロッパと西アジアの国境沿いに位置する国々で広く使用されています。この抽出器具は、東ヨーロッパと西アジアに隣接する地域である地中海、中東、南コーカサスのいたるところに見られますが、その文化によって抽出方法にわずかな違いがあります(クラーク & フィッツトゥーム、2001)。一部の国では、ジェズべはイブリックまたはブリキと呼ばれ、抽出方法は「トルココーヒー」または「ギリシャコーヒー」と呼ばれる場合があります。ですが、トルコでは「イブリック」という言葉は、抽出器具の名称ではなく、コーヒーを提供する用の装飾されてるピッチャーを指します。


写真:トルコでは「イブリック」という言葉は、コーヒーやお茶を提供するために使用されるこのようなピッチャーを指します。

北ヨーロッパや、西ヨーロッパ、南北アメリカ、オーストラリアなどのコーヒー文化にとって、ジェズべは非常に珍しい抽出器具です。ジェズべを一般的に使用する国から来た移民たちを除いて、これらの国ではコーヒーを沸騰させる工程を含む抽出方法のほとんどは、フィルターを用いるかエスプレッソドリンクに取って代えられています。 2011年のワールドジェズベ/イブリックチャンピオンシップの設立を機にジェズベの国際的な知名度を高めましたが、スペシャルティコーヒーのコミュニティによって新たに発見できることは、まだ沢山ありそうです。


イラスト:17世紀のトルコのコーヒーハウス


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