ドリップとバッチブリュー「1.02 ペーパーフィルターの湯通し」

1.02 ペーパーフィルターの湯通し

ペーパーフィルターの湯通し



ドリッパーの予熱は、ペーパーフィルターの湯通しと同時に行うことができます。この工程は、ペーパーフィルターに含まれる多くの残留物を除去するためにも不可欠です。ペーパーフィルターに残留したリグニン(木材の細胞壁を強化する高分子)により、紙の臭いがはっきりと抽出液に出てしまいます。これは未漂白のペーパーフィルターにおいては更に顕著です。未漂白の製品には、より多くのリグニンが含まれているためです。木材やパルプにリグニンが含まれていると茶色になるので、この種のペーパーフィルターは簡単に見分けられます。スペシャルティコーヒーの抽出には、茶色のペーパーフィルターはお勧めしません。

ペーパーフィルターの湯通し


製紙工程において、さまざまな方法でリグニンを除去することができます。木材パルプの漂白方法はすべて、リグニンを水溶性の分子に加工することを目的としています。紙をパルプ化してこれらの不純物を除去するために、製紙工場では大量の水が必要です。抽出の前にバリスタが行う湯通しは、単に工場で行われている工程の繰り返しとも捉えられます。しかしながら、熱湯を使ってしっかりとペーパーフィルターの湯通しを行うことで、とても効果的に紙の風味を低減できます。 漂白されたペーパーフィルターを湯通しすることで、ほとんどの人の味覚閾値を下回るレベルまで紙臭さが減少します。

最も一般的な漂白方法は、無塩素漂白として知られているものです。この工程は二酸化塩素と酸素を組み合わせたもので、従来の塩素を使用した製紙法でみられたダイオキシンなど発癌性物質の形成や、塩素残留物の環境への排出を防ぎます。

ボール紙の臭いは味覚を狂わせることがありますが、ペーパーフィルターを湯通しすることで軽減できます。しかしその一方で、コーヒー豆にリグニンが含まれていることも忘れてはいけません。リグニンはコーヒー豆の構造を保持するための物質を多く含む高分子です 。それを踏まえて、湯通しに使うお湯を1回の抽出あたり100 ml程度に抑えることをお勧めします。この100 mlという少なく感じられる湯量でも、250 mlのプアオーバーコーヒーを作るカフェにとっては、一杯あたりの電気と水の消費量が40%も増加することになるからです。


1.02 終

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