ドリップとバッチブリュー_5.01 ライムスケール
共有
5.01 ライムスケール
ライムスケール
水を使用した機器のトラブルで最もよく起こる問題がライムスケールです。溶解したカルシウムとマグネシウム塩を含む水(通常は、雨水が岩盤に浸透して地下水となったもの)は、加熱するとこれらのミネラルを一部放出する傾向があります。外気と接触していた水には溶存二酸化炭素(CO2)も含まれています。溶存カルシウムと溶存二酸化炭素は水中で結合し、重炭酸カルシウムを形成します。この物質は、化学構造を変化させ、CO2を放出することで初めてライムスケールを形成します。抽出の際に水を熱するとCO2が放出され、炭酸カルシウムという化合物が生成されます。その後、この化合物は水の底に沈んで(沈殿)ヒーティングエレメントとボイラーの表面に付着し、ライムスケールと全く同じ材質で皮膜を形成します。
幸いにもコーヒーメーカーは、通常はそれほど流量を制限しないため、エスプレッソマシンよりもライムスケールが付着しにくい傾向にあります。コーヒーメーカーにおける流量制限は、エスプレッソマシンのような、水が直径わずか0.5 mmのフローリストリクターを通過するような設計ではありませが、コーヒーメーカーのヒーティングエレメントとスプレーヘッドにはライムスケールが蓄積する傾向があります。バッジブリュワーのような大型コーヒーマシンのヒーティングエレメントは、通常、厚みのある銅ないしアルミニウム板がねじれた形をしています。銅やアルミニウムほどの熱伝導性がないライムスケールは、ヒーティングエレメントを絶縁層で包み込むような働きをします。
必要以上に光熱費がかかることを防ぎ、コーヒーメーカーから水漏れが起きないようにするため、ライムスケールの除去が必要か否か定期的に見極めることが大切です。除去が必要か否かの判断に際しては、専門のメンテナンススタッフが点検とライムスケール除去作業を行う必要があります。わずかに付着したライムスケールは、ヒーティングエレメントとボイラー内側の表面保護に役立ちます。ライムスケールの薄層が粉砂糖をまぶしたように見えるときは、マシンはまだ最適な状態で動作している可能性が高いです。付着物がこれよりも厚いようなら、マシンのライムスケール除去が必要です。居住地が硬水地域ではない人、水の管理を厳密に行っている人、目立ったライムスケール蓄積の跡が機械に見られない人には、定期的なライムスケールの除去はおすすめしません。
機材のライムスケール除去を正しく行う場合、機器の分解・再構築と金属部品すべての酸性溶液への浸漬が伴います。ライムスケールの付着がそれほどないにもかかわらず頻繁に実施した場合、この工程により機器の部品に腐食が生じる恐れがあります。したがって、慎重に管理を行う必要があります。
5.01 終