ドリップとバッチブリュー_7.03 原価計算
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7.03 原価計算
原価計算
コーヒーマシンやバッチブリュワーの抽出と比較して、ハンドドリップで抽出に要する人件費には格段の差があります。コーヒーマシンやバッチブリュワーの抽出における経費節減の一因は抽出工程の自動化にあります。ただし、大きな節減につながるのは数杯分を一度に作るバッチブリュワーです。すなわち、ハンドドリップコーヒーの小売価格は、バッチブリュワーよりもはるかに高く設定する必要があるということです。
透過法で抽出したコーヒーの小売価格を適正に設定するためには、バリスタが1杯分を作るために要する時間、つまり準備から出来上がりまでの時間を正確に知ることが特に重要です。カフェのワークフローのベースラインとして設けた時間目標(レッスン7.02を参照)を使用することで、バッチブリュワーのフィルターコーヒーを2分と掛からずに用意できます。これには、前回抽出した際のバッチブリュワーに残っている粉を廃棄するステップから、湯通し、フィルターバスケットの予熱、そして抽出ボタンをオンにするまでのすべてのステップが含まれます。バッチブリュワーでは抽出サイクルが機械化されているので、そこから先は人手がかかりません。そのため、抽出サイクルの時間を加算する必要はありません。
1杯あたりの最終的な人件費を導き出すには、カフェで提供する1杯のコスト構造を知る必要があります。バリスタは、すべてのコーヒーが適正な価格となるよう、1杯分の基準提供量を守り、できる限り一貫性を保つよう努める必要があります。バッチブリュワーから何杯分のコーヒーがとれるかを確認したら、作成にかかる人件費を提供杯数で割ることができます 。液体保持率が抽出液の量に影響するという、レッスン2.02で学んだことを思い出してください。ドリップコーヒーの場合、抽出後のコーヒーかすには、コーヒーの粉1gあたり平均2.2 gの水が保持されています。例えば、120 gのコーヒーの粉を使用する2リットルのバッチでは、ドース量1gあたり2g強の抽出液を失う傾向があります。よって、このケースでは、コーヒーかすに264 gの水が保持されることが予想されます。これは、2リットルバッチあたりおよそ1杯分です。
作業の同時並行スキルに長けた効率的なバリスタは、希釈フェーズが終了するまで2分ごとにドリップコーヒーを淹れることもできます(注湯回数が2回のみの場合)。しかしながら、これは1杯分に2分を要するということで、それに対して通常の2リットルのバッチサイズからは8杯分とれます。ハンドドリップの相対的な労働の非効率性は、コーヒーマシンで抽出した同じコーヒーと比べたときに、小売価格をより高く設定する必要があることを意味します。
最終的にカフェのドリンクの価格は、家賃や光熱費といった多くの要因に左右されます。とはいえ、人件費と原材料費で大方カバーできるように、 コーヒー価格計算ツールを作成しました(レッスン7.04を参照)。最終的な利益を適宜調整し、透過法によるコーヒーの最終提示価格の決定に役立てることができます。 参照基準として、What I Know About Running Coffee Shops の著者であるコリン・ハーモンより、彼の秀逸な著書からこのインフォグラフィック(下記)の転載を許可してもらいました。カフェの健全な財務の大まかな指標として、コリンは、人件費の総額を売上高(売上税を含まない)の約31%とすることを推奨しています。その数値をベースラインとして使用する場合、この数値をオーバーしているときにコーヒー価格計算ツールを使え ば、ハンドドリップ工程のどのポイントに問題があるのかを確認できます。例えば、業界平均に基づいて私たちがここで示したように、ドリップコーヒーを作るのに4分以上要する場合、 毎分レベルで31%を超す人件費がかかることになります。
著者コリン・ハーモンの許諾を得て、What I Know About Running Coffee Shopsより転載されたインフォグラフィック
スペシャルティコーヒーショップでは、シフトを通して絶え間なくハンドドリップコーヒーを作るということはまずありません。コリンのいう31%という数字は、単に作業中の任意の1分間を切り取ったものではなく、1年間を通しての年間売上高に照らしたものです。ただし、ハンドドリップで淹れる毎分ごとに、1分あたりの人件費が1分あたりの正味利益の31%を超える場合は、作業効率を上げるか、ハンドドリップコーヒーの価格を上げるかの2つのうちいずれかの対策をお勧めします。
7.03 終